この記事の最終更新は2016年01月15日です。
泳ぐ内視鏡の概要と今後の課題について、『大阪医科大学の新開発内視鏡―泳ぐ内視鏡とは?』でご紹介いたしました。本記事では、泳ぐ内視鏡の今後について解説していただきます。泳ぐ内視鏡が更なる発展を遂げるためには、医学分野を超えて企業と連携し、大規模な開発を進めていくことが大切だと考えられています。大阪医科大学附属病院消化器内科教授の樋口和秀先生にお話頂きました。
泳ぐ内視鏡の今後の使い方としては、基本的にひとつのカプセルで消化管全てを2時間程度で診るようにできることを期待して開発されています。
カプセル内視鏡検査で困るのは、どこかから出血しているものの、どこから出血しているかわからないときです。胃カメラでも大腸カメラでもわからない場合は小腸からの出血を疑い、カプセルを飲んでもらうことを検討しますが、カプセルが消化管を通過するのに時間がかかるという問題があります。
万が一そのような事態が発生した場合は、「緊急内視鏡カプセル」の検査を検討してもいいでしょう。緊急で内視鏡検査をする必要がある際、とりあえずポンと飲んで頂くだけでいいのなら、患者さんにとっても楽なはずです。
また、現在は疾病の観察や画像撮影のみになっているこのカプセルが、将来的にはカプセル内部から針が出てきて針生検などができる、治療にも特化したカプセルになるようにしたいと考えています。これは一例ですが、そういった診断治療、つまり薬やレーザーを出していくことも決して不可能ではないはずです。
今後は医学部のみならず、工学部とも連携して技術革新と共に開発を進めていきたいと考えています。最終的にはカプセルに内蔵されたカメラから様々な薬や器具が出てきて、治療ができるようになるまで進化させたいです。
泳ぐ内視鏡は、将来的に全国の検診でつかわれるようになってほしいと考えています。しかし現在、泳ぐ内視鏡は大阪医大だけで行われている試験です。他にできる施設はありません。
内視鏡が泳ぐという考え方は2005年からここ10年にかけて進歩してきています。
このような開発に、これから我々が企業とどれだけ連携できるかも一つの課題です。現段階では、実臨床にいつ投入されるかは全く未知数となっています。現在は龍谷大学工学部と連携し、大学同士で研究を進めているものの、大学同士だけでは限界があります。そこで企業と一緒になって進めていくことでさらなる進展が望めるでしょう。そのためには特に大企業との連携が求められます。
しかし組む先は見つかるか? という問題も発生します。大企業の場合、独自に各々の開発部がそういった機器を作り始めていることが予測できます。医者の場合は、研究を重ねながら制作を進めるため、過程の情報を常に世の中に出している状態となります。一方、企業は製品にならなければ情報を発信することができません。そこにずれが生じてしまっているのではないでしょうか。
世界中でいえば、このような開発はいたるところでやっているはずです。医者と企業がタッグを組むことで、泳ぐ内視鏡は大きく飛躍を遂げることが予測できます。企業との連携は、この研究を実臨床に持っていくために必要不可欠な過程だといえるでしょう。
大腸がんの腹腔鏡手術が主な専門。そのほか、大腸がんの治療全般も専門。大腸がんの手術では低侵襲で安全な手術を目指し、合併症発生率も低い。ICG蛍光法を用いた血流評価やリンパ流評価によるオーダーメイドの手術療法の開発なども行っている。直腸がんついては、肛門温存手術の実績も多数。