インタビュー

末期がん患者の終末期ケア -がん治療、いつやめるか?

末期がん患者の終末期ケア -がん治療、いつやめるか?
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...

徳田 安春 先生

和足 孝之 先生

島根大学 卒後臨床研修センター

和足 孝之 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2016年03月02日です。

例えばあなたががんに罹患し、様々な治療を試しても効果が得られなかった場合、「いつがんに対する治療を止めるか」の判断は極めて難しい問題であるといえます。たとえ最善の治療を受けたとしても、がんの進行を止めることができないことはあります。自らがその事実を受け入れることは難しいものですが、そのような場合には、治療を中止することが最善の選択になりうるのです。治療を受ける代わりに快適な生活を送り、目的をがんの疼痛から解放されることにシフトチェンジすることも可能です。

本稿では、がん治療を中止し、終末期のケアに移行するタイミングをどう判断するかについて説明します。これをもとに、どのような選択肢が残されているのか、あなたにとっての最善を選択は何か、主治医と相談することを推奨します。

がん治療を開始した当初は、治療によりがん細胞がなくなり再発が防げるかもしれない、という望みがあります。しかし、治療を受けているにも関わらず腫瘍が増大し続けた場合には、更に治療を継続しても効果が得られる可能性は低くなってしまいます。

この現象は、乳がん大腸がん肺がん肉腫のような固形がんの場合に特によくみられます。医師はこれらのがんが増大したり縮小したりするケースを何度もみているため、がんが治療にどのように反応するかをよく知っています。また、初期治療が功をなさなかった場合に、繰り返し治療を行っても全く、ないしほとんどメリットがないとわかっています。

仮に3種類の治療法を試してみたにも関わらず、がんが大きくなって進行していると考えてみましょう。この場合、その後更なる治療を試みても体の状態は改善しないでしょうし、おそらく延命にも繋がらないでしょう。それどころか、追加治療をすることで、かえって重篤な副作用が起こり寿命を縮めてしまったり、残された時間の生活の質が損なわれてしまうことにもなりかねません。

未だに進行がん患者のおよそ半数が、治療効果が得られる可能性はほぼ皆無にも関わらず、化学治療を続けています。これにより、不必要に苦しんでしまうという道を辿ることになるのです。

患者にとっても医師にとっても、がん治療を中止して終末期ケアへと目を向けていくことを話し合うのは難しいものです。まずは患者であるあなたから相談を持ちかける必要があるかもしれません。医師はあなたのどのような質問にも答えてくれることでしょう。

ここで理解しなければならないのは、がんがどのくらい進行しているかということです。がんのステージと、どのくらいがんが広がっているかを医師に尋ね、予後や寿命についても質問していきましょう。医師は、この先どのくらいの期間あなたが生きていられるかを、月単位もしくは年単位で教えてくれるでしょう。

また、追加治療により延命を期待できるかも知る必要があります。ですから、あらゆる治療において、必ずメリットとデメリットを確認することを推奨します。この時点で、もはやがんに立ち向かうことは最善の選択でない可能性もあります。

また、もしも「有効性は担保されていないが新しい治療法」が存在し、あなたが治療を継続したいと望む場合は、臨床試験に参加できる可能性もあります。臨床試験では、新しい実験的な治療法を受けることができます。ご自身が臨床試験に参加する資格を有するかどうか、主治医に尋ねてみましょう。

症状を和らげ、生活の質を改善するための医療を「緩和ケア」と呼びます。緩和ケアは、がん治療中のどの段階においても受けることが可能です。もうこれ以上がん治療を続けたくないと考えた時、その時こそがホスピスケアとも呼ばれる緩和ケアに目を向ける時なのです。

終末期に対するケアのことを、「ホスピスケア」と呼びます。ホスピスとは、終末期の肉体、精神、そしてスピリチュアルな面に対してケアを施すことです。がんそのものを治療するわけではありませんが、疼痛をはじめとする様々な症状を解消する役目を果たし、残された時間を家族と最大限有効に活用するために役立つのです。

ホスピスケアは自宅やホスピス施設、病院等で受けることが出来ます。ケアの例に記します。

・医師、看護師によるケア

・疼痛コントロール

・症状を和らげる医療機器、医薬品

・家族や友人への精神的サポート

・ソーシャルワーカーからの支援

・介護者を休ませるためのレスパイト入院

米国臨床腫瘍学会では、患者にがんに対する有効な治療法が残されていないと判断できた段階で、ホスピスケアを視野に入れるべき、としています。

ホスピスケアを視野に入れるタイミングは

・寿命が6か月以内と医師が判断したとき

・リスクを上回る利益を得られる治療法が他にないとき

・(患者が)残された時間の過ごし方を考えたいというとき

医師に対する質問集

自分のがんについてどこまで知りたいか、終末期医療について話し合うべきタイミングはいつであるかを、あらかじめ主治医と話し合っておくとよいでしょう。

主治医に質問してみましょう

・「もし更に治療を続けたとしたら、私はあとどれだけ生きられるのでしょうか?もし治療しなかったらどうなってしまうのでしょうか?」

・「追加治療の目的は何ですか?治療によってがんの進行が止めたり遅らせたり、症状を軽減することはできますか?」

・「症状や副作用をコントロールする最善の方法は何ですか?」

・「生活のクオリティを高めるために、自分でできることはありますか?」

・「ホスピスケアに詳しい人に会う必要はありますか?」

ホスピスケアについてさらに詳しく知りたい場合は、主治医にホスピスケアを紹介してもらいましょう。

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能

監修:和足孝之先生、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    日本内科学会 総合内科専門医日本プライマリ・ケア連合学会 指導医・プライマリ・ケア認定医

    徳田 安春 先生

    徳田 安春 先生の所属医療機関

  • 島根大学 卒後臨床研修センター

    日本内科学会 認定内科医

    和足 孝之 先生

    日本有数の急性期病院で総合内科医として幅広く重症患者を診療した経験から、複数疾患を持つ高齢者が増加し続ける今後の日本の医療で必要なものは”ジェネラルマインド”であると訴え続けている。総合診療の領域で現在有名となっている東京城東病院・総合内科では、当初1人だけで勤務する立ち上げ業務から開始、同院総合内科が現在の地位を築く礎を作った。その後、2015年度より旅行医学・臨床熱帯医学を修めるためにタイの名門 マヒドン大学臨床熱帯医学大学院へ。そして、2016年より島根大学卒後臨床研修センターに在籍。全世界に通用する日本の医療を目指して、Choosing Wisely翻訳プロジェクトに参画。

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