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連載髙久史麿先生厳選 世界の医療情報

新型コロナでつま先に現れる病変

公開日

2020年07月02日

更新日

2020年07月02日

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2020年07月02日

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公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

玉石混交?の抗体検査

抗体の有無によって新型コロナウイルス感染の現状並びに既往を知ることができる「抗体検査」の正確性についての疑問が、2020年5月4日のHealth Dayに「FDA Goes After Unproven COVID-19 Antibody Tests(FDA新型コロナの未確認抗体検査を追跡)」として示されている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急激な拡大に対処するため、アメリカ食品医薬品局(FDA)はこれまでCOVID-19抗体検査の正確性を示す証拠を出さなくても、市販することを黙認してきた。不幸なことにFDAのこの対応が、信頼に値しない抗体検査が市場に出回ることを許してしまった。アメリカでは現在、消費者が利用できる14種類の抗体検査があるが、50人以上の研究者によって構成されているグループの報告によると、その中で信頼に値する結果を提供しているのは3つだけだという。

FDAはポリシーを変更し、緊急使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)を得るためのガイドラインを製造業者と研究所に提供。抗体検査を行うすべての企業にEUAを取得するよう求めており、それができない企業は市場から排除されるとしている。

このリポートが公開された時点で、12の抗体検査がEUAを取得しているだけである。さらに250以上の抗体検査がEUAに値するかどうか、FDAが検討しているとのことである。

念のため説明しておくと、抗体検査はその人が新型コロナウイルスにさらされたことがあるかを示すだけである。現在感染しているかの正確な診断には、PCR検査によって患者の血中に新型コロナウイルス(SARS-COV-2)が存在することを示さなければならない。

コロナウイルス 再感染の可能性は?

この抗体検査に関連して、新型コロナウイルスの再感染について2020年5月4日のHealth Dayの報告「Can survivors get reinfected with coronavirus?(回復した患者はコロナウイルスに再感染しうるか?)」をご紹介したい。今回のSARS-COV-2以前に存在が確認されていた、人に感染するコロナウイルスでは再感染は比較的良くみられる。アメリカの研究ではニューヨーク在住の86人の(従来型)コロナウイルス患者のうち12人が1年以内に同じコロナウイルスに感染していたとのことである。コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のJeffrey Shaman教授は「以前の普通のコロナウイルスの経験が新型コロナウイルスにつながるかは分からない。しかし、以前のウイルスで再感染の頻度と再感染までの期間を分析すると、少なくとも新しいウイルスで何が起こるかを理解できるかもしれない」と述べた。

この研究結果は現在、科学雑誌の査読を受けている途中で、まだ発表はされていないという。

日本では、新型コロナウイルス陰性化後に再び陽性になった例が報道されている。しかし陰性化のすぐ後に陽性化した場合には死んだウイルスの断片を検出している可能性がある。その場合にはウイルスの遺伝子解析を正確に行う必要があるであろう。

話を抗体に戻すと、新型コロナウイルスに対する抗体があってもそれだけで十分な免疫機能を示すとは限らず、有効な量の抗体の存在を確認しなければならない。アメリカの州によっては抗体陽性の(=免疫があると認められる)人には"immunity passport(免疫パスポート)"を出し、仕事や旅行することを許している。しかし前述のように抗体検査は実施する会社によっては信頼性が低い場合もあるので、上述のパスポート発行に反対する声も大きいようである。

旅行する女性
写真:Pixta

感染者の「コビッド・トー」とは?

新型コロナウイルスに関するニュースとして、このウイルスに感染した患者ではさまざまな皮膚病変が現れることを2020年5月4日のHealth Dayに「More Symptoms of Coronavirus: COVID Toes, Skin Rashes(コロナウイルスのさらなる症状:コビッド・トー、皮膚の発疹)」と報じている。

COVID-19の患者では肺が主要な病変となっているが、症例によっては手や足指に凍傷のような病変や体幹部に発疹が起こることがあることをアメリカ・ボストンにあるマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital:MGH)のDr. Esther Freemanが報告している。Freemanによると、MGHの遠隔皮膚診療で今まで経験したことがないほど多くのつま先を診断し、記録を蓄積していると述べている。

ニューヨーク州ハンチントン病院の皮膚科医Dr. Raman Madanによると、つま先に凍傷のような病変のある患者の多くはその他の点では無症候性で、ウイルス培養では陰性だが、抗体検査では陽性だという。Madanは「これは病気の回復期の段階で、体がウイルスを一掃した後に発生するかもしれない」と述べている。

同じ記事で、胴体に見られる発疹について2例報告されている。1つ目の症例は中国・武漢の患者で、胴体に発疹を認めている。その発疹は1週間のうちに消失したが、患者はCOVID-19で死亡したとのことである。

2番目の例はスペインの男性で、大腿(だいたい)と臀部(でんぶ)に発疹を認めたが5日後には消失し、12日後には退院したと報告されている。この2症例については2020年4月30日にJAMA Dermatologyにオンラインで報告されている。

上述のような手足の凍傷や発疹を訴えてきた患者の場合、せきや発熱の有無に注意し、必要に応じてCOVID-19感染を調べるべきであるとしている。

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公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長。1954年東京大学医学部卒業後、シカゴ大学留学などを経て、自治医科大学内科教授に就任、同大学の設立に尽力する。また、1982年には東京大学医学部第三内科教授に就任し、選挙制度の見直しや分子生物学の導入などに力を注ぐ。1971年には論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞、1994年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受賞する。