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医療現場での役割分担や医療の効率化としての特定看護師

医療現場での役割分担や医療の効率化としての特定看護師
草間 朋子 さん

東京医療保健大学 副学長/研究科長

草間 朋子 さん

記事1『特定看護師とは―未来の日本の在宅医療・チーム医療を担うキーパーソン』では、特定看護師の概要や特定看護師誕生までの経緯、特定看護師のメリットなどについてお伝えしました。日本では現在350人程度いるとされる特定看護師は、未来の日本が抱える医療の課題を解決できる可能性があります。特定行為を自律的に行えるという以外に、特定看護師が果たす役割はいったい何でしょうか。引き続き、日本看護連盟 会長 草間 朋子さんにお話をうかがいます。

特定看護師は、2025年に向けた社会保障制度改革のなかの在宅医療等を進めていくため方策として誕生し、研修制度が創設されました。また特定看護師はチーム医療においても、中心的役割として期待されています。

急速なスピードで超高齢社会を迎えた今、医師の地域偏在が問題視されています。すべての人々に十分に適切な医療を提供するためには、医師に医療のすべてを任せているだけでは難しく、チーム医療が不可欠です。そのため、比較的リスクの低い医療行為を特定行為として定め、研修を修了した特定看護師が行えるようにすることで、超高齢社会に対応しようという動きが始まっています。

チーム医療

特定看護師は、医師以外の医療職で唯一、医師の具体的指示を経ずに特定の医療行為が行えます。役割拡大が図られた特定看護師が法整備された現在、各医療職の特徴を生かした役割拡大は薬剤師や診療放射線技師、理学療法士などのリハビリ職、介護職などにも導入が検討されています。

今までは医療行為は基本的にすべて医師が指示し、医師の具体的指示がないと看護師やその他医療職は医療行為ができませんでした。しかし医師不足や診療科偏在、地域偏在が生じていることから、いつでもどこでもタイムリーに医師が他の医療職に指示を行えるとは限りません。

特に看護師は患者さんの近くにいることが多いため、患者さんの容態に変化があったときにいち早く気づくことができます。しかしながら従来の「医師に患者さんの状態を報告し、具体的指示を得て、処置を施す」というステップを踏んでいると、時間がかかってしまい患者さんが長い時間症状に苦しみます。現場の多くの看護師はこのことに課題を感じていました。

私は、医師は「疾病マネジメント」、つまり病気を治すことが大きな役割ですし、難病の解明、新たな治療法の開発など医療の進歩のために医師のリソースを集中させることが求められております。一方で、看護師が医師をより的確に助けるためには「症状マネジメント」、個々の患者さんの症状をアセスメントし、それをよりよい方向に持っていくための役割が大きくなっていくと考えます。このように役割分担を少しずつ明確にし、貴重な医師のリソースを、医師でなければできないことに集中させ患者さんのために迅速に対応ができるようにするための制度が、今回の特定看護師でしょう。

特定看護師であれば、たとえばけいれんの症状の現れた患者さんに対して手順書のもとすぐに抗けいれん剤の処方・投与ができます。こうした比較的リスクの低い医療行為に関しては看護師や他の医療職が担うことで、スムーズに患者さんの症状に対応でき、そして医療の効率化にもつながります。

財政・お金

1992年の「看護師等の人材確保の促進に関する法律」制定以降、看護教育の高度化が進められ、大学教育として看護師養成課程が数多く設けられ、特に正看護師の養成に力が入れられてきました。しかし急性期医療から慢性期医療へと社会のニーズが変化するなかで、すべての看護師が正看護師である必要があるのか、ということを考える必要が生じています。

日本の医療費は逼迫しており、限られた医療財源を有効利用しなければなりません。そのようななかでやみくもに正看護師を増やし続けたとして、たとえば専門職である彼ら彼女らの給与はどこから調達するのでしょうか。また、日本では人口が減り続けることが予想されています。今でこそ看護師不足が叫ばれ看護師の養成が急がれていますが、人口減少が続けば逆に看護師の過剰を招くことも容易に想像ができます。現に一部の医療法人では看護師の採用数を減らしているところもあります。

個人的には、看護師が現在行っている業務のなかには必ずしも専門知識・技術を持った看護師である必要がないものもあると考えています。そのような業務においては、看護職を階層化して看護補助者等を活用していくことも必要ではないでしょうか。看護補助者であれば看護師と比べ短期間で養成が可能ですし、看護補助者が増えることで、専門知識・技術を持つ看護師が真に行うべき業務に専念することができ、医療の効率化が期待できます。また、医療財源の有効利用にも一役買うでしょう。看護職間の役割分担も必要です。

このように役割を分担し、各専門職がより専門性を生かした業務に専念できることが、チーム医療において重要であると考えます。

草間会長

先ほども述べたように、特定看護師は医療職の役割分担の明確化と役割拡大のきっかけをつくることに大きく貢献したと思います。

これからは、従来の病気を治すだけの医療からの大きな転換が求められます。超高齢社会の今、求められているものは、治し支える医療です。この「支える」部分の医療においては、医師はもちろんのこと、看護師がこれまで以上に活躍できる範囲なのではないかと思います。患者さんが病気を抱えながらも前向きに過ごすためには、看護師がサポートを行い、症状が起きた場合は迅速に対処できることが求められます。それができるのは、現在では特定看護師だけです。

このように刻々と変化する今後の日本の医療を支えるため、特定看護師は必要とされています。日本の抱える医療の課題を解決するため、そして患者さんと医療従事者双方が納得できる医療を実施していくために、これからも特定看護師の養成や、特定看護師の役割をさらに拡大したNP(ナース・プラクティショナー/診療看護師)の法整備に向け、力を尽くしたいと考えています。