インタビュー

若年性特発性関節炎とは

若年性特発性関節炎とは
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授 森 雅亮 先生

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授

森 雅亮 先生

若年性特発性関節炎は、これまで小児リウマチや若年性関節リウマチとも呼ばれていた疾患です。成長痛などと区別されずに診断が遅れると、関節が破壊されて日常生活に支障をきたすだけでなく、命にかかわる重い合併症を引き起こすこともあります。小児膠原病のエキスパートであり、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座で教授を務める森雅亮先生に、若年性特発性関節炎についてお話をうかがいました。

若年性特発性関節炎とは

若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis: JIA)は「16歳未満で発症し、6週間以上持続する原因不明の関節炎で、他の病因によるものを除外したもの」と定義されています。小児期の慢性関節炎のなかでもっとも頻度の高い疾患で、これまでは若年性慢性関節炎(JCA)、若年性関節リウマチ(JRA)などの呼び方がありましたが、現在では若年性特発性関節炎(JIA)に統一されています。

難病や子どもの慢性疾患に対する医療費助成の制度が改正され、いち早く2015年1月から若年性特発性関節炎(JIA)が小児慢性特定疾病に指定されました。また、2018年4月から関節炎型JIAが加わって、全身型・少関節炎型・多関節炎型が統合され「若年性特発性関節炎」として難病指定されました。

病型ごとの患者数・頻度

病型欧米日本

①全身型5~15%41.7%

②少関節炎50~80%20.2%

③リウマトイド因子陰性多関節炎17%13.7%

④リウマトイド因子陽性多関節炎3%18.2%

⑤乾癬性関節炎0~11%0%

⑥付着部炎関連関節炎1~10%1.6%

⑦未分類関節炎11~21%4.7%


日本における若年性特発性関節炎(JIA)全体の有病率は小児の人口10万人あたり約10〜15人で、欧米とあまり差がありません。しかしながら、病型ごとの発症頻度にはそれぞれ違いがあります。特に全身型の発症頻度に大きな違いがみられる点については、いくつかの理由があります。

若年性特発性関節炎(JIA)の全身型と関節型を成人の場合に置き換えると、関節型のJIAは関節リウマチに相当しますが、全身型JIAは成人スティル病という別の病態として扱われ、治療も異なります。           

ところが日本を含む東アジアでは発熱性の疾患が多くみられ、血球貪食症候群(けっきゅうどんしょくしょうこうぐん)という、自分の細胞を食べてしまうような、マクロファージ活性化症候群(MAS)に似た病態を起こしやすいという疫学的なデータがあります。

このため不明熱を主症状とする患児の原因疾患をすべて特定することが困難な面があり、また医療制度上の理由などから明確に除外しきれない症例が含まれているという部分があります。

次に関節型の若年性特発性関節炎のとらえ方についてですが、少関節型(少関節炎)と多関節型(リウマトイド因子陰性/陽性多関節炎)の違いは、炎症を起こしている関節の数によって決まっています(参照:「若年性特発性関節炎の分類」)。

しかし関節炎の診断は医師によって異なる場合があり、いったん少関節炎と診断されても、実はもっと多くの関節に症状が出ていたなどということもあります。したがって、初期診療における指標として、この分類にはあまり意味がないと言わざるを得ません。

現在のところ、唯一の客観的な指標はリウマトイド因子(RF)が血液検査で陰性か陽性かという部分だけです。関節エコー検査を用いることで、診察時には分からなかった関節炎の状態がより正確に診断できる場合がありますが、小児の関節エコー所見についての標準化もまだまだこれからの課題となっています。今後はより客観的な指標に基づいて診断を行なっていくことが大切であると考えます。

男女比と発症年齢のピーク

男女比は病型によって異なりますが、全身型では1:1で男女ほぼ同数です。一方、少関節炎や多関節炎では女児のほうが多い傾向があり、比率は1:3〜1:4程度となっています。

また、発症年齢のピークは次の通りです。

  • 全身型:1〜5歳
  • 少関節炎:1〜2歳
  • 多関節炎:1〜3歳と小児期後期

多関節炎における2つのピークのうち、1〜3歳の部分は小児期の特性であると考えられます。しかし、10歳以上の小児後期については大人の関節リウマチに近い病態であるとも考えられます。

冒頭にお示ししたように、若年性特発性関節炎の定義としては「16歳未満」が年齢のボーダーラインとなります。したがって、特殊な例では14歳頃に発症して成人後も長年にわたり症状が続いている「成人移行型若年性特発性関節炎」のようなケースもありえます。

ただし、このような症例が一般的な成人の関節リウマチとどう違うのか、あるいはどの部分が同じなのかということは十分解明されていません。子どもから大人までの関節リウマチの病態を系統的にとらえ、統計学的・疫学的な面も含めて研究していくことが、今後の大きなテーマのひとつであると考えています。

 若年性特発性関節炎の分類―7病型とは

若年性特発性関節炎は大きく2つに分類されます。ひとつは全身型、もうひとつは関節型です。前者の全身型はJIAのなかでもっとも多くみられるもので、後者の関節型はさらに少関節炎、多関節炎などに分かれています。

現在、国際リウマチ学会(ILAR)の分類が小児の慢性関節炎の国際基準となっていますが、このILAR分類では若年性特発性関節炎(JIA)を下記の7病型に分類しています。

  • 全身型若年性特発性関節炎
  • 少関節炎
  • リウマトイド因子陰性多関節炎
  • リウマトイド因子陽性多関節炎
  • 乾癬性関節炎
  • 付着部炎関連関節炎
  • 未分類関節炎

これらの7病型については、次の記事でくわしくご説明します。