院長インタビュー

「広い視点で街づくりの柱に」地域に貢献する医療法人大誠会 内田病院

「広い視点で街づくりの柱に」地域に貢献する医療法人大誠会 内田病院
田中 志子 先生

医療法人大誠会 理事長、社会福祉法人久仁会 理事長 、群馬県認知症疾患医療センター 内田病院 ...

田中 志子 先生

この記事の最終更新は2017年05月18日です。

群馬県の北部、沼田市に位置する医療法人大誠会(たいせいかい)内田病院は、1976年の開業以来、患者さんや地域の方々を手厚くサポートしてきました。同院は、高齢化の進む社会のニーズに応えるべく専門性の高い認知症治療を行い、地域住民に「安心」してもらえるような医療を支え続けています。同院の取り組みは、どのような理念と展望に基づいて行われているのでしょうか。医療法人大誠会グループ理事長の田中志子(ゆきこ)先生にお話を伺いました。

内田病院は、99床(一般病棟49床、回復期病棟50床)の病床数と14の診療科を備え、なかでも認知症外来は早期診断・早期治療のみならず、入院・外来のどちらにおいても患者さんご本人とそのご家族が満足できるような包括的なケアサービス・治療を行っています。

また、地域内のクリニック・福祉施設・ケアマネージャーからの紹介患者さんを多く受け入れていることも特徴です。外来においては、当院を利用したことのある患者さんから紹介を受けて来院される方も非常に多く、これまで地域医療に注力してきた成果が実ったようでありがたいと感じています。

内田病院の外観

内田病院の外観 写真提供:内田病院

当院は、1976年に私の父が開業した19床の診療所を前身としています。それから1986年まで10年ほど、地域の患者さんを中心に受け入れていました。しかし地域の高齢化に伴い、患者さんの訴える症状が風邪など一般的なものから、ご高齢の患者さん特有の体の痛みや認知症へと変化し、治療後のリハビリや回復に入院を要するケースが増加しました。それを機に当院は1988年9月1日、移転増床し99床になりました。さらに同年9月16日には、患者さんの高齢化とともに増加していく介護のニーズに応えるために、介護老人福祉施設を有する新たな病棟を新設しました。

当グループは、地域の方々が安心して生活できるよう様々な社会資源を展開し、幼い子どもからご高齢の方まで幅広いサポートを行っています。

たとえば子どもに関しては、地域型の保育事業「ひだまり保育園」や、障害を持つ子どもを受け入れている学童クラブ「手をつなごう」などを展開しています。このような取り組みが評価され、2013年に当グループは群馬労働局より「従業員の子育てサポート企業」として認定を受けました。

入居者と子供とのふれあい

学童「手をつなごう」の様子 写真提供:内田病院

また、2009年に開設した特別養護老人ホーム「くやはら」では、認知症をもつ患者さん個人の尊厳を重視した「パーソン・センタード・ケア」を導入しています。これは少人数で庭的な雰囲気の中で、患者さんの好みや生活習慣を重視し、居心地のよい環境作りを行うという取り組みです。

その他にも、要介護の認知症の患者さんが個室で過ごせるグループホームや、認知症の患者さんが家庭に戻れるよう支援する介護老人保健施設などがあり、高齢の患者さんとご家族をサポートしています。

当院の特長の1つは、認知症治療に関する専門性の高さです。

認知症に関する予防・診断・治療・ケアプラン・看取りなどで幅広く患者さん本人との関わりを持つとともに、本や雑誌、ウェブを通して認知症の市民啓発活動を行っています。

さらに、重度の認知症患者さんであっても社会に復帰できるよう我々が継続的にサポートし、その方が働ける場合には就労支援を行うことで、患者さんそれぞれにマッチするお仕事を探します。

認知症は、患者さんとご家族の生活に障害をもたらします。彼らの生活が改善されなければ、治療の意味がありません。認知症の患者さんそれぞれに多様な症状がみられますし、ご家族は生活面でお困りのケースが多々あります。我々は治療が困難な認知症のケースにおいても、診断・投薬だけで治療を終えることなく、非薬物療法を含めた専門的な治療と、環境調整・家族支援などの具体的な対応方法を提案します。そして、患者さん本人とご家族の抱える根本的な問題を理解し、解決することをポリシーとしています。

認知症の患者さんと職員のふれあい

認知症専門棟での活動の様子 写真提供:内田病院

当院の老年科(高齢者を専門とする診療科)の特色は、やみくもに薬物治療をするのではなく、豊富な治療選択を持つ点にあります。認知症を含めた高齢者の治療においては、疾患だけではなく、病状とともに変化する感情に寄り添うことが非常に大切です。つまり患者さん本人のQOL(生活の質に関する幸福度)や、ご家族の考え方を尊重し、インフォームド・コンセント(十分な説明を受けた上での同意)・治療選択を細かく行う必要があるのです。

当院は医師全員が慢性期医療への理解が深く、他科との連携を密にとるため、適切な医療提供が可能です。

そのため、多くの患者さん・そのご家族から「ここにきて本当によかった」という感謝の声をいただきます。内田病院の財産:高い専門性と実力を持つ職員

当院の財産は、なんといっても職員です。当院の評判を聞きつけて働きたいと申し出てくれる方もいれば、非常勤スタッフが常勤になりたいと希望を出してくれるケースもあります。

我々は医師・看護師に限らず、当院の理念に共感してくださる方を採用しています。そして実力のある医師をみつければ、当院へ招き入れます。このような積み重ねにより、すべての診療科に専門性の高い医師・職員を揃えています。

内田病院の職員の皆さん

内田病院の職員の方々 写真提供:内田病院

職員が楽しく働ける環境を整え、なおかつ個人と組織がよく育っていくことを大切にすることで、患者さんにもよい医療を提供することが可能になると考えています。ですから当院は、職員全体のまとまり・風通しのよい環境作りも大切にしています。

たとえば、部署ごとのチームではなくフロア別のチーム編成を行い、師長(看護師のリーダー)・看護師・リハビリ部員・ソーシャルワーカー・歯科衛生士など、職種をまたいで同じ目標を設定します。これにより、風通しのよいフラットな関係が維持できます。こうした組織体制の工夫により、当院職員の定着率は高く、結婚・出産を経ても職場に復帰してくれる方が多くいます。

当院のコアとなる理念は「まちづくり」です。今後ますます高齢化が進むなかで、病院としての役割を果たすだけでは、地域住民が本当に安心できる社会にはつながりません。

内田病院を含む当グループは、認知症予防による保険料削減、障害を持つ方々・高齢の方々を含め雇用を創出する取り組み、子育て支援事業、それらがもたらす人口の増加など、より広く深い視点を持って地域に貢献したいと考えています。

人が生まれてから死ぬまで、この地域で一貫して生活するために一体何をするべきか。このことをグループ全体で常に考え、行動に移しています。患者さんだけではなく、健康な方々を含めた地域全体を見据えて、医療事業にとどまらず、地域に貢献できる様々な事業を今後も積極的に行います。

大誠会グループの構造

田中先生

当院のある沼田市エリアは、2次医療圏(入院ベッドの必要数に応じて設定された地域)が広すぎないため医療のサポートが届きやすく、病院が柱となったまちづくりが可能であると考えます。我々がまちづくりをする最終的な目標は、この地域で生まれた子どもが将来を心配することなく成長でき、働く場所があり、親世代がいつまでも元気で生活できる場所をつくることです。そのように魅力的な街であれば、勉学などでエリア外に出ていた子ども世代も積極的に戻ってくるでしょう。我々は今後も地域住民にとって魅力的なまちを作るために、広い視点で医療・福祉・生活を結びつけ、子どもから高齢者までが安心して暮らせるまちをつくります。

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  • 医療法人大誠会 理事長、社会福祉法人久仁会 理事長 、群馬県認知症疾患医療センター 内田病院 センター長

    田中 志子 先生

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