絨毛性疾患の診断においては日本と海外では診断基準に多少の違いはあるものの、基本的には大差はありません。九州大学病院産婦人科の兼城英輔先生に、絨毛性疾患の診断についてお話をうかがいました。
胞状奇胎の続発症として起こる侵入奇胎や絨毛がんは、基本的には腫瘍の一部を生検あるいは子宮摘出後の組織検査を行って診断をつけるように推奨されています。しかし、胞状奇胎の後、妊娠性ホルモンが上昇してきて、検査を行っても病変がはっきりとわからなかったり、病変はあっても組織検査が難しい場所にあったりと、組織検査をしないことが多くなっています。このような場合には、画像診断やこれまでの病歴などを聴取するなどして臨床的に診断をつけるのが一般的です。
このカテゴリーに入るのが、存続絨毛症です。存続絨毛症はhCG存続症、臨床的侵入奇胎、臨床的絨毛がんの三つに分類されます。胞状奇胎の後、経過は順調であるにもかかわらず、妊娠性ホルモンが低下せず、検査をしても病変がみつからないといったタイプのものをhCG存続症といいます。一方、画像などによって病変がはっきりとわかっているものに関しては、臨床的侵入奇胎と臨床的絨毛がんのふたつにわけられます。診断は「絨毛がん診断スコア」を用いて行います。
診断基準は欧米と日本では微妙に異なる点もありますが、基本的な部分に関しては変わりはありません。日本では、比較的予後のいい、おとなしいタイプのものを臨床的侵入奇胎というカテゴリーに入れています。一方、予後の悪いタイプのものを臨床的絨毛がんと分類しています。国際学会での分類によると、リスクの高い絨毛性疾患と、リスクの低い絨毛性疾患というように分類されています。
診断は「絨毛がん診断スコア」を用いて行いますが、日本においては4点以下が臨床的侵入奇胎で、5点以上であれば臨床的絨毛がんです。国際基準であるFIGOの診断基準では、6点以下が悪性度の低い「ローリスクの絨毛性疾患」で、7点以上が悪性度の高い「ハイリスクの絨毛性疾患」となっており、臨床的侵入奇胎と診断された症例のほとんどは、FIGOの診断基準では「ローリスクの絨毛性疾患」にあたります。
存続絨毛症のカテゴリーに含まれる症例で、画像検査などから異常があるものについては、組織検査を行って侵入奇胎や絨毛がんと診断するよりも、診断スコアを用いて臨床的侵入奇胎や臨床的絨毛がんと診断することのほうが多くなります。
侵入奇胎や臨床的侵入奇胎など低リスクの絨毛性疾患の場合、胞状奇胎の後、半年以内といったように比較的早い時期に起きてきます。一方、絨毛がんなどハイリスクの場合には、一旦妊娠性ホルモンが陰性化した後に再び妊娠性ホルモンの値が上昇してきます。先行妊娠より3年以上経過して発症したり、正常なお産の後で発症してきたような場合には、臨床的絨毛がんと診断します。
続発症を起こす要因については不明なことが多いのですが、一般的に全胞状奇胎の場合はおよそ1~2割程度続発症を起こしてくるといわれています。一方、部分胞状奇胎は2~4%続発症を起こすとされていますが、遺伝子診断で部分胞状奇胎と診断された症例からは続発症は起きないとする報告もあり、実際には、全胞状奇胎が部分胞状奇胎と診断されているケースも少なからず含まれているのではないかと推測します。
北九州市立医療センター 主任部長
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