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自分の情報を自分の健康のために利用するには-健康寿命延伸を目的としたデータ利活用

自分の情報を自分の健康のために利用するには-健康寿命延伸を目的としたデータ利活用
平井 たくや さん

衆議院議員・自民党IT戦略特命委員長

平井 たくや さん

AIやIoTが各分野に導入され始め、行政サービスや民間サービス、そして医療サービスもより効率的に受けられる社会構築が進んでいます。自民党IT戦略特命委員長の平井たくや先生は、「データとはAIやIoTを動かすガソリンであり、データを効率的に利活用する仕組みを作らなければならない」とおっしゃいます。

自分の健康に関するデータを安全に利用し、より質の高い医療を受けるためには、どのようなシステムが必要なのでしょうか。実際に市民による健康データの利活用を実施している丸亀町商店街(香川県高松市)の具体例を交えながら、平井先生にお話しいただきました。

記事1『IT政策は未来への投資-生産労働人口の減少を乗り越えるためのデータ利活用』でもお話ししたように、戦後の日本が経済成長とともに得た成果には、長寿の実現があります。しかし、現在の日本は世界に誇る長寿という成果を持て余している状態です。

この成果を活用する手法として、医療データの利活用による健康長寿の産業化が挙げられます。具体例として、私の地元である香川県高松市においてスタートした健康寿命延伸のためのプロジェクトをご紹介します。

2017年3月、高松市の中央に位置する丸亀町商店街に、健康チェックや予防トレーニングなどのサービスを提供するセルフメディケーションプラザ「ボディバンク(bodybank)」がオープンしました。

ボディバンクとは、その名の通り自分の健康情報を預けて管理する予防医療のための拠点です。ボディバンクでは、“心とからだの健康寿命を10年のばそう”というスローガンのもと、次のようなサービスを行っています。

血管年齢や肺年齢、脳年齢、ストレス度や基礎体力をセルフチェックできるコーナーがあります。

予防トレーニングコーナーには最新の検査機器やマシンが完備されており、会員の方は自由に利用することができます。

ボディバンクで測定したデータは継続的に記録されていくため、体の小さな異変や病気の早期発見に役立てることが可能です。将来的には、このデータにお薬手帳や健康診断の結果も組み込まれる予定です。

ボディバンクに入会している会員を対象に、原則無料でヘルスケアや子育てなどに関するイベントやセミナーを定期開催する予定です。健康づくりだけでなく、同じ地域に住まう仲間を増やし、心身共に元気に過ごしていただくことを目的としています。

高齢の方々が仲良く喋っている様子

既に多くの方が自発的に会員登録し、施設とシステムを利用されています。健康指導に医師が携わっていることも、予防医療の新拠点として住民の信頼を得られた理由のひとつといえるでしょう。

これまでの日本には、ボディバンクのように一般市民が自分の健康データを預けて管理するという考え方はありませんでした。今後は豊かな長寿社会を目指し、発想を転換してデータを積極的に利活用していける世界を作っていきたいと企図しています。

商店街という言葉から、消費する場といったイメージを持たれる方も多いでしょう。しかし、丸亀町商店街は「医食住」が揃う生活の場となるべく、商業施設の上部にマンションを設け、現在では約1000人もの市民が生活する場となっています。

高齢者の方々にとっての住みやすさを意識し、医療機関を併設しているため、雨に濡れることなく、また公共交通機関を利用することなく病院を受診することができます。

また、診療報酬点数が上がる往診の仕組みも整っており、医療を提供する側にとってもメリットがあります。

ご存知のように、今後日本の高齢者人口は増す一方です。より多くの方が、歳をとっても自分の町で健康を維持しながら生活していけるよう、丸亀町商店街をモデルとした取り組みが全国へと広がることを願っています。

続いて、全国で早期に応用できる健康データ利活用の構想についてお話しします。

健康に関するデータには、各医療機関に保管されているカルテや健康診断の結果など、様々なものがありますが、このなかにはフォーマットが標準化されているものが一つだけあります。その唯一のデータとは、レセプトデータです。

レセプトデータとは、患者一人ひとりに対して行った保険診療の医療費(診療報酬)を1か月ごとに集計した診療報酬明細書のことです。

フォーマットが標準化されているということは、完全にネットワーク化はされていないものの、既にデジタル化はなされているということです。

現行の規定では、主治医の許可を得ない限り、患者本人が過去のレセプトデータをみることはできません。しかし、レセプトデータには10年保存の規則があるため、自分の病歴や薬歴などのデータは確かに蓄積されているのです。

救急車の車内

そこで今、レセプトデータを患者本人の意思によって、新たにかかる医師にみせられるような仕組みを作るプロジェクトを構想しています。

仮に救急搬送された場合、救急医がレセプトデータのサマリーをみることができれば、より迅速で適切な検査・診断を受けられる可能性があります。

もちろん、データのコントロール権は患者本人にあるため、レセプトデータをみせてもよいという意思の有無を明示できるような印をつける仕組みも必要です。

その際に活用できるものが、記事1『IT政策は未来への投資-生産労働人口の減少を乗り越えるためのデータ利活用』で詳しくお話ししたマイナンバーカードとHPKIです。HPKIは資格を有する医師などが持つ電子証明書であり、マイナンバーカードは患者さんの本人確認に使用できる機能を持つカードです。HPKIとマイナンバーカードの2つが揃ってはじめて過去のレセプトデータを医師がみられるように規定すれば、データの安全性は担保されます。

マイナンバーカードとは、預けた自分の健康情報を取り出すために、国民一人ひとりに付与されたにもなり得るというわけです。

過去のレセプトデータとは、自分自身の健康状態や体を知るうえで非常に重要な情報といえます。次世代医療基盤法案に記されている匿名加工医療情報の研究機関等への提供は、“巡り巡って”国民に利益をもたらすものですが、本構想を実現させることができれば、国民は即時的にメリットを得られます。

そのため、私は今年中に地域を限定して実証(社会への実装)を行い、効果を明示したいと計画しています。

患者さんにとって本当にメリットがあり、医療機関の負担が重くならないことが明らかになれば、地域の壁を取り払い、一度に全国に広げることもできます。これが、全国で標準化されているデジタル情報の強みです。

現時点では、全国で利活用できる標準化された医療データは、レセプトデータのみです。近い将来、カルテなどの情報をデジタル化、ネットワーク化せねばなない時代が到来した際には、莫大な労力やコストがかかるでしょう。医療分野に限らず、国や自治体が持っているあらゆるデータベースに関しても同様のことがいえます。

このような問題を次世代に持ち越さないために、今後はデータの開放を前提として、行政情報システムなどの企画・設計を行っていく必要があります。これを、オープンデータ・バイ・デザインといいます。この際には、必ず情報セキュリティを確保するための方策もデザインされていなければなりません。つまり、オープンデータ・バイ・デザインとセキュリティ・バイ・デザインは必ず2つセットで用いられなければならないというわけです。

人口が減少していくなかで国民の豊かな生活と国の発展性を維持していくためには、AIやIoT(インターネット・オブ・シングス)が至るところで活躍し、可能な限り人の手を介さずに物事が進むデータ駆動型社会の構築が欠かせません。データとは、AIやIoTを動かす血液であり、データ駆動型社会のガソリンとなるものです。昨年末に成立した「官民データ活用基本法」による重点計画により、今後進むべき方向性を定めることができるので、データというガソリンを社会に適切に供給できるよう、その基盤構築に力を注ぎ続けていきたいと考えています。