連載髙久史麿先生厳選 世界の医療情報

心血管障害の予防薬が「骨粗鬆症リスク」を高める?

公開日

2021年01月18日

更新日

2021年01月18日

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2021年01月18日

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公益社団法人 地域医療振興協会 会長、日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

「スタチン」に関する790万人のビッグデータ研究

悪玉コレステロール値を低下させる薬「スタチン」は、もっぱら各種の心血管障害の予防に使われている。しかし、そのスタチンが骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を起こすことが報告されているのでご紹介したい。

この研究は、オーストリアのウィーン医科大学の複雑系科学部に所属するCaspar Matzhold氏によって行われ、2019年10月2日のMEDICAL NEWS TODAYに「Statins: Link to osteoporosis depends on dosage(スタチンの投与量と骨粗鬆症との関連)」として報告された。790万人のビッグデータを用いたことが、この研究の特徴としている。

研究者たちは、およそ2年スタチンを服用しているオーストリア人を対象にして観察した。その結果、スタチンの投与量と骨粗鬆症の発症との間に統計的に有意な関連がみられ、スタチンの投与量が多いほど骨粗鬆症の程度が強くなっていると報告している。

元々コレステロールは、骨の健康に不可欠なエストロゲン(女性ホルモン)やテストステロン(男性ホルモン)の素材にもなっている。閉経後の女性で骨粗鬆症の頻度が高くなるのは女性ホルモンの低下によるとされており、男性でも、女性ほど顕著ではないが男性ホルモンの低下による骨粗鬆症の増加がみられる。研究者たちはスタチン(ロスバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチンなど)の投与を行う場合、心血管と骨への影響を考慮すべきだとしている。

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公益社団法人 地域医療振興協会 会長、日本医学会 前会長

髙久 史麿 先生

公益社団法人地域医療振興協会 会長 / 日本医学会 前会長。1954年東京大学医学部卒業後、シカゴ大学留学などを経て、自治医科大学内科教授に就任、同大学の設立に尽力する。また、1982年には東京大学医学部第三内科教授に就任し、選挙制度の見直しや分子生物学の導入などに力を注ぐ。1971年には論文「血色素合成の調節、その病態生理学的意義」でベルツ賞第1位を受賞、1994年に紫綬褒章、2012年には瑞宝大綬章を受賞する。