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原発性免疫不全症の主な治療法・日常生活の注意点
原発性免疫不全症とは、先天的に免疫が機能しない疾患であり、その種類は現状では約300にまで上ります。現れる症状は機能しない免疫担当細胞によって異なる点が特徴です。では、原発性免疫不全症の治療には...
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原発性免疫不全症の主な治療法・日常生活の注意点

公開日 2017 年 09 月 13 日 | 更新日 2017 年 09 月 27 日

原発性免疫不全症の主な治療法・日常生活の注意点
小野寺 雅史 先生

国立成育医療研究センター病院 生体防御系内科部 免疫科 医長

小野寺 雅史 先生

原発性免疫不全症とは、先天的に免疫が機能しない疾患であり、その種類は現状では約300にまで上ります。現れる症状は機能しない免疫担当細胞によって異なる点が特徴です。

では、原発性免疫不全症の治療にはどのような種類があるのでしょうか。また、免疫が機能しないために感染に弱くなるこの疾患の患者さんは、どのような点に注意し生活する必要があるのでしょうか。

今回は国立研究開発法人国立成育医療研究センターの小野寺 雅史先生に、原発性免疫不全症の主な治療法から生活上の注意点までお話しいただきました。

*原発性免疫不全症の治療は、疾患の種類や病状によって異なります。ここでは、代表的な治療法についてお話しします。

原発性免疫不全症の原因や症状については記事1『生まれつき免疫が機能しない難病・原発性免疫不全症の原因や症状とは?』をご覧ください。

原発性免疫不全症の主な治療1:抗菌剤、抗真菌剤の予防投与

日常の抗菌剤、抗真菌剤の予防投与

原発性免疫不全症では免疫が正常に機能していないため、日常生活において感染症を予防することが何よりも大切なことであり、このため、感染予防のために抗菌剤や抗真菌剤を毎日内服します。原発性免疫不全症の患者さんは、比較的症状が落ち着いていれば通常の生活を送ることが可能ですが、少しのことでも感染症が悪化することがあり、常に、予防投薬という形で薬を内服するケースが多いです。ただ、これら予防投薬を行っていても、感染症は悪化する場合があり、この場合、入院して点滴による抗菌剤や抗真菌剤、ウイルス感染症の場合は抗ウイルス剤の投与を行います。それでも症状が落ち着かない場合には造血幹細胞の移植に踏み切ることがあります。

原発性免疫不全症の主な治療2:ガンマグロブリンの補充

B細胞が機能しない場合には、ガンマグロブリン補充療法を適応

記事1でお話ししたように、B細胞とは抗体(異物が体内に侵入した際に、それと結合し除去する働きを持つたんぱく質のこと)をつくる細胞です。このため、B細胞が機能しない場合、抗体の欠乏が起こります。

B細胞が作り出す抗体とは、血液中に含まれるガンマグロブリンと呼ばれるタンパク質であるため、ガンマグロブリンを補充する治療が第一選択となります。

点滴

これまでは月に一回程度、ガンマグロビリンを静脈から点滴注射していましたが、最近は、皮膚の下に針を刺し(皮下注射)、ガンマグロブリンを補充する方法があります。この方法は週に一回、自宅で行うことが可能で、患者さん自身が自分で皮下に針を刺し、機械でガンマグロブリンを20分で補充することになります。

このように、B細胞の機能異常であれば、造血幹細胞移植が適応されることは少なく、ガンマグロブリンの補充が治療の第一選択となります。

原発性免疫不全症の主な治療3:造血幹細胞移植

根治的な治療になる造血幹細胞移植

原発性免疫不全症の根治療法は造血幹細胞移植です。これは、第3者の造血幹細胞を患者さんに移植する治療法です。造血幹細胞は骨髄に存在し、赤血球や白血球、血小板などの全ての血液細胞を作り出す能力を持っています。

正常に機能する第3者の造血幹細胞を移植することで、患者さんの体内で免疫担当細胞の機能が正常化し、疾患が完全に治ります。

造血幹細胞移植では、ドナーとして兄弟などの血縁関係から移植を受ける場合と、家族以外の非血縁者から移植を受ける場合があります。このうち、白球球の型が似ているという点から、血縁者から造血幹細胞移植を受ける方が成功率は高いとされています。

原発性免疫不全症の主な治療4:造血幹細胞遺伝子治療

厄介な免疫反応を起こさない造血幹細胞遺伝子治療

通常、免疫不全の患者さんでは移植時の拒絶は起こりにくいとされています。これは、免疫が正常に機能していないため、移植免疫に関する拒絶反応が起こらないためです。しかし、逆に、造血幹細胞移植ではドナーの正常免疫細胞が患者さんの体内に入り、そこでこれら細胞が患者さん(の臓器)を異物と見なして攻撃し、重度の下痢や肝機能障害、皮膚に強い発疹がでる場合があります。これを移植片対宿主病(Graft-versus-host Disease:GVHD)といいます。

GVHDの症状
GVHDの皮疹(画像ご提供:小野寺 雅史先生)

これに対し、自分の造血幹細胞の正しい遺伝子を入れ、患者さんに戻す方法が開発され、これを造血幹細胞遺伝子治療とよんでいます。使用する細胞が自分の細胞であるためGVHDは起こらず、また、正しい遺伝子を入れるため、患者さんの免疫細胞は正常に回復します。ただ、この方法はいまだ開発されて日が浅く、また、正しい遺伝子を患者細胞に入れるにはウイルスを使用するため、その安全性に関しては今後も注意深い観察が必要となっています。

日常生活の注意点

感染を予防するために無理をしないことが大切

原発性免疫不全症の患者さんは、日常生活において感染症を予防することが何よりも大切で、比較的症状が落ち着いていれば通常の生活を送ることが可能です。ただ、何かの際に感染症が悪化することも多く、日頃からの注意が必要でしょう。疲れないようにすることや無理をしないことも大切です。

免疫不全症・患者家族の会「NPO法人PIDつばさの会」で情報交換を

また、患者さんにとって、家族のサポートは非常に重要と思われます。それは、患者さんは成人になっても感染症に注意しなければならず、このため仕事に就くことができない方も多くいらっしゃるからです。そのため、家族に負担がかかることを懸念し不安を感じる方も少なくありません。また、遺伝性の疾患であるため、成人期に達すると結婚や出産の問題もでてきます。

親子

このように不安を抱える患者さんの情報交換の場として、免疫不全症には、「NPO法人PIDつばさの会」という患者家族の会があります。

患者さんのみならずサポートするご家族の方が日常生活における注意点や対処法、また、実際に造血幹細胞移植を受けた方のお話や最新の治療法の情報を聞くことができ、情報交換の場としてよい機会になると思われます。このような会に参加され、お互いに支え合う関係を築き、その上で不安を軽減する場として利用できれば良いのではないかと思っています。

原発性免疫不全症の兆候があるようなら受診を

お話ししたような免疫機能について、話を聞くだけでは理解できないこともあると思います。

小野寺先生

私は以下のサイトをお勧めしています。たとえば、お子さんがチェックリストに当てはまるようなら病院を受診するなど、ぜひ参考にしてもらえればと思っています。

原発性免疫不全症を疑う10の兆候」へ

原発性免疫不全症の専門的施設との連携も

免疫不全症は一般的な医療機関で診断することが難しく、治療開始が遅れることが多い疾患です。このため、日本ではPIDJ(Primary immunodeficiency Database in Japan)が中心となり、主治医が通常の検査結果から免疫不全症を疑い、容易に原発性免疫不全症の専門医に連絡が取れる体制を構築しており、現在、北海道から九州、沖縄までどの地域においても一般病院と免疫不全症専門医がしっかりとした連携の下に免疫不全症の診断・治療を行っています。お話ししたようなチェックリストに該当するものがある場合や不安を感じるようなことがあれば、ぜひ積極的に病院を受診してほしいと思っています。

 

原発性免疫不全症(小野寺 雅史先生)の連載記事

1986年より小児医師としてキャリアをはじめる。1994年には米国衛生研究所に留学。2009年より国立成育医療研究センター成育遺伝研究部部長、2010年より国立成育医療研究センター免疫科医療を併任。現在、免疫不全症に対する治療、特に造血幹細胞遺伝子治療の第一人者として、臨床・研究ともに日本をリードしている。現在、日本遺伝子細胞治療学会の理事を務めている。

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