インタビュー

甲状腺クリーゼの治療方法  基本はホルモンの働きを弱める

甲状腺クリーゼの治療方法  基本はホルモンの働きを弱める
赤水 尚史 先生

医療法人神甲会 隈病院 院長

赤水 尚史 先生

この記事の最終更新は2016年02月27日です。

バセドウ病などの甲状腺の病気が急激に重症化した場合などに起こる「甲状腺クリーゼ」は症状が重いケースが多く、対応は一刻を争います。一方、症状の原因となる甲状腺ホルモンが血液中に増えた原因によって治療方法も変わってきます。その治療方法について和歌山県立医科大学内科学第一講座教授 赤水尚史先生に、お話をうかがいました。

救急患者の場合、まず生命を助けるのが一番重要なことですから、症状に応じた対症療法をガイドラインなどに従って行います。疑い例も含めて甲状腺クリーゼと分かれば、すみやかに甲状腺ホルモンを下げるのが基本で、それをしない限り症状は改善しません。

特にバセドウ病などの甲状腺機能亢進症がある場合、甲状腺ホルモンの産生・分泌を抑えるため無機ヨウ素薬(無機ヨード)のヨウ化カリウム丸50mgを6時間ごとに投与します。口からの服用・摂取が難しい場合は内用ルゴール液を鼻から管を通して直接、胃に投与します。

甲状腺のホルモンを合成する機能を押さえる大量の抗甲状腺剤(チアマゾールやプロピルチオウラシル)と無機ヨードを投与することも有効です。

甲状腺機能亢進症のように過剰な甲状腺ホルモンが生成・分泌されるような病気の患者さんでなくても、血液中に甲状腺ホルモンが増えてクリーゼを起こしている場合があります。この場合は新たな生成を抑える必要はありませんが、甲状腺ホルモンの働きを弱める必要があります。

バセドウ病などを持つ方のクリーゼでも同様なのですが、過剰な甲状腺ホルモンによって強いストレスを受けたようになり、副腎皮質ホルモンが分解され、急性副腎不全を合併している場合があります。これに対しては、そのストレスに対抗するため、副腎皮質ホルモン薬「ヒドロコルチゾン」を初回 200mg、以後6~8時間毎に100mgを点滴静脈注射で投薬します。この投薬には甲状腺ホルモンT4が、さらに活発な働きをするT3に変化するのを抑制することが期待できます。

不整脈や頻脈があるときは甲状腺ホルモンの過剰な働きが弱まるまでβ遮断薬も併用します。

脱水状態になりやすいので電解質やビタミン剤を輸液するのはまず基本です。熱を下げる場合は集中治療室(ICU)などで室温を20度以下にしたうえ、氷嚢(ひょうのう)などで全身を冷やします。アスピリンは一部の甲状腺ホルモンを増やすため、使用の際は薬の選択に気をつけないといけません。

黄疸(おうだん)を伴う肝不全では血漿(けっしょう)交換を行う場合もあります。

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