ヘルペス性角膜炎とは、2種類のヒトヘルペスウイルスによる角膜感染症のことを指します。このうち帯状ヘルペスウイルスによるものが原因の場合は、目の症状だけでなく皮膚に発疹が現れることもあると、国際医療福祉大学病院眼科教授の水流忠彦先生はおっしゃいます。体調不良や紫外線が引き金となり起こることが多いといわれるヘルペス性角膜炎とはどのような眼疾患なのか、引き続き水流先生にお話しいただきました。
人間に感染するヒトヘルペスウイルス(HHV)は全部で8種類あり、このうち単純ヘルペスウイルスと帯状ヘルペスウイルスが角膜感染症の原因となります。この2つのヘルペスウイルスは共通部分もありますが、眼の症状や治療法がかなり異なります。
帯状ヘルペス性角膜炎は、3つに枝分かれしている三叉神経第1枝の「眼神経」領域に皮膚病変(皮疹:皮膚の発疹)が現れることが多く、これにより診断が容易につけられることが多いですが、稀に皮疹が明らかでない場合もあります。
単純ヘルペス性角膜炎には、(1)角膜上皮に病変がみられるタイプと、(2)角膜実質に病変が及ぶタイプがあり、それぞれの所見や病名は次のように異なります。
これらの特徴的な所見がみられた場合は、臨床的には単純ヘルペス角膜炎と診断してもよいでしょう。
ただし、先述した帯状ヘルペス性角膜炎でも木の枝のような形状の「偽樹枝状角膜潰瘍」を起こすことがあるため、皮疹を伴わない帯状ヘルペス角膜炎との鑑別はやや難しくなります。
日本人の多くは幼小児期にヒトヘルペスウイルスに感染しており、成人ではほとんどがヒトヘルペスウイルスを体内(神経節細胞)に持っていると考えられています。そのため、体調が悪く抵抗力が低下しているときにヘルペスウイルスが再活性化してしまい、角膜炎として現れることがあります。また、紫外線や眼の外傷もヘルペスウイルスを活性化させることが知られていますので、海や山などで紫外線を浴びる機会が多い方はサングラスで眼を保護するよう心掛けることが大切です。
日本で保険適用されている抗ウイルス薬は、現在のところアシクルビル眼軟膏(製品名:ゾビラックス)のみですので、軟膏を塗布する方法で治療を行って行きます。
※海外では、点眼薬も使用されています。
また、重症例にはバラシクロビルという内服薬などを処方したり、点滴による全身投与を行うこともあります。
ヘルペス性角膜炎の治癒後も、体内(神経節細胞)にはヒトヘルペスウイルスが潜伏し続けています。そのため、ヘルペス性角膜炎は体調不良時などに再発してしまうことがあります。また、再発を繰り返すことで、角膜に混濁が残り、視力障害を来してしまうこともあります。
現在、コンタクトレンズはあらゆる世代の方に定着していますので、角膜感染症をはじめとする様々な眼疾患を防ぐためには、日ごろから使用法をきちんと守って使用するとともに、眼科での定期検査を必ず受けることを忘れないようにしましょう。また、糖尿病やステロイド薬など免疫抑制薬の使用も角膜感染症の誘因となりますので注意が必要です。
水流 忠彦 先生の所属医療機関
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