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インタビュー

侵入奇胎と絨毛がんの知識―絨毛性疾患とは(2)

侵入奇胎と絨毛がんの知識―絨毛性疾患とは(2)
堤 治 先生

山王病院 (東京都) 院長

堤 治 先生

胞状奇胎かもしれないといわれたら―絨毛性疾患とは(1)」に引き続き、この記事では絨毛性疾患のうちの「侵入奇胎」と「絨毛がん」についてご説明します。山王病院院長 堤治先生にうかがいました。

侵入奇胎とは胞状奇胎が子宮の深い部分(子宮筋層)まで広がってしまった状態のことをいい、前がん状態と考えることもできます。

侵入奇胎のほとんどは全胞状奇胎に続いて起こります。全胞状奇胎の10〜20%、部分胞状奇胎の2〜4%が侵入奇胎に発展すると言われています。胞状奇胎を除去した後、6ヶ月以内に発生することが多いため、定期的な血液検査を必ず行わなければなりません。

日本ではいくつかの臨床項目から〈絨毛がん診断スコア(表)〉を採点し、5点以上では絨毛がん、4点以下は侵入奇胎として診断しています。
 

確定診断をするためには子宮摘出後に病理学的な診断が必要なため、このスコアを用います。

侵入奇胎の治療の基本は抗がん剤による化学療法であり、hCGの値(妊娠したときのみ分泌される特殊なホルモンの値)を観察しながら投与します。侵入奇胎に対しては抗がん剤がよく効くため、子宮や卵巣の施術はほとんどの場合必要ありません。治癒率は100%に近いです。

治療後(化学療法後)の妊娠に関しては問題ないとする報告がほとんどです。治療早期には再発の可能性があり、経過を見る必要があるため、原則として1年間の避妊後、妊娠が許可されます。治療終了後6ヶ月以内の妊娠では流産率の上昇する傾向があるので注意が必要です。

絨毛がんも侵入奇胎と同様に子宮の筋肉内に腫瘍を形成しますが、増殖や進展のスピードが侵入奇胎よりも早く、悪性度の高いがんであるといえます。絨毛のがんである絨毛がんは全胞状奇胎の1〜2%に続発します。一方、胞状奇胎から絨毛がんへの発展は胞状奇胎の治療と奇胎晩出後管理の徹底によって減少しています。

ただし、絨毛がんは胞状奇胎のみから続発するものではありません。すべての妊娠正常分娩、死産、流産異所性妊娠など)に続発する可能性があります。事実、これらに続発するパターンが半分を占めています。

正常分娩後や流産後に不正性器出血が持続しやすいのが一つの特徴です。また、肺転移や脳転移が見られる場合もあり、それによる症状(肺転移であれば咳や血痰、脳転移であれば意識障害と脳出血など)が出現して初めて絨毛がんと診断されるケースもあります。肺転移の確率は高く、症例の3分の2に見られます。

診断を確定するには、病巣を直接摘出し病理診断を行わなければいけません。しかし実際には、通常では超音波検査、MRI検査やCT検査などの各種画像診断、〈絨毛がん診断スコア〉などを合わせて、「臨床的」に絨毛がんと診断されます。

「臨床的」というのは、病理診断のような組織学的な確定診断ではなく、先の表をみてもわかる通り、症状や数値から判断される絨毛がんであるという意味です。ただし、その正診率、つまり組織学的にも絨毛がんである可能性は91%と極めて高いです。

侵入奇胎と同様に、絨毛がんに対しても抗がん剤(化学療法)がよく効きます。hCGを定期的に測定しながら治療の効果判定をします。侵入奇胎の場合は1剤、もしくは2剤の併用による化学療法でほぼ100%治癒します。したがって子宮や卵巣を手術することはほぼありません。一方で、絨毛がんの場合は初回から強力な多剤併用化学療法が必要であることが多いです。また、難治例に関しては子宮摘出や転移卵巣の手術、放射線治療も含めたあらゆる治療が検討される可能性があります。絨毛がんの治癒率は80〜90%です。

絨毛がんは20代〜30代の患者さんが多く、将来的に妊娠・分娩ができるという観点からも化学療法が中心となっています。子宮摘出例などを除き、治療終了後、6ヶ月〜1年間の避妊後、病気の徴候が見られなければ妊娠が許可される場合が多いです。治療後妊娠した場合の流産率や奇形率は、一般の妊娠と比べて特に差はありません。主治医と相談することが大切です。

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