インタビュー

正しいお酒の飲み方とアルコール障害の予防

正しいお酒の飲み方とアルコール障害の予防
高後 裕 先生

国際医療福祉大学病院 消化器センター長/予防医学センター長、国際医療福祉大学 医学部教授

高後 裕 先生

この記事の最終更新は2016年04月24日です。

古くからあるアルコール問題を解決するには、若い世代からアルコールに関する正しい知識を持ち、適正量を守ることが大切です。国際医療福祉大学病院の高後裕先生にお話をうかがいます。

お酒を飲む時には多くの方が脂っこい食べ物を一緒に食べますが、その時に生野菜を一緒に食べるだけでも酸化ストレスをやわらげることができます。キャベツでもいいですし、野菜スティックなどでもかまいません。とにかく、脂肪ではなくアルコール代謝を高めるような食べ物を一緒に摂ることが重要です。そのほかアルコール代謝を高めるものとして果糖(フルクトースエフェクト)が含まれるフルーツや、昔から食べられているナッツ類や乾き物などのおつまみもいいでしょう。

※酸化ストレス・・・体内の活性酸素と抗酸化作用のバランスが崩れ、活性酸素の働きが優位になってしまう状態。

毎日飲む習慣は、今では仕事を持つような世代の若い女性にもよくみられます。しかし、やはり週に2日間は休肝日を設けて肝臓を休ませる時間をつくるのが正しい飲み方といえます。

お酒を飲む方だけに限らずすべての方にいえることですが、ふだんから塩分の摂り過ぎに注意したり、運動の習慣をつけておくことも大切です。酸化ストレスをできるだけ体内にとどめないようにしましょう。お酒を飲むにしても通常一日中飲んでいることはありませんので、たとえば夜お酒を飲むなら日中に少し運動しておくなど、よい生活習慣を心がけるようにしましょう。

日本では、お酒が睡眠薬代わりに使われることも少なくありません。しかしこのような習慣は欧米にはみられない傾向で、アジア系の方の特徴的な習慣といわれています。特にお酒が強い場合には飲んでも眠くならないため、本来「睡眠薬」として使えるはずがないのです。ですから、欧米では教科書にも「お酒を睡眠薬代わりに使ってはいけない」というようなはっきりした記載があり、これは実は間違った習慣です。

生涯で摂取するアルコール量が適正量を超えないために、そもそも飲酒を始める年齢をしっかり守る必要があります。記事4『飲酒の習慣に現れる地域性とアルコールの影響』で述べたように、発がんリスクは20~30年程度で高まります。20歳よりも早い時期から飲酒を始めてしまえば、2年であれ3年であれ、それだけがんを早く発症するリスクがあるのです。

たとえば食道がん胃がんは、明治時代の古い内科の教科書には当時高齢とされていた40歳からすでに発症リスクがあったと書かれています。

さらにその原因として「酒精(しゅせい)」という記載があり、お酒が原因であることが明記されています。また、肝硬変の原因に関しても糖尿病などと並び「酒精」と明記されています。

当時は、現代で大問題になっている輸血や針刺しによるB型、C型肝炎ウイルスよる肝炎は存在しませんでした。B型肝炎は母子感染のみですし、輸血というシステムもないためC型肝炎も存在せず、肝炎が社会的にそれほど問題になることはなかったのです。現代では肝炎の制御が可能となっており、今後は明治時代に回帰するかのように、アルコール問題がより重いものとなるといわれています。つまり、過食・肥満・糖尿病とともに、お酒はもっとも重要な医療に関係する社会問題であるということです。

※酒精・・・アルコール成分のこと。

受診について相談する
  • 国際医療福祉大学病院 消化器センター長/予防医学センター長、国際医療福祉大学 医学部教授

    高後 裕 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    関連の医療相談が10件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「アルコール依存症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。