インタビュー

家族性高コレステロール血症とは 黄色腫などの症状が出る

家族性高コレステロール血症とは 黄色腫などの症状が出る
葛谷 雅文 先生

名古屋鉄道健康保険組合 名鉄病院 病院長

葛谷 雅文 先生

この記事の最終更新は2017年08月08日です。

家族性高コレステロール血症は、コレステロール代謝にかかわる遺伝子の異常によって高コレステロール状態が続く遺伝疾患です。ヘテロ接合体とホモ接合体の2種類があり、ヘテロ接合体の患者さんは100人〜300人に1人の割合でいるとされ珍しい疾患ではありません。一方、ホモ接合体の患者さんでは症状が重く、発症も100万人に1人とされ国の難病に指定されています。家族性高コレステロール血症とは何か、原因や症状について名古屋大学大学院医学系研究科 地域在宅医療学・老年科学分野 教授の葛谷 雅文先生にお聞きしました。

家族性高コレステロール血症(FH)とは、遺伝的にコレステロールの代謝に異常が起きる疾患です。なかでも、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が上昇し、治療を行わなければ早期から動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの冠動脈疾患を発症しやすいといわれています。

家族性高コレステロール血症は遺伝疾患で、2種類にわけられます。両親のどちらか一方が家族性高コレステロール血症である場合で遺伝し、発症した場合をヘテロ接合体の家族性高コレステロール血症、両親の双方が家族性高コレステロール血症で発症するとホモ接合体の家族性高コレステロール血症と呼ばれます。

しかしながら両親が家族性高コレステロール血症だからといって、必ずしもこの病気を発症するわけではありません。ヒトは2対で1つとなる遺伝子を持っています。そのため、もし両親ともヘテロ接合体の患者さんの間に子どもが生まれても、その子どもがヘテロ接合体の家族性高コレステロール血症を発症する確率は2分の1、ホモ接合体の家族性高コレステロール血症を発症する確率は4分の1です。すると残りの4分の1は正常な状態で生まれてきます。

また両親のどちらかがヘテロ接合体の患者さんの場合は、ホモ接合体の家族性高コレステロール血症の子どもが生まれる可能性はゼロですが、ヘテロ接合体の子どもが生まれる可能性は2分の1、正常な状態で生まれる可能性も2分の1です。

もちろん両親の一方でも家族性高コレステロール血症の患者さんがいれば、その子どもや兄弟もすぐに検査をする必要はあります。しかしすべてにおいてこの病気を発症するわけではないということを理解しておいてください。

ヘテロ接合体の家族性高コレステロール血症の有病率は100人から300人に1人の割合です。そのためヘテロ接合体の患者さんは比較的多くいます。ところが両親ともに家族性高コレステロール血症で遺伝したホモ接合体の患者さんでは、100万人に1人程度と一気に少なくなります。

病状はホモ接合体の家族性高コレステロール血症のほうが重く、国の難病に指定されています。たとえばホモ接合体の家族性高コレステロール血症の患者さんは、出生時からコレステロール値が600以上と圧倒的に高い場合もあります。この場合、幼少時から動脈硬化や冠動脈疾患のリスクが伴います。一方、ヘテロ接合体の家族性高コレステロール血症の患者さんはコレステロール値が通常よりもやや高めという程度で、通常の高コレステロール血症と誤診されることがあります。

LDL受容体

家族性高コレステロール血症は遺伝疾患であることから、コレステロール代謝にかかわる遺伝子の何かしらの異常によって引き起こされます。

LDLコレステロールを代謝するLDL受容体の異常が最も多い原因です。通常、LDLコレステロールの粒子には、タンパク質の一種であるアポリポプロテインB-100が含まれ、LDL

受容体はアポリポプロテインB-100を認識することでLDLコレステロールと結合し、肝臓に取り込まれて代謝されます。しかしLDL受容体に異常が起きているとLDLコレステロールを正しく受容できず、結合されないLDLコレステロールは血中に長くとどまることとなります。そのため、コレステロール値が上昇するのです。

ほかにはアポリポプロテインB-100などタンパク質のほうの異常やその他のコレステロール代謝にかかわる遺伝子異常が数多く報告されています。

つまり、家族性高コレステロール血症はLDLコレステロールの代謝過程のどこかに異常がおきることで発症する疾患といえるでしょう。

家族性高コレステロール血症は、以下のようにさまざまな症状を呈します。

黄色く扁平の隆起が皮膚や腱に生じます。家族性高コレステロール血症に特異的な症状のひとつです。高コレステロールにより皮膚に浸出した脂質を組織球(異物や老廃細胞などを捕食する細胞のこと)が貪食しその泡沫細胞が残ることで起こります。

黄色腫はひじやひざ、手の甲の関節など関節部に生じやすいです。特に皮膚黄色腫は目につきやすい部位に生じるため患者さんが気づくことができます。黄色腫は、ホモ接合体の患者さんに高頻度でみられます。

腱にも黄色腫が生じることがあります。特にアキレス腱に黄色腫が起きやすく、黄色腫が生じるとアキレス腱が太くなります。

黄色腫は触っても通常は痛みやかゆみはありません。

コレステロール値の上昇が認められます。ヘテロ接合体の患者さんでは平均320〜350mg/dL ホモ接合体の患者さんでは平均600〜1200mg/dLです。

コレステロール値の異常は診断において重要な指標です。しかし、なかには単なる高コレステロール血症と診断されて治療を受け、それほどコレステロール値の上昇がみられないケースもあります。成人では未治療の場合はLDLコレステロールが180mg/dL以上の場合はヘテロ接合体を疑う必要があります。特に250mg/dL以上の場合は強く疑う必要があります。また、小児の場合は未治療だとLDLコレステロールが140mg/dl(総コレステロール値が220mg/dL)以上はFHヘテロ接合体を疑う必要があります。

時に、黒目の周囲に白っぽい輪が生じることがあります。角膜輪は家族性高コレステロール血症でなくても高齢者であれば生じることがありますが、50歳未満で角膜輪が出現すると、家族性高コレステロール血症が疑われます。

家族性高コレステロール血症を治療せずに放置しておくと、高コレステロールにより動脈硬化が進行し、心筋梗塞狭心症などの冠動脈疾患を起こします。ここまで進行してしまうと時に命にかかわる可能性があります。

そのため、家族性高コレステロール血症では動脈硬化を予防し冠動脈疾患に移行しないよう、コレステロール値をコントロールする治療を実施します。

家族

家族性高コレステロール血症は遺伝疾患です。ですから、二親等以内(祖父母・父母・兄弟・子ども)が家族性高コレステロール血症とすでに診断されていたり、若くから冠動脈疾患を発症していたりする場合は注意を要します。家族が家族性高コレステロール血症であるからといって、絶対に発症するわけではありませんが、比較的高い確率で発症する可能性があります。おそらく家族が本疾患の診断を受けた場合、主治医からその他の家族にも検査を推奨されるかと思います。まずは検査を受けて高コレステロール血症があるのかどうかを確認しましょう。

家族性高コレステロール血症を専門として診療している施設の一覧は、下記に掲載されていますので参考にしてください。

日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症の紹介可能な施設等一覧」

家族性高コレステロール血症は、早期発見し、適切に治療を受ければ十分に日常生活を送ることができます。記事2『家族性高コレステロール血症の検査と治療―食事療法や薬物療法』では、家族性高コレステロール血症の検査と治療についてお伝えします。

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