「健康経営」とは、従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実施することです。企業理念に基づき、従業員などへの健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上などの組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待され、経済産業省より2016年に「健康経営優良法人認定制度」が設立されました。
2017年から毎年「健康経営優良法人(大規模法人部門)」や上位500社のみ該当する「健康経営優良法人(ホワイト500)」に認定されているカゴメ株式会社。健康経営に取り組む意義の浸透や社内外との連携体制に力を入れています。具体的な取り組みやその効果、今後の展望などについてカゴメ株式会社人事総務本部健康経営推進室長を務める鈴木淳一さんと担当者の喜多真紀子さんに話を伺いました。
――健康経営に取り組み始めたきっかけを教えてください。
社会全体での意識の高まりを機に、2016年に健康に関する専任の課を設立し、従業員の健康維持や増進のための取り組みをスタートしました。その後、「カゴメ健康経営宣言」を掲げ、具体的な行動指針として「カゴメ健康7ヶ条」を制定。トップダウン式に浸透させていくだけではなく、各事業所の健康推進委員からなる「健康推進委員会」を設けて現場からも取り組めるような体制を整備しました。
次第に「健康経営優良法人(大規模法人部門)」や「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定をいただくようになるなか、経営陣からも会社の重点課題として、健康経営強化の方針が出されました。それを受け、「健康経営推進室」という名称で組織が課から部に昇格。各事業所に加え「カゴメ健康保険組合」との連携も図り、三位一体となって取り組んでいます。
――具体的にはどのような取り組みを行っているのですか?
健康診断や人間ドック、特定保健指導に関して、各事業所やカゴメ健康保険組合、さらには保健師や産業医、管理栄養士との連携を図っています。
具体的には、従業員が受診した人間ドックや定期健診の結果データをリスト化したものを、カゴメ健康保険組合や各事業所と共有し、再検査や特定保健指導が必要な従業員をフォローする体制を作っています。
緊急対応が必要なレベルに該当した人へは、各事業所長や事業所健康管理担当が直接受診を促し、産業医や保健師との面談も実施。緊急対応ではないが「要生活改善」に該当した人に対しては、カゴメの管理栄養士による特定保健指導も活用しています。
当社には、「野菜と生活 管理栄養士ラボ」という管理栄養士資格保持者による専門チームがあり、健康セミナー/研修講師・レシピ/食コラム監修・特定保健指導など、食に関する課題解決のサポートを事業として行っています。こうした事業化しているサービスを社内に対しても展開することで、自社の特定保健指導も高い実施率を果たせているのです。
――食を通して社会に健康を発信する“カゴメならでは”の取り組みを教えてください。
「野菜をとろう、私たちも」を掲げ、手のひらをセンサーに押しあてると推定野菜摂取量を測定できる「ベジチェック」の測定を推進する活動を従業員にしています。定期的に自分がどれだけ野菜をとれているのかを明確な数値で把握することで健康への意識が高まり、行動変容につながると考えています。
専用アプリで自分のランキングや他事業所の取り組み状況を確認できるようになっているので競争心が生まれ、従業員同士のコミュニケーション活性化といった効果もみられています。事業所によってはランキングに応じて表彰や景品を用意することもあります。
全社的にも、「野菜をとろうキャンペーン」として社内外へプロモーションを仕掛け、野菜摂取推進活動を強化しています。
――現在感じている、健康経営の課題はどのようなことですか?
健康に関する商品やサービスを提供している企業として、従業員自身の健康は事業に説得力を持たせることにもつながります。これが、弊社が健康経営を行う意義の1つです。
ただ、その意義を社内へ浸透させることに難しさを感じています。
周知のために取り組んでいるのは、健康リテラシー向上を目指して発行している「カゴメ健康レポート」や広報部が作成している社内報で、「なぜ健康経営に取り組むのか」について発信することです。コツコツ続けている結果、直近のアンケートでは回答のあった94%の従業員から「健康経営の意義に対する理解が深まった」との回答が得られ、地道に発信を続けてきた成果がようやく見られ始めているのかなと感じています。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
今後は、従業員の健康と会社の事業とつなげる取り組みの1つとして、「女性特有の健康問題」のテーマにも注力していこうと考えています。
実際に最近行ったセミナーでは、女性活躍担当役員から「なぜ女性の健康推進に取り組むのか」といった意義の部分を伝えてもらったうえで、健康事業営業部の管理栄養士から話をしてもらう構成にし、健康上の課題は事業や経営につながっているのだと従業員に理解してもらえるように努めました。これからも健康を事業につなげていくことを意識して、工夫をこらした取り組みを行っていきたいです。
弊社はもともと従業員の健康を大切にする文化が根付いていたり、事業との親和性も高かったりするおかげで、経営層の健康への思いに応えるかのように、従業員も健康経営への理解を示してくれています。この強みを生かして、「健康経営」をさらに浸透させていけるよう取り組んでいきます。
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