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専門職種の集合組織「病院」を管理運営していくために-日本医療経営学会の役割

専門職種の集合組織「病院」を管理運営していくために-日本医療経営学会の役割
大道 久 先生

日本大学 名誉教授、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)横浜中央病院 名誉院長

大道 久 先生

日本では、国民皆保険制度によりすべての国民が少ない自己負担額で医療を受けることができます。しかし、わが国特有の強固な国民皆保険制度には、医療経済の枠を狭め、病院の事業展開を困難にしているという側面もあります。また、医師や看護師、薬剤師や検査技師など、専門職種の集合体である病院組織の運営は、一般企業の経営とは異なる難しさがあり、ある種の工夫、すなわち学術論理が必要になります。持続可能な医療経営を可能にするために、「現場ベース」で議論を展開している一般社団法人日本医療経営学会・理事長の大道久先生に、学会の基本姿勢とお取り組みについてお話しいただきました。

欧米には、医療を含む健康・福祉の社会サービスのマネジメントについて体系立て、議論する学問領域があります。この領域は英語では“Health Services Management”と呼称され、広く一般的に用いられています。日本にも、医療や健康増進などに関する社会サービスを話し合う学術・学問領域が重層的に存在し、さまざまな活動をしています。そのひとつが、今回ご紹介する日本医療経営学会です。まずは、日本医療経営学会が創設された歴史的な背景についてお話ししましょう。

“Health Services Management”を考えるための学術組織は、日本医療経営学会の誕生よりもはるか以前から存在していました。日本で初めて創設された本領域の学会は、現在の日本医療・病院管理学会です。病院とは現在でこそ一般的な組織ですが、組織論という側面からみると非常に特殊な組織といえます。病気の患者さんを治療する「医療」は、1名の医師と患者がいれば成り立ちます。しかし、医療を提供する場として生まれた病院は、複数の医師、看護師、コメディカルスタッフなど、多くの専門職種により構成される集合体です。

組織には一般の企業や官僚機構、あるいは軍隊組織など、さまざまな特性がありますが、そのなかで専門職種の集合体である病院の統治管理(マネジメント)には独特の学術論理が必要になるため、当初から特別な議論が必要な組織として位置付けられてきました。病院管理学(Hospital Administration)とは、このような歴史的経緯から生まれた学問であり、今日でも重要な分野として捉えられています。

かつて私は日本医療・病院管理学会の前身である病院管理学会に理事長として携わっていた時期がありますが、当時この学会はやや高踏的な学術議論を行なう場として認識されていました。現在でも日本医学会の会員団体として、この領域の代表的な学術団体ですが、現場の病院管理者や医療従事者からみると、身近ではないという印象は拭えません。

実際に多くの人が働く病院管理を考えるためには、こうした学会のほかに、より身近で地に足のついた“Health Services Management”について議論を行える場も必要です。こういった現場からの声により、日本にも医療経営学会を作ろうとする動きが起こりました。この波のなかで、日本クリニカルパス学会や日本医療マネジメント学会、さらには日本医療経済学会など、“Health Services Management”の学会が複数生まれました。日本医療経営学会は、心臓外科医として国内外で活躍されていた廣瀬輝夫先生が中心となって設立され、私も携わることとなりましたが、上述のような潮流のなかで生まれた学会のひとつです。

HEALTH

学会名に含まれる「医療」は、英語でいうところの“Health”、すなわち医療、福祉、保健を含む、私たちが健康に生きていくための全ての分野を包括するものという意味で使用しています。

日本医療経済学会は、その設立趣旨を以下のように掲げています。これを踏まえて、医療経営の現実を見極め、病院の経営者・管理者、及び現場の実務者が意見交換をし、議論をする場であることを目指しています。

【日本医療経済学会 設立趣旨】

医療経営学は、医療倫理学・人間学、医療経済学、及び医学を始めとする医療諸科学を基本要素とし、それらの均衡のとれた学術体系を目指すものです。

わが国の医療経営は現在大きな転換期を迎えていますが、日本の医療の歴史と文化を踏まえた医療経営学の確立を目指し、学術研究・発表・意見交換の場となることを目的に日本医療経営学会は設立されました。

学会WEBサイトより引用

実際に重要なことは、日本特有の制度である強固な国民皆保険制度が布かれているなかで、どう医療経営を考えるかという視点ではないでしょうか。すべての組織の経営には、当然ながら経済がついて周ります。そのなかで、医療経営に関しては診療報酬制度という限られた枠組みのなかで展開していく必要があるという特殊性があります。

このような医療経営の最大の特徴をコアに置き、理論や体系といった学者的議論にとどまるのではなく、生身の経営者同士が経験した実例をもとに問題を議論する場として、本会を位置付けたいと考えています。

日本医療経営学会では、毎年11月に500人規模の学術総会・集会を開催しています。今年2017年の第16回日本医療経営学会学術集会・総会は、東京都千代田区のソラシティカンファレンスセンターにて11月11日(土)に行われます。

http://world-meeting.co.jp/jaha2017/(外部サイトへ移動します)

また、6月には半日ほどの医療経営セミナーを開催しており、年に数回学会誌を発行しています。

このほか、非常にユニークな活動として、以下4つの個別研究部会を持っていることが挙げられます。

  • 診療報酬・介護報酬研究部会
  • ビッグデータ・AI医療への応用研究部会
  • 医療ファイナンス研究部会
  • 医療研究ビジネス部会

これらの研究部会には、非会員でも参加することができますので、以下をお読みいただき、ご興味を持たれた方は、ぜひ本学会までお問い合わせください。

http://www.world-meeting.co.jp/jaha/(外部サイトへ移動します)

この研究部会は、平成30年度の医療介護同時改定に向けて今最もアクティブに動いている研究部会です。

2017年9月20日には、国際医療福祉大学大学院において、40回目となる研究部会が開かれました。

第2回の研究部会が開催されたばかりの、極めて新しい活動です。題目の通り、ビッグデータやAIを医療に応用するにはどういった取り組みが必要かを研究しており、非常に多くの会員・非会員が集まる注目の研究部会といえます。

医療ファイナンス研究部会では、医療経営のうち「病院の資金調達」について考えていく組織です。いわゆる同族経営が一般的であった過去には、病院が銀行からの出資を得ることに関して、大きな困難はありませんでした。しかし、時代が変わった現在においては、新たな工夫や戦略が不可欠です。医療ファイナンス研究部会では、時代に応じた新しい仕掛けを検討、議論しています。

4つ目の医療研究ビジネス部会は大阪を基盤とする研究部会です。たとえば、個別の医療施設のリニューアル(建て替え)など、医療施設の経営に伴う個別具体的な課題を現場視点で報告し、話し合っています。日本医療経営学会の研究部会のうち、大阪を拠点とする唯一の部会という点が特徴的です。

このほか、現在は薬価制度を論じる医薬マネジメント研究部会(休会中)を、早期に再開できるよう動いています。

また、これらの研究部会内容の一部はビデオ撮影し、会員の方がダウンロードして各自のデバイスからみられるよう公開するといった工夫も行っています。

大道久先生

日本医療経営学会の会員は医師だけでなく特に民間病院の経営者が多くなっています。前の項目でも触れた今秋(2017年11月11日)の学術集会・総会では、二代目・三代目の若手経営者の先生方が「惑星直列で日本の医療経営はどうなる?」というテーマでシンポジウムを組みます。中堅や若手と呼ばれる経営者や医師が一堂に会し、活気あふれる自由闊達な学術集会・総会となるものと期待しています。

 

  • 日本大学 名誉教授、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)横浜中央病院 名誉院長

    大道 久 先生

    1970年に東京大学医学部を卒業し、その後日本大学医学部医療管理学教室教授、社会保険横浜中央病院病院長などを歴任する。現在は、日本大学名誉教授、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)横浜中央病院名誉院長、一般社団法人日本医療経営学会理事長として、日本の病院経営改革や医師の働き方改革などに豊富な経験と知識をもって取り組み続けている。