記事1『鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)の症状や原因とは?』では、鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)の原因や症状などについてお伝えしました。鉄は体に必須の物質でありながら、その量が多いとあらゆる臓器を障害してしまいます。本記事では、鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)が疑われた際に行われる検査や、鉄キレート療法、瀉血(しゃけつ)などの治療法について、引き続き国際医療福祉大学病院 消化器センター長・予防医学センター長 国際医療福祉大学医学部教授の高後 裕先生にお話をうかがいました。
家族歴や輸血が必要な既往歴などから鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)が疑われる場合は、各種検査を実施します。
はじめに行われる検査が血液検査です。血液検査により、血清フェリチン値とトランスフェリン飽和度を測定・算出します。
フェリチンとは鉄と結合した蛋白、トランスフェリンは鉄と結合できる性質を持つ(まだ鉄と結合していない)蛋白です。フェリチンは主に肝臓内に存在する鉄貯蔵タンパク質で、体内の鉄量が増加すると、フェリチン合成が高まります。その一部は、血中に遊離して、血清フェリチンとなります。一方、トランスフェリンは、血管内で鉄を輸送する糖たんぱく質で、貯蔵鉄プールや消化管から吸収された鉄を、骨髄の赤血球産生のための赤芽球(赤血球の前駆細胞)に鉄イオンを運搬する役目を持っています。トランスフェリン飽和度はトランスフェリンにどの程度鉄が結合しているかを表す指標で、通常30%前後が鉄と結合しています。鉄過剰になるとこのトランスフェリン飽和度が上昇し、血清フェリチンと並んで、鉄過剰状態の判断の指標になります。
血清フェリチン値、トランスフェリン飽和度が上昇していると、鉄過剰状態が疑われます。特に炎症反応がないにもかかわらず血清フェリチン値が500ng/mL以上と高値の場合は注意が必要です。トランスフェリン飽和度が40%以上になると、鉄過剰状態が疑われます。トランスフェリン飽和度が上昇すると、血中にはトランスフェリンに結合していない非トランスフェリン結合鉄NTBIが出現し、この鉄は不安定で細胞障害を引き起こすとされています。
CT検査やMRI検査でも、臓器に鉄がたまっているかどうかを画像でみることが可能です。ただしCT検査では鉄がたまっていることがわかっても、どれくらいたまっているのかまでは測定できません。
MRI検査では、特殊なソフトウェアを用いて体内の鉄量を図るものもありますが、鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)の検査では広く一般的に行われているものではないでしょう。
二次性ヘモクロマトーシスのCT画像(高後先生 提供)
鉄過剰症の家族歴があることが明らかである場合には、保険適用外となりますが外部の研究機関に遺伝子検査を依頼することが可能です。しかしながら、日本人では欧米と比べて遺伝性ヘモクロマトーシスの発症率は低いため、遺伝子検査の実施例は極めて少ないでしょう。
瀉血とは、体内の血液を体外に排出することで体内鉄を減らすことを目的とした治療法です。200ccの血液のなかには約100mgの鉄が含まれているため、血液ごと鉄を排出すればより多く体内の鉄を減少させることができます。
輸血依存でない患者さん、貧血のない慢性C型肝炎の患者さんなどに適応されます。
実際には採血と同様に注射で血液を体外に出します。血液バッグを使用する方法では、1回あたり200〜400mlの瀉血を行います。
主に輸血依存による鉄過剰症、かつ1年以上の生存が見込まれる患者さんに用いられる治療法です。注射または経口薬によって鉄キレート剤を服用し、体内の鉄を減少させます。そして血清フェリチン値を500〜1000ng/mLの間で維持させることが目標です。
キレート剤が鉄と強固に結合して鉄のはたらきを封じ体内に排出させることで、体内の鉄量を減少させます。
我が国では、注射薬のデフェロキサミンメシル酸塩と経口薬のデフェラシロクスが用いられます。現在では薬の効果の持続性の高さや治療の受けやすさなどから、経口薬の使用が第一選択となっています。経口薬では、1日1回の内服で効果が期待できます。
骨髄異形成症候群の治療として輸血依存となり鉄過剰症を発症した患者さんでは、鉄キレート療法を十分に行うと生存期間が延びたという報告があります。
鉄が多く含まれる肉類やレバー、貝類、大豆などの食品を避けたり、調理法を工夫したりすることで食事から摂取する鉄の量を少なくします。遺伝性の鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)や肝炎によって鉄の吸収が亢進している場合に有効です。
鉄キレート剤を用いた治療法では、腎機能低下の副作用があります。腎機能が低下することにより、むくみが生じます。そのため、もともと腎機能がよくない方には腎不全のリスクがあることから使用することができません。また、消化機能が低下して下痢や吐き気が出てくることがあります。
瀉血では、体外に血液を出すために一時的に貧血となることがあります。
日本では、鉄過剰症のほとんどは輸血依存によって起きています。そのため、継続的に輸血を受けている患者さんは、常に鉄過剰症のリスクがあることを意識しておく必要があります。そして鉄過剰症を防ぐために、予防的に鉄キレート剤を用いて体内に過剰に鉄がたまらないようにすることも大切です。
日本では遺伝性の鉄過剰症(遺伝性ヘモクロマトーシス)はめずらしいですが、もし鉄過剰症の家族歴がある方がいれば遺伝性の鉄過剰症である可能性があります。もし鉄過剰症の家族歴があり、原因不明の疲れやすさや、肝機能の障害が認められる場合は検査を受けることをおすすめします。
国際医療福祉大学病院 消化器センター長/予防医学センター長、国際医療福祉大学 医学部教授
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完治するものなのでしょうか
実の妹(A Rh-)なのですが、陸上長距離選手で最近タイムの伸び悩みを訴えていました。それ以外の自覚症状はありません。輸血歴はなく、1ヶ月程前の献血でHb9.3とのことで受診を勧められ、検査(血液検査、CT、MRI)したところ、肝臓のヘモクロマトーシスと診断されました。 ネットで調べたところ難治性疾患とあり、不安です。 治療をすれば完治、または日常生活に支障をきたさず生活することは可能でしょうか。
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去年8月に、関節リウマチの診断を受けました。現在は免疫抑制剤で治療中。 最初に受けた血液検査では血清鉄は58 今回脳ドック検診をほかの病院で受けた時、血清鉄が、200を超えていたので気になりました。赤血球や、ヘモグロビン、Tビリルビンは正常です。
フェリチン値の急激な上昇
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