連載「健康経営の最前線」ー現場に聞いたリアルストーリー

東急の健康経営ー地域と従業員の健康を支える70年の軌跡とは

公開日

2025年02月07日

更新日

2025年02月07日

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2025年02月07日

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従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に取り組む「健康経営」が注目されています。 少子高齢化による労働人口の減少や、医療費の増加といった社会課題を背景に、2015年に経済産業省が「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。 健康経営は、従業員の健康増進だけでなく、企業の生産性向上やイメージ向上にも繋がり、活力ある社会の実現に貢献すると期待されています。

創業以来、まちづくり事業を通じて社会課題の解決に取り組み、時代の変化に適合しながら多摩田園都市など地域と共に成長してきた東急株式会社。東急病院を開院するなど、街に住む市民の健康や、従業員の健康にまつわる課題の解決にも取り組んでいます。健康経営優良法人認定制度の創設時から継続的に認定を受けている東急株式会社に、これまでの健康経営優良法人認定までの経緯や今まさに取り組んでいるさまざまな施策について伺いました。

インタビューに応じてくださった方:
東急株式会社 人材戦略室 人事企画グループ 主査 百瀬拓史さん(左)
東急株式会社      同上        主事 斉藤佳奈さん(右)

病院開院当初から従業員に健康診断の実施などを続けてきた

――会社としての健康への意識や取り組みの歴史をお聞かせください。

当社は交通事業、不動産事業、生活サービス事業をはじめお客さまの生活に密着したさまざまな事業を展開しています。安全と安心は当社事業の根幹であり、お客さまが当社にお寄せくださる信頼の源泉でもあります。

その事業を担っている従業員やその家族が健康であることを、経営の最重要事項として位置付けており、2016年に「健康宣言」を制定しました。同じ頃、経済産業省より健康経営優良法人認定制度が設立され、健康について企業単位で考える時代に変化し始めたと思っています。

また当社の場合は、健康経営への意識は1953年頃からすでに芽生えていました。同年、大岡山に東急病院を開院し、地域にお住まいの方の健康に寄り添うとともに、従業員も健康診断や診察を受けられる病院としてこれまで経営しています。東急病院には当社専属の医師や産業医、保健師が在籍し、病院と本社で連携して従業員の健康を守る取り組みを昔から続けてきています。

安心して当社のサービスをお客さまにご利用いただくためにも、“従業員の健康は第一に考えるべき”という方針です。

従業員に理解や意識づけを促せるような工夫が継続的に必要

――健康経営という言葉ができる前や、現在の課題や苦労はなんでしょうか。

今でこそ健康経営という言葉があって健康にまつわる施策に数多く取り組めていますが、当初はそういった明示的なものがなく、従業員への意識づけが難しかったと記録が残っています。

今も昔も、従業員の身近なものとして健康への理解や意識づけを促せるよう、また楽しく取り組んでもらえるように、人事戦略室人事企画グループが事務局となり工夫をしながらたくさんの施策を考えてきました。

現在の課題は、いかにして従業員の健康意識をさらに醸成していくかということです。社長が自らCHO(最高健康責任者)としてトップコミットし、積極的に健康経営にまつわるイベントや表彰に参加していますが、さらに従業員とトップとの距離感を縮めていけるようにトップから健康経営への意識や取り組みを伝えていく工夫が必要だと思っています。

また健康意識が低い層に対しては“何かしらはヒットするだろう”というマインドも大切だと考えています。打ち手をたくさん増やすことで、まずは興味を持ったテーマへの気軽な参加を促す工夫をしており、今後も続けていきたいと思っています。

長年の恒例行事から、新しい施策まで多面的に施策を展開

――多くの施策がある中でもユニークな取り組みはなんでしょうか。

運動会や駅伝大会、ウォーキングイベントは毎年恒例のイベントになってきています。

ほかにも、2018年に当社独自の指標を用いて健康状態を点数化する「TOQ健康スコア(トーキュー健康スコア)」を導入しました。これは東急病院で受けた健康診断結果から、自身の健康状態を可視化・把握できるもので、前回の結果と比較が可能です。健康診断結果(年齢、BMI、血圧、HbA1cの4項目)と健康診断の受診票の問診項目(飲酒、喫煙、運動習慣、食習慣、睡眠の5項目)から計算しています。

また2023年からは、健康保険組合と共同で重症化予防プログラムを実施しています。複数のプログラムを準備し、従業員が自ら取り組みたいと意欲的に感じるコースを選択できる形式や、本来6か月かかるコースを3か月間で短縮して受けられるようなプログラムを実施しています。

また、要精密検査対象の従業員に対して、保健師が職場へ訪問して面談を実施し、面談の際には検査や診察の予約も代行してくれることで、予約が早めにかつ確実に取りやすい環境を作ったことも効果が出ています。“自分の担当の保健師”という信頼感と健康に関する相談ができる安心感が確保されています。保健師たちの努力によって、従業員の健康が担保されているといえると思います。

ほかにも、セミナー(口腔ケア・女性の健康など)や「年に一度の睡眠診断運動」の実施、「1Minute 1Action(運営:(株)イブキ)」という企業向け動画サービスの活用など、いつでもどこでも誰でも気軽に「健康」行動への一歩目を踏み出せるサポートをしています。また、若年層メタボ対策で対象となった従業員が健康に関する取り組みを行う際に受けられる会社からの補助制度(初年度は1.5万円を上限)など、健康に関する施策なども実施しています。

さらに従業員を対象にした施策以外に、地域住民の方々への健康施策として東急病院がある大岡山駅周辺を「健康ステーション大岡山」と称し、「健康階段」や「健康啓発ポスター」の掲示などの取り組みもこれまで継続してきました。

階段

働く従業員やその家族にも安心してもらえるように。会社との有機的なつながりを健康経営から作り出していきたい

――今後に向けた意気込みを教えてください。

健康経営については従業員一人ひとりの理解にまだまだ差があります。そのため、継続して企業が実施する意味をしっかりと添えて発信していきたいと思います。従業員が元気に活躍し、有機的に会社の成長につながるような環境を作れるよう、1つずつ向き合っていきたいです。

従業員のご家族からみても、家族が働く職場として安心してもらえるような環境作りを目指したいと思っています。

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

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