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インタビュー

機能性ディスペプシアとは? 約10人に1人がかかる胃痛や胃もたれの原因となる病気

機能性ディスペプシアとは? 約10人に1人がかかる胃痛や胃もたれの原因となる病気
中田 浩二 先生

東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 教授 、慈恵医大第三病院 中央検査部 診療部長

中田 浩二 先生

機能性ディスペプシアとは、日常診療で行われる一般的な検査で明らかな異常がみられないにもかかわらず、胃の痛みや胃もたれなどの不快な症状が続いている状態を指します。日本では約10人に1人が機能性ディスペプシアであるといわれており、決して珍しい病気ではありません。機能性ディスペプシアは命にかかわる病気ではありませんが、胃の症状によってご飯が美味しく食べられなかったり、気持ちが塞いで社会生活に支障をきたすなど、患者さんのQOL(生活の質)を大きく低下させてしまいます。今回は東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座准教授の中田浩二先生に、機能性ディスペプシアの症状や診断方法を中心に解説をしていただきます。

胃を抑えている人

機能性ディスペプシアとは、慢性的に胃痛や胃もたれなどの症状が続いているにもかかわらず、採血や内視鏡検査を行っても胃がん胃潰瘍などの症状を説明できる異常が特定できない病気です。

機能性ディスペプシアはその症状によって以下のように分類されます。

・食後愁訴症候群

食後愁訴症候群とは普段の食事摂取に伴って起きる症状で、食後のもたれ感や早期飽満感(食事の途中でお腹がいっぱいと感じ十分な量を食べられない)が特徴です。

・心窩部痛症候群

心窩部痛症候群とは心窩部(みぞおちのあたり)の痛みや焼ける感じが主な症状で、食事摂取の有無にかかわらず起こることが多いです。

機能性ディスペプシアの患者さんは日常的に多くみられますが、この病気については世間であまり知られていないのが現状です。内視鏡などの検査で原因が特定できないため「気のせい」といわれ、患者さんは自分が精神的に弱いことが原因だと思い込み、症状がさらに悪化してしまうこともあります。

しかし、機能性ディスペプシアの症状は決して「気のせい」ではなく、患者さんの日常生活にさまざまな支障をきたしています。またその原因もさまざまであることから医師が患者さんに親身に向き合って、原因を特定し適切に対処することが求められます。

次項では、機能性ディスペプシアが発症する主な原因について解説します。

機能性ディスペプシアの原因

 

機能性ディスペプシアの原因と考えられるもののひとつが胃の運動機能障害です。

胃には、口から入ってきた食べ物を貯留するために胃が膨らむ「適応弛緩(てきおうしかん)」や胃から十二指腸へ食べ物を送り出す「胃排出機能」などの働きがあります。

機能性ディスペプシアの患者さんはこれらの胃の運動機能がうまく働かないことや胃の知覚過敏が起きることで、胃の痛みや早期飽満感、胃もたれなどの症状が現れると考えられています。

さらに、このような状態にある胃に、過食や胃に負担のかかる物を食べるなどの食生活習慣が加わると、症状はさらに悪化してしまいます。

海外のデータですが、機能性ディスペプシアの患者さんでは一般の人より体重が多いという報告があります。これは、胃の働きが低下している上に過食をすることで、さらに胃に負担をかけているからだといえます。

もうひとつの原因は、心理社会的要因です。睡眠不足や過労などの身体への負担に加えて、悩みやストレスを抱えていることが、機能性ディスペプシアの症状を引き起こすといわれています。不安やうつなどの気分の不調も症状に影響します。

機能性ディスペプシアの原因シーソー
中田浩二先生ご提供

これは私が機能性ディスペプシアの原因について患者さんに説明する際に使用している絵です。胃の運動機能や知覚の障害、食事の負担などによる器の働きの要因、すなわち「器能性」とストレスや気分の不調などの心理的な要因による「気脳性」のいずれかに原因が大きく偏っている方もいれば、どちらにも同じくらい原因がある患者さんもいます。機能性ディスペプシアが疑われたら、患者さんとよく話をすることで原因を探索し、治療方針を決定します。

心理的な要因が大きく関係している場合には、患者さんの話をよく聞き不安を取り除くことで症状が改善する場合もあります。

機能性ディスペプシアが疑われたらまずは患者さんに、「自覚症状」「症状の出現する頻度」「症状の続いている期間」「症状が起きるときの状況」などを伺います。このような問診を行ったうえで、採血や内視鏡検査を行い胃潰瘍胃がんなど、症状の原因となる器質的、代謝性の疾患がないかどうかを調べます。薬を投与しても改善せず、患者さんが希望する場合には、病態を明らかにするために「胃排出機能検査」や「ドリンクテスト」を行います。

胃排出機能検査とは、胃から十二指腸へ食べ物を送り出す胃の働きに問題がないかを調べる検査です。機能性ディスペプシアの患者さんの約25〜40%に、胃排出機能の異常がみられるといわれています。

胃排出機能検査の主な方法にはラジオアイソトープ(RI)法と13C呼気試験法があります。ラジオアイソトープ法とは少量の放射性活性を持つ試薬(主に99mTc)を含んだ食物を摂取したあとに、体外からガンマカメラで腹部を撮影して食物の胃内残存率を経時的に測定するものです。一方、13C呼気試験法は食物のなかに13C標的化合物を混ぜたものを摂取したあとに、呼気に含まれる13Cの二酸化炭素の存在比を測定し、胃排出の速度を調べる方法です。

胃の適応弛緩障害は機能性ディスペプシアの患者さんの約40〜50%にみられます。容量負荷耐性を調べるために行うドリンクテストでは、各人の体重に合わせて一定量の水を飲んでもらい、出現する膨満感の強さと持続時間をスコア化して胃の受け容れる働きを調べます。

ドリンクテストによって患者さんの胃が食事を受け容れるキャパシティーを知ることで、それに合わせた食事指導を行うことができます。

ドリンクテストは、患者さんが日常経験している症状の強さとの関連性が高く、胃排出機能検査よりも有用性の高い検査であると考えています。

機能性ディスペプシアの診断基準には、「ローマ基準」があります。ローマ基準は定期的に見直されており、現在はローマIV基準(2016年)が用いられています。ローマ基準は臨床研究を行う際に、対象患者さんを拾い上げるための基準として推奨されていますが、日常診療において機能性ディスペプシアを診断する基準としては必ずしも適切ではありません。

日本人に適したFDの診断法

参考:FDの診断 日本人に適したFDの診断法は? 中田浩二著より引用、一部改変

なぜならローマ基準では、機能性ディスペプシアの自覚症状(もたれ感、早期飽満感、心窩部痛、心窩部約熱感)が過去3〜6か月以上続いている必要がありますが、実地臨床ではそれよりも短い病悩期間で病院を受診する患者さんが少なくないからです。

私の日常診療では、機能性ディスペプシアの主要症状にこれとしばしば併存する胃食道逆流症GERD」の定型症状(胸焼け、口の中の酸っぱい感じ)を加えた「GERD-TEST」という質問票を使っています。少ない項目数で患者さんの負担になっている症状の種類やその症状が日常生活に及ぼす影響の大きさ、患者さんが実感している治療効果などを調べることができるため有用と考えています。今後は、機能性ディスペプシアの診断や治療をもっと効率的に行うためにも、このような質問票を活用することが重要だと考えます。

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