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連載髙久史麿先生厳選 世界の医療情報

心臓の健康を保つ食べ物と習慣の研究

公開日

2021年01月15日

更新日

2021年01月15日

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2021年01月15日

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公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

食事と病気の関係については多岐にわたる研究が行われている。今回はそのうち、心疾患に関する研究をいくつか紹介したい。

豆腐を食べると心疾患リスクが低下

まずは豆腐と心疾患について、2020年3月23日発行のHealth Dayに紹介された「Turning to Tofu Might Help the Heart: Study(豆腐に目を向けると心臓の助けになるかもしれない:研究)」である。この研究はボストンにあるハーバード大学公衆衛生学部のDr. Qi Sunによって行われた。研究者らは20万人以上の健康なアメリカ人を対象にした長期観察のデータを追跡した。その結果、豆腐を全く食べない人に比べて、豆腐を週に1回以上食べる人は心疾患にかかる率が18%、月に1回以下しか食べない人でも12%減少していた。効果は閉経前あるいはホルモン補充をしていない閉経後の女性で特にみられたとのことである。この結果は同日のCirculation誌で報告されている。

豆腐が有効なのは、血管の機能改善、血中コレステロールの減少、炎症反応を抑えるなどの作用で心臓に良いと報告されているイソフラボンを多く含んでいるからである。

太りすぎにはブルーベリーが効果的?

次に紹介するのは、2019年6月1日にMEDICAL NEWS TODAYで報じられた「Can blueberries protect heart health?(ブルーベリーは心臓の健康を守れるか?)」である。

これはイギリスのイーストアングリア大学と、アメリカのハーバード大学の共同研究である。研究者たちは、メタボリックシンドロームの人たちがブルーベリーをいつも食べると代謝状態が変わるかを調査している。これまでの研究で「ブルーベリーをよく食べている人は2型糖尿病や心血管障害になる頻度が低いことが分かっている。これは天然色素のアントシアニンが、ブルーベリーの中に多く含まれているからかもしれない」と、研究チームのリーダー、Aedin Cassidyイーストアングリア大学教授は説明している。

Cassidy教授らはブルーベリーと代謝の関連を調べるため、50~75歳の太り過ぎまたは肥満で、メタボリックシンドロームを有する115人を対象にして

  1. 1日150gの生のブルーベリーに相当する冷凍乾燥ブルーベリー粉末を食べる群
  2. 75g相当の粉末を食べる群
  3. ブルーベリーを食べない対照群(粉末ブルーベリーのように見える果糖のフルクトースやブドウ糖のデキストロースなどを食べさせた)

の3群に分けて6カ月間実施し、その結果をAmerican Journal of Clinical Nutritionに掲載している。

興味深いことに、1カップ(150g)のブルーベリーを毎日食べた群だけで血管機能や動脈硬化が改善され、心血管障害の危険度が12~15%減少したと報告している。一方、75gを摂取した群ではメリットがなかった。研究者は「肥満リスクのある人にとって心臓の健康という利益を得るためには、毎日より多く摂取することが必要であろう」と述べている。一方で、血糖や血圧値には効果がみられなかった。

写真:Pixta

朝食抜きは心臓にも悪影響

次の話題として、2019年4月23日のHealth Day Newsに報道された朝食と心疾患に関する研究「Skipping Breakfast a Bad Move for Your Heart?(朝食抜きは心臓にとって悪手か?)」をご紹介したい。この研究はアメリカ・アイオワ大学のDr. Wei Baoによって行われ、その結果は2019年4月22日のJournal of the American College of Cardiologyに掲載されている。

Dr. Baoらは6550人の40~75歳のアメリカ人の健康状態を20年にわたって調査した結果、朝食を1度も食べたことがない人は毎日食べている人に比べて心血管障害で死亡する割合が87%増加すると報告している。その理由についてDr. Baoは▽朝食を食べない人はその後の食事で食べすぎ、肥満を引き起こす▽朝の"絶食"時間が長いと、肥満や糖尿病につながるインスリン感受性が阻害される▽朝食を食べないとその後血圧を上昇させるように働く各種ホルモンを増加させる――可能性があることなどを挙げている。また、空腹の時間が長いと悪玉コレステロールも増加することを報告している。ほかの研究者も起床後なるべく早く朝食をとるように推奨している。なお、アメリカの若い人の23.8%が朝食をとらないとのことである。

私は以前、朝食をとらない学生は成績が悪く、その理由の1つとして脳の細胞での消費量が多い血中グルコース値が低い状態が長く続くことを挙げていたことを思い出している。

血圧の厳重管理で余命延長

次は食べ物とは関係ないが、血圧を厳重に管理することの重要性を示した研究を紹介したい。2019年11月12日のHealth Day Newsに報告された「Want Extra Years of Life? Keep Blood Pressure Tightly Controlled(もっと長生きしたい? ならば厳重な血圧管理を)」である。研究を行ったのはアメリカ・ボストンのブリガム・アンド・ウイメンズ病院のDr. Muthiah Vaduganathanらで、この研究はSPRINT trialと名付けられている。

対象となったのは50歳以上の高血圧患者9000人で、いずれも高コレステロール血症や喫煙などの危険因子を有していた。対象患者は薬物治療と、減塩や運動などライフスタイルの変更を組み合わせ、従来の目標であった収縮期血圧140mmHg未満を、それより下の120mmHg未満に下げる(intensive treatment)ように計画された。この研究を開始した3年以内に心臓発作、心不全、脳卒中に罹患する患者が標準治療群より25%低く、また死亡率は27%低かった。その結果があまりにも明白なのでこのSPRINT trialは早期に中止されたと報告されている。

Dr. Vaduganathanは▽50歳でintensive treatmentを行っている人の余命は37年に対し、通常治療群の人は34年▽65歳は24.5年と23年▽80歳は12年と11年強――と両群の間に差が出るであろうと推定している。

収縮期血圧を120mmHg未満に管理している群の人たちでは当然、降圧の副作用が出ると思われる。この点については、めまいなどがみられたが転倒例の増加はなかったと報告されている。

私個人のことを書いて恐縮であるが、私も毎日降圧薬を飲み、早朝の収縮期血圧を140mmHg以下にしている。その影響か、一昨年、昨年に1回ずつ転倒していたのでこのintensive treatmentに従う気はないが、50~60歳代の人たちは従った方が良いであろう。

食べ物との関係でいえば、豆腐が健康に良いことを知り、近くのスーパーマーケットで豆腐を買って食べるようにしている。しかし、その店でブルーベリーの粉などは見たことがないので、今度聞いてみたい。高齢のためたんぱくの摂取も重要であるが、それは魚や植物性のたんぱくを主にし、牛肉も時々食べるようにしようと考えている。新型コロナウィルスの流行によって外食の機会が減少したが、その結果として牛肉を食べる機会が少なくなっている。うれしいような、また悲しいような気分である。

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公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長。1954年東京大学医学部卒業後、シカゴ大学留学などを経て、自治医科大学内科教授に就任、同大学の設立に尽力する。また、1982年には東京大学医学部第三内科教授に就任し、選挙制度の見直しや分子生物学の導入などに力を注ぐ。1971年には論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞、1994年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受賞する。