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高齢社会におけるまちづくりを進める東京都西東京市の取組

高齢社会におけるまちづくりを進める東京都西東京市の取組
丸山 浩一 先生

東京都西東京市  市長、日本ラグビーフットボール協会 メディカル委員会アドバイザー

丸山 浩一 先生

この記事の最終更新は2017年07月12日です。

日本の高齢化は年々進行しており、西東京市においても、市民の平均年齢は上がってきています。高齢社会が進む現代において、医療費の増加は避けて通れない道であり、当然のことです。こうした社会状況のなかで健康なまちをつくるために、地域包括ケアシステムの構築が求められています。西東京市では都内で初となる「フレイル予防事業」やひばりが丘団地における新たな地域づくりへの取組など、独自の政策により、こうした課題の解決と市民のよりよい生活環境の向上への取組を続けています。引き続き、丸山浩一西東京市長に伺いました。

国民皆保険制度は1961年に誕生し、それ以来、日本の医療の接近性は世界一と呼べるほどに発展しました。一方で、医療の統合性にはまだ課題が残ります。大学病院は特定機能病院として、重症度の高い患者さんを優先して治療する役割を果たさなければなりませんが、それ以外の一般的な疾患もみている現状があります。そのため現在、国では第7次医療計画の作成指針の議論が進められています。

2018年度から開始予定の第7次医療計画において、各地域では医療機関の機能分担と連携を進め、シームレスな医療の提供体制を構築することが求められています。そして、各地域によって異なる状況に対応するために、地域資源を活用した地域包括ケアシステムの構築を行っていくことが重要だとされています。

【厚生労働省 第7次医療計画概要】

2 医療体制連携について

(2)急速な高齢化の進展の中で、疾病構造の変化や地域医療の確保といった課題に対応するためには、求められる医療機能を明確にした上で、地域の医療関係者等の協力の下、医療機関及び関係機関が機能を分担及び連携することにより、切れ目なく医療を提供する体制を構築することが必要である。また、医療及び介護を取り巻く地域ごとの多様な状況に対応するため、限りある地域の社会資源を効率的かつ効果的に活用し、地域包括ケアシステムの構築を進めていく上でも、医療機関と関係機関との連携は重要である。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000159901.pdfより

西東京市では、地域包括ケアシステムの構築のために、様々な取組を実施しています。

このような社会情勢の変化や市民のニーズを受け、安心して自宅で療養を続けられる地域の実現に向けた具体的な取組が重要となってきています。

そこで、様々な西東京市の課題を検討し、解決の具体的な方向性などの話し合いをする組織が必要となります。

この話し合いの場として、これまで西東京市医師会が主体となって開催してきた「在宅療養推進協議会」を、2016年4月から市が主体となって運営しています。

この協議会には医療・介護の関係者のほか、市民・行政も参加しています。

また、在宅療養推進協議会で検討する内容について、さらに具体的な課題を詳細に調査・研究するため、6つの部会を設置しています。

各部会では、地域包括ケアシステムの土台となる市民の意識啓発や、多職種連携の課題解決の方策などを検討しています。

西東京市では2016年10月に医療と介護の専門職同士の連携を支援する拠点として、在宅療養連携支援センター「にしのわ」を新たに設けました。

通常の市民からの相談は、これまでも地域包括支援センターまたは市の窓口で応じてきました。一方、入院患者さんが退院後に地域に戻る場合や、施設にいた方がご自宅で療養する場合など、医療機関や介護事業者等の専門職同士の連携が求められるケースにおいては、保谷庁舎に設置した「にしのわ」で医療・介護・福祉の専門職からの相談に応じています。

こうした取組により、地域の多職種の連携をさらに改善していきたいと考えています。

フレイル予防
第1回フレイルチェックの様子

介護保険事業も第7次医療計画に伴い、連携の見直しが求められており、各都道府県が機能分化を推進している段階です。

西東京市は健康寿命延伸への取組として、東京大学高齢社会総合研究機構と協定を締結し、都内で初めてのフレイル予防事業を開始しました。

フレイルとは、元気な状態と要介護状態の中間となる「虚弱」状態をいいます。これまでの研究では、男性の約7割、そして女性の約9割がこのフレイルとなり、だんだん弱りつつ要介護状態になると考えられています。私たちは、フレイルの段階で予防することにより、地域の高齢者の方の健康寿命を伸ばし、ひいては要介護状態に至るまでの期間を延ばすことができると考え、このフレイル予防事業に取り組むこととしました。

フレイル予防事業では、市民が自身のフレイルの状態を確認できるプログラムである「フレイルチェック」を実施します。このフレイルチェックは元気な高齢者から養成されたフレイルサポーターが運営することで、「市民による市民のための」プログラムとなります。このフレイルサポーターの皆様には、地域住民のフレイル予防を通じて地域コミュニティづくりの中心的存在となっていただきたいと考えています。

そして、5月16日には、このプロジェクトを考案した東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授を招いて、第1回目となるフレイルチェックを開催することができました。

市民の皆様にとっては、フレイルチェックを受けていただくことで、ご自身のフレイルの状態に気付くきっかけとなります。さらに、ご自身で気づいたフレイルになる可能性がある分野を改善するために、既存の介護予防事業や地域活動に参加することで、心身ともにご自身の健康を伸ばしていくことができます。

一方でフレイルサポーターになった市民の皆様にとっては、フレイルチェックで参加者と触れ合うことで、自身のやりがいや達成感、健康づくりにつながります。また、フレイルサポーターは、既存の介護予防などの事業に比べ、男性高齢者の参加が多く、退職後など、地域での活動の場を求めている男性に活躍の場を提供できます。

こうした取組によって市民の皆様の健康寿命の延伸と、地域づくりにつなげていきたいと考えています。

ひばりが丘賃貸
UR賃貸住宅「ひばりが丘パークヒルズ」
ひばりが丘の街
ひばりが丘の街並み①
ひばりが丘の街並み 2
ひばりが丘の街並み②

西東京市の人口は2017年4月に20万人を突破しました。5月現在の人口は20万500人で、同年3月と比較すると700人以上が増加しています。

要因の1つとして、3月から5月期におけるひばりが丘地区の住宅開発等による転入者の増加が考えられます。また、市全体の世帯数も9万5500程度に増えてきており、お子様と一緒に移住される方が多い状況となっています。

西東京市は西武新宿線・西武池袋線の2路線が走る地域で、新宿や池袋などの都心へのアクセスが良く、バス路線も整備されていることから、今後も住宅都市としてさらに発展していくことが予測されます。

ひばりが丘団地においては、団地再生が行われたことで人口の増加や多様化が見られ、0歳から100歳まで幅広い年齢の市民が暮らしています。近隣には保育園や特別養護老人ホームなどの施設も充実しており、まちの縮図ともいえるエリアとなっています。

西東京市では、今後、高齢化の進むひばりが丘団地地域において、保健・福祉・医療の連携体制の構築など、新たな地域づくりを進めたいと考えております。ひばりが丘団地における取組を実践することで、高齢化が進展する都市部においてどのようなニーズがあるのかなどの調査研究を行い、今後も市民の皆様が住みなれた地域で、より健康的な生活が送れるよう、まちづくりを進めていきたいと考えます。

※記事内挿入の写真は全て東京都西東京市秘書広報課よりご提供いただいています。

 

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