インタビュー

若年性特発性関節炎の分類

若年性特発性関節炎の分類
森 雅亮 先生

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授

森 雅亮 先生

この記事の最終更新は2016年02月10日です。

若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis: JIA)という概念は、国際リウマチ学会(ILAR)と世界保健機関(WHO)の主導によって1994年に提唱され、その後さまざまな修正を経て国際的な定義・分類として統一されたものです。小児膠原病のエキスパートであり、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座で教授を務める森雅亮先生に、若年性特発性関節炎の分類についてご説明いただきました。

国際リウマチ学会(ILAR)の分類は小児の慢性関節炎の国際基準となっており、このILAR分類では若年性特発性関節炎JIA)を以下の7病型に分類しています。

1つ以上の関節で関節炎があり、発熱が少なくとも2週間(そのうち3日は連続)続き、次の項目のいずれか1つ以上の症候を伴う関節炎。

  • 平ら、もしくは少しもりあがった赤い発疹が一過性に現れる
  • 全身のリンパ節の腫れ
  • 肝臓または脾臓が腫れて大きくなっている
  • 内臓をおおっている漿膜(しょうまく)の炎症

【除外:a、b、c、d】 (※除外項目の詳細は末尾に記載)

なお、全身状態が消失し、関節炎のみが残った状態を「全身型発症多関節炎」と定義し、下記の多関節炎とは区別します。

発症から6ヵ月以内の痛みや腫れのある関節が1~4カ所までに限られる関節炎。それ以降の経過によって、さらに次の2つのタイプに分けられます。

  • 持続型:発症からの全経過を通して、関節炎が4カ所以下にとどまる
  • 進展型:6ヶ月以降、関節炎が5カ所以上に増える

【除外:a、b、c、d、e】

発症から6か月以内の関節炎が5カ所以上あり、RF(リウマトイド因子)が陰性。

【除外:a、b、c、d、e】

発症から6か月以内の関節炎が5カ所以上あり、3ヶ月以上の間隔をあけてRF(リウマトイド因子)を測定して陽性。

【除外:a、b、c、e】

乾癬(かんせん)を伴った関節炎、あるいは次の2項目以上を伴う関節炎。

  • 指趾炎(ししえん・手足の指全体の腫れ)
  • 爪の変形(点状凹窩、爪甲剥離症
  • 親・きょうだいの乾癬患者

※乾癬(かんせん)は皮膚から少し盛り上がった赤い発疹を特徴とする慢性の皮膚疾患です。

【除外:a、b、c、d、e】

関節炎と付着部炎の両方がある。または関節炎と付着部炎どちらか一方があり、少なくとも次の 2項目以上が陽性。

  • 仙腸関節の圧痛または炎症性の腰仙関節痛
  • HLA-B27という特定の遺伝子型が陽性
  • 親・きょうだいに強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)、付着部炎関連関節炎、炎症性腸疾患に伴う仙腸関節炎、Reiter症候群(反応性関節炎)、急性前部ぶどう膜炎の家族歴
  • しばしば眼の痛みや赤み、羞明(しゅうめい・まぶしさを過剰に感じること)を伴う前部ぶどう膜炎
  • 6歳以上で関節炎が発症した男児

【除外:a、d、e】

若年性特発性関節炎の定義に当てはまるもののうち、上記の分類基準を満たさない、あるいは 2 つ以上の分類基準に重複するもの。

【若年性特発性関節炎(JIA)の定義】

16歳未満で発症し、6週間以上持続する原因不明の関節炎で、他の病因によるものを除外したもの

【除外項目】

  1. 患児本人・親・きょうだいが乾癬(かんせん)にかかっているか、過去にかかったことがある
  2. HLA-B27という特定の遺伝子型が陽性で、6歳以降に関節炎を発症した男児
  3. 強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)・付着部炎関連関節炎・炎症性腸疾患に伴う仙腸関節炎・Reiter症候群(反応性関節炎)・急性前部ぶどう膜炎のいずれかにかかっているか、親・きょうだいが過去にかかったことがある
  4. 3か月以上の期間をおいて少なくとも2回以上の免疫グロブリン(Ig)M-RF型陽性
  5. 全身型若年性特発性関節炎の所見がある

前項のILAR分類による7病型は、国際的な共同研究などにおける共通言語として重要なものですが、日本における小児リウマチ診療の実情を考えた場合、特に初期診療においては必ずしも有用な分類であるとは言えません。

実際の診療においては、若年性特発性関節炎JIA)はまず大きく2つに分類されます。ひとつは全身型、もうひとつは関節型です。前者の全身型はJIAのなかでもっとも多くみられるもので、7病型の①に相当します。関節型は②〜④までを指します。また、⑤〜⑦はそれぞれ何らかの症状が背景にあることから「症候性」と位置づけられています。割合としては「全身型」と「関節型」でJIA全体の90%以上を占めており、「症候性」はごく少数にとどまります。

  • 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授

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    森 雅亮 先生

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