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第13回 都市防災と集団災害医療フォーラム 『防災対策、自治体が抱える課題と問題点を考える』

第13回 都市防災と集団災害医療フォーラム 『防災対策、自治体が抱える課題と問題点を考える』
有賀 徹 先生

独立行政法人労働者健康安全機構 理事長 、学校法人昭和大学 名誉教授

有賀 徹 先生

この記事の最終更新は2018年01月05日です。

2017年12月11日(月)大和ハウス東京本社ビル2階ホールにて、第13回都市防災と集団災害医療フォーラム「防災対策、自治体が抱える課題と問題点を考える」が開催されました。最初は今年(2017年)に、後藤新平賞を受賞された日本医科大学名誉教授の山本保博先生による受賞記念講演が行われました。

その後独立行政法人労働者健康安全機構理事長の有賀徹先生、独立行政法人国立病院機構災害医療センター臨床研究部長の小井土雄一先生とお二人の講演があり、最後は講演された3名の先生を含め、港区 教育長/元危機管理室長の青木康平氏、世田谷区 危機管理室長の澤谷昇氏、千代田区 政策経営部災害対策・危機管理課長の山崎尚登氏、大和ハウス工業株式会社取締役専務執行役員の堀福次郎氏がパネリスト、戸田中央医科グループ医療法人横浜柏提会 災害対策特別顧問の野田英一氏と三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社シニアアドバイザーの大槻啓子氏が座長のパネルディスカッションが行われ、活発な意見交換が繰り広げられました。

プログラム

本記事では、独立行政法人労働者健康安全機構理事長の有賀徹先生が行われた「地域包括ケアと自治体の役割について」の講演をレポートします。

地域包括ケア
ご講演中の有賀先生

今回「地域包括ケアシステムと自治体の役割」の講演で有賀先生がお話しされた要点は、

  • 地域包括ケア「システム」
  • 「看護」の重要性“key person”
  • システムの要素/platform“触媒”

の3点です。

地域包括ケア
日本の人口の年齢構成

日本の社会の年齢構成は上のスライドのような構成となっています。青い部分が生産年齢人口、赤い部分が高齢人口です。2015年の時点で高齢人口は21%となっています。私たちはこのような人口減少社会のなかで、地域包括ケアシステムについて考えていかなくてはなりません。

厚生労働省が発表している地域包括ケアシステムの図
厚生労働省が発表している地域包括ケアシステムの図

上のスライドは厚生労働省が発表している、地域包括ケアシステムの図です。おおまかに地域包括ケアシステムとはこのような姿です。「ほぼ在宅、ときどき入院」が軸となり、病院や介護施設、地域包括支援センターなどさまざまな要素があります。この要素をばらばらに考えるのではなく、この図の全体を1つの「システム」として考えていくことが必要です。

地域包括ケアシステムにおける慢性期医療では、リハビリテーションや介護などさまざまな多業種との連携が必要となります。いわゆる水平連携が大切になってくるわけです。

そして慢性期医療から急性期医療へ連携することは、垂直連携といえます。救急車で患者さんを二次救急、三次救急病院に運ぶことは垂直連携となります。地域包括ケアシステムではこのように水平連携と垂直連携で、慢性期医療と急性期医療の連携システムを整理することができます。

看護師の身分法は、保健師助産師看護師法というものに当てはまります。そのなかには、診療の補助と療養上の世話という役割があります。療養上の世話とは、医師の指示ではなく看護師の判断によって患者さんのお世話をするというものです。

看護師の役割である患者さんの療養上の世話は、ただ患者さんの身の回りのお世話をするだけではありません。下記はある若い看護師によって書かれたものです。

「患児の両親の気持ちを整理し、寄り添った看護ができていたか、そしてその決断を下すまで両親がどのような思いですごしてきたか、といったケアリングまでは達することができなかった。」

と、あります。そして、

「大学の卒業論文では、医療職の「協働」をテーマにしました。そこでは「看護師の仕事は感情労働であるためそれに伴うストレスも多い。しかし、お互いの経験や気持ちを理解しチームとして働くことがよい看護につながり自らにとってもよい経験となる」

と続きます。

このように看護師は患者さんやその家族へのケアリングも仕事であり、日々勉強をしています。そのためチーム医療の場でも、医師や薬剤師などの心を読みケアリングができるといえます。地域包括ケアシステムのなかで、看護師はよい医療チームをつくるためのキーパーソンといえるのです。

地域社会には、訪問介護や地域ボランティア、自治体などの地域包括ケアシステムの要素が存在しており、そのなかでも、かかりつけ医とケアマネジャー、地域包括支援センターは三種の神器ともいわれる重要な要素です。そして、このような要素が今後円滑に連携していくためには、行政が地域包括ケアシステムのプラットフォーム…つまり、「触媒」の役目を果たす必要があります。

親戚などの手伝いがまったくない、一人暮らしの高齢者、または老夫婦で暮らしている方が周死期に必要となる要素は、サービス付き高齢者住宅やケアマネージャー、総合病院、警察、市区町村役場戸籍係など、多種多様です。そういったさまざまな要素と周死期にある方とをつなぐ役割を、本人のご家族の代わりに行う「契約家族」という取り組みが行われています。「契約家族」は、NPO法人 りすシステムが提供しているものです。

地域包括ケア

地域包括ケアシステムにはさまざまな要素が存在します。それぞれを直接的に経営するという考えもありますが、今後、要素は今以上に増えてくることが予想されます。そのため、行政がやらなくてはいけないことは沢山あり、柔軟な「触媒」としての役割を果たしながら、地域包括ケアシステムを実りあるものにしていかなければなりません。   

地域包括ケア
ご講演中の有賀先生

今回レポートで取り上げた3つの要点以外にも、高齢者の非正規雇用の割合が増加していることや、東京都では18人に1人の方が孤立死されているといったお話しもありました。有賀先生のご講演は多くの拍手に包まれながら終了しました。

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