妊娠している女性が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)になったらどうなるかという話が、2020年10月12日のHealth Dayで「For Many Pregnant Women, COVID-19 Has Prolonged Effect(多くの妊婦にとってCOVID-19の影響は長引く)」として報道されているので紹介したい。
研究はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)と、同ロサンゼルス校(UCLA)が共同で実施し、結果はObstetrics & Gynecology誌の10月7日号に掲載された。新型コロナウイルス検査で陽性だが入院はしなかった全米の594人の妊娠女性(平均年齢31歳)を対象とし、うち約3分の1は医療関係者で、平均妊娠週数は24週であった。
最もよく認められた初期症状はせき(20%)、喉の痛み(16%)、体の痛み(12%)、発熱(12%)である。ちなみに、妊娠していない感染入院患者の43%に発熱が認められている。また、発症初期に多くみられるとされる味覚と嗅覚の消失が最初の症状であった参加者は6%だった。そのほかの症状としては息切れ、鼻水、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、めまいなどが認められた。
60%は4週間後には症状がなくなっていたが、25%で8週間以上症状が続いていた。症状消失までの平均期間は37日であった。妊婦以外の軽症者では通常、1~2週間で症状が消えるとされている。
「妊娠中のCOVID-19感染は症状のある期間が長く続き、健康や日常生活にかなりの影響を与えることがある」と、論文の責任著者(senior author)でUCSF産婦人科生殖科学研究部門副所長のDr. Vanessa Jacobyは述べている。
Jacobyのチームはまた、妊婦のCOVID-19患者の症状は妊娠固有の症状、すなわち吐き気、倦怠(けんたい)感、うっ血と重なって起こることで問題が複雑になっていることを見出している。
論文の筆頭著者でUCLA産婦人科母体胎児医学部門助教のDr. Yalda Afsharは「COVID-19は妊婦や新生児に危害を加える可能性があるにも関わらず、疾患自体や予後についての知見はまだ少ない。我々の結果は、妊婦がCOVID-19に罹患(りかん)した時にどのような状態になるか、妊婦やその主治医が理解するのに役立つだろう」とUCSFのニュースリリースで述べている。
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公益社団法人 地域医療振興協会 会長、日本医学会 前会長
公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長。1954年東京大学医学部卒業後、シカゴ大学留学などを経て、自治医科大学内科教授に就任、同大学の設立に尽力する。また、1982年には東京大学医学部第三内科教授に就任し、選挙制度の見直しや分子生物学の導入などに力を注ぐ。1971年には論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞、1994年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受賞する。