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IT政策は未来への投資-生産労働人口の減少を乗り越えるためのデータ利活用

IT政策は未来への投資-生産労働人口の減少を乗り越えるためのデータ利活用
平井 たくや さん

衆議院議員・自民党IT戦略特命委員長

平井 たくや さん

急速に進展する少子高齢化に対応するため、現在わが国ではインターネットなどの高度情報通信ネットワークを用いた大量のデータ利活用と、そのための環境整備が課題とされています。データの利活用により、私たちの暮らしはどのように変わるのでしょうか。また、デジタルファーストの実現のために、私たち国民が知っておくべきことには何があるのでしょうか。自民党IT戦略特命委員長として日本のIT政策を牽引し続けている平井たくや先生にお伺いしました。

「長寿」は戦後日本が得た成果のひとつ

戦後、日本が経済成長とともに得た大きな成果には「長寿」があります。

厚生労働省のデータによると、日本人の平均寿命が男女共に50歳を超えたのは昭和22年のことです。(男性50.06歳、女性が53.95歳)

私が生まれた昭和33年の平均寿命は男性で64.98歳、女性で69.61歳となっており、還暦を迎えられるということは、まさしく慶賀すべきことであったのです。

その後、日本では国をあげた感染症対策や国民皆保険制度の確立など、様々な取り組みが行われ、現在の平均寿命は男女共に80歳を超えるところとなりました。

少子高齢化社会で1人当たりGDPを増やすために

生産労働人口が減少するなかで生産性を向上させることは可能か?

しかし、その一方でわが国では少子化が進んでおり、生産労働人口が減少するなかで社会保障は増え続けるという問題が生じています。

日本のGDPはアメリカ・中国に続き世界第3位となっていますが、1人当たりのGDPは世界26位、経済成長率は160位(2015年)と低い位置に留まっています。

このような状況下で、国民に過剰な負担を強いることなく、社会を発展的に維持していくには、1人当たりGDPの増加を目標とし、以下の改革を同時並行で進めていく必要があります。

  • ITの利活用
  • ITを意識しないIT社会
  • デジタルデバイド対策
  • 労働参加率の向上
  • 働き方改革
  • 生産性の向上
  • 人材投資
  • 行政の業務効率化
  • バックオフィス改革

たとえば、働く人の生産性向上のみを加速的に進めることは負担の増加に繋がるため、働き方改革やITの利活用も同時に行うことが重要なのです。

これからの働き方、企業の在り方

兼業を原則禁止から原則容認へと方向転換

歯科衛生士

働き方改革としては、現在日本の企業の多くが就業規則で禁止している副業・兼業を原則容認へと転換することが重要です。これらからの社会は、働く人が自分自身の時間の使い方を自分で決めることができ、スキルアップのチャンスや選択肢に富む世界であるべきだと考えます。

現在の日本には、取得した資格を使えないまま眠らせてしまっている方が多数おられます。現場では常に人員不足傾向にある看護師や歯科衛生士の資格を持つ方々のなかには、”週5日間9時から5時まで”という足枷さえなければ、ご自身の能力を社会で活かしたいと考える方もいるでしょう。

人材を必要としている企業(施設)と供給できる方のマッチングをうまく行えるフレキシブルな社会を実現できれば、働く人は自分の人生をセルフコントロールしながら、生産性を上げていくことができます。もちろん、働くことばかりが選択肢ではありません。

日本に暮らす人が、豊かさを感じながら自由に自分の道を選んでいくための環境構築。この視点を忘れてしまうと、今後の社会はネガティブな要素ばかりが顕在化するものにもなりかねません。

未来への投資イコールIT政策

働き方改革と同時に、本記事のメインテーマでもあるデータの利活用と、そのための構造改革を進めていくことが急務とされています。

私は、未来への投資とはIT政策そのものなのではないかと考えています。より強い言葉で言えば、社会システムを進化させない限り、人口の減少が進む日本において財政再建を目指すことも、国民一人ひとりの生産と消費を促すことも難しいと考えます。

原則ITへと移行し徹底的な効率化を

窓口で書類をもらう人

社会システムの進化とは、行政手続などの徹底的な効率化を指します。

たとえば、転居や結婚するとき、私たちは役所の窓口などに足を運び、必要書類を提出する必要があります。人が生まれたとき、亡くなったときも同様です。

つまり、現行の社会システムでは、生まれてから亡くなるまでに、何度も市役所や区役所に赴くための時間と労力を使わざるを得ないというわけです。

この時間を削減するためには、以下3項目の実現が不可欠です。

(1)デジタルファーストの実現

デジタルファーストとは、対面原則や書面原則を撤廃し、「原則IT」へと転換することをいいます。マイナンバーカードを活用して本人確認を行えるよう、カードの普及とシステム構築が必要です。

(2)コネクテッド・ワンストップ原則の実現

コネクテッド・ワンストップとは、利用者が省庁や自治体を意識することなく、どこでも、あるいは1か所でサービスを受けられることです。行政サービスのみならず、民間サービスも融合させ、あらゆるサービスをまとめて受けられる世界を目指します。

(3)ワンスオンリー原則の実現

ワンスオンリーとは、過去の手続き時に提出したデータを、再び提出する必要のない仕組みのことです。行政(国)から国民に対し、同じ書面を二度以上要求しないよう、バックヤードの連携強化が不可欠です。

これにより、戸籍謄本や住民票の写しといった書類は不要になり、拘束されていた時間を生産や消費のために使うことが可能になります。

上記3項目の実現のためには、これまで各省庁や各自治体が管理していた情報を裏で紐付け、横串を通す作業が生じます。戸籍関連事務や旅券事務に関しては、平成31年の通常国会を目処に法制上の措置を講ずることが閣議決定されており、実現の見通しが立っています。

もう一点、デジタル社会の実現のために不可欠な事項として、マイナンバーカードの普及と利活用が挙げられます。

マイナンバーカードはデジタル社会の新しいパスポート

パスポート

2016年1月にマイナンバー制度の運用が始まり、現在の日本では国民すべてが唯一無二の個人番号を持っています。しかしながら、マイナンバーカードの普及率は決して高いとはいえません。したがって、カードの普及はわが国の直近の課題であるといえます。

ITの利活用を前提とした社会では、マイナンバーカードが重要なポジションを占めることとなります。前項でも記しましたが、デジタルファーストの徹底により、行政サービスを受けるに本人確認も書面や対面からマイナンバーカードへと移行していきます。

また、12桁のマイナンバーとは異なり、マイナンバーカードのICチップを利用する公的個人認証サービスは、安全で確実な本人確認の手段として民間へも開放されています。

※マイナンバー(社会保障・税番号)は、社会保障と税の分野でのみ使用することができます。

マイナンバーカードは来たるデジタル社会における新たなパスポートのようなものであると捉えていただければ、その利便性に対する理解も進みやすくなるのではないでしょうか。

マイナンバーカードの普及が日本をIT先進国へと導く

国民一人ひとりが番号を持っている国は、日本のみではありません。エストニアやスウェーデン、デンマークなどは、国民ID番号が非常にスムーズに利活用されている国として知られています。

しかし、人口1億人を超える国のなかで、全ての国民に対し「カード」を発行しようとしている国は日本のみで、他に前例はありません。

今後マイナンバーカードが普及し、本人確認機能の利活用が根付けば、日本はインターネット上での本人確認が世界で最も正確かつ安全にできるIT先進国となります。前項までには国民の利便性という面からマイナンバーカードについてお話ししてきましたが、カードの普及は国の体力を強化するという意味でも、非常に大きな意味を持っているのです。

平井たくや先生が考える望ましいマイナンバーカードの在り方

平井先生

IT産業を国家の柱としているエストニアでは、国民ID番号の掲載されたチップ入りのカード1枚で、買い物や病院の受診など、あらゆるサービスが受けられます。日本におけるマイナンバーカード1枚に、健康保険証やクレジットカード、運転免許証などの機能が搭載されているということです。このような在り方こそ、国民にとって真に利便性が高いといえるのではないでしょうか。

日本では法律によりマイナンバーを特定個人情報と定めていますが、国民ID番号をこのように定義している国はほかにありません。なぜなら、番号のみをオープンにすることに特筆すべき害はなく、本人確認のために氏名や住所を公表するよりも遥かに安全性が高いからです。

このような理由から、日本でも将来的にはマイナンバーが名前に変わるオープン番号として取り扱われることになるのではないかと推測しています。ただし、それは私がこの仕事を引退する頃のことでしょう。