院長インタビュー

「患者様の生活を大切に」よみうりランド慶友病院

「患者様の生活を大切に」よみうりランド慶友病院
厚東 篤生 先生

よみうりランド慶友病院  院長

厚東 篤生 先生

この記事の最終更新は2017年07月12日です。

東京都稲城市にあるよみうりランド慶友病院は、2005年の開設以来、よみうりランドに隣接した緑豊かな環境で、ご高齢の方々を中心とした患者様と、そのご家族を手厚くサポートしています。「病院らしくない病院」をコンセプトとした同院が行う様々な取り組みや理念について、院長の厚東篤生(ことうあつお)先生にお話を伺いました。

当院をご紹介するには、まず医療法人社団慶成会の会長である大塚宣夫の話をしなくてはなりません。大塚は、1980年に青梅慶友病院を創設しました。当時、高齢者が余生を過ごせる病院はごくわずかで、その管理体制はたいへん悲惨なものでした。大塚はそのような状況を目の当たりにして、「自分の親を預けられる病院を作らなくては」という使命感に突き動かされたのです。

オープン当時、医療・生活・介護すべての面を手厚くサポートする高齢者向けの病院はたいへん珍しく、多くの需要がありました。そのニーズに応えるべく青梅慶友病院は幾度の増床を重ね、2017年現在、736床で運営しています。

よみうりランド慶友病院院長の厚東篤生(左) 医療法人社団慶成会会長の大塚宣夫(右) 写真提供:よみうりランド慶友病院

当院は、青梅慶友病院における経験をもとに、2005年に開設されました。青梅慶友病院よりも都心に近いため、ご家族も頻繁に通うことが可能になりました。

よみうりランド慶友病院の外観 写真提供:よみうりランド慶友病院

当院は、3診療科(内科、リハビリテーション科、精神科)を備えた高齢者専門の療養型病院です。現在240名の患者様が入院しており、その平均年齢は87.6歳です。

よみうりランド近くの緑豊かな丘の上に建ち、病室の窓からは四季折々の景色を存分に楽しむことができます。空気の澄んだ日には遠景に富士山を望むことができ、春には桜や山藤が美しく咲き誇ります。このように豊かな自然に囲まれた静かな環境は、大きな魅力の1つでしょう。

ロビーには画家 田村能里子氏の絵画が飾られています 写真提供:よみうりランド慶友病院

当院は「病院らしくない病院」をコンセプトにしています。患者様はほとんどが終身で入院されます。つまり患者様が人生の最晩年を過ごす場所ですから、病院らしさを抑え、自宅にいるように穏やかな気持ちになれるように様々な工夫をしています。

たとえば内装は、ベージュの壁、柔らかい色合いの照明、木目調で統一した家具などを使い、病院らしさを抑えています。また院内のいたるところに絵画や置物、生花を飾り、癒しのある空間を作っています。

四季折々の景色を楽しむことができます 写真提供:よみうりランド慶友病院

当院は、遊園地のよみうりランドと隣接しているため、東側の病室からはよみうりランドの園内を一望することができます。ジェットコースターや観覧車など、風景に動きがあることは、患者様にとってよい刺激になります。なお、遊園地に面している部屋はすべて二重防音ガラス構造のため、騒音などの問題は一切ありません。

また、患者様はその身一つと、最低限のご自身に合わせて作られたもの(眼鏡、補聴器入れ歯など)を持参するだけで入院できるよう、必要な生活用品をすべてご用意しています。パジャマやスリッパはもちろん、日常の衣服や履き物、帽子など、身の回りの物品は一通り揃っています。

患者様のお部屋からみえる景色 写真提供:よみうりランド慶友病院

当院では「生活の再構築」を目的として、病院側で患者様の洋服を用意しています。高齢者の一人暮らしや自宅介護の場合、着替えが面倒だという理由からパジャマなどの寝間着で一日中過ごしがちです。しかし当院では、朝は洋服に、夜はパジャマにきちんと着替えることで、患者様の生活にメリハリをつけています。洋服はそれぞれの状態やお好みに合わせて季節ごとに揃えています。

また、外出時にかぶる帽子や、お誕生日などのイベントの際に身につけるアクセサリーも用意しており、自由にお使いいただくことができます。特に女性の患者様の場合、着飾ることで人目を意識し、新鮮な気分になったり積極的に部屋から外に出るようになったりといった効果もあります。この取り組みを通して「久しぶりにおしゃれをしたわ」という患者様の声や、「着飾った祖母をみられて嬉しい」というご家族の声をいただいています。

帽子やアクセサリーなどの小物もご用意しています 写真提供:よみうりランド慶友病院

病棟では、1つのユニット(医療チーム)ごとに約20名の患者様をみています。1ユニットはおもに3〜4名の看護師と、3〜4名の介護スタッフで構成され、食事の時間には食事介助スタッフ、週2回の入浴日には入浴介助のスタッフが加わります。

毎日同じスタッフがケアすることで、お互いに顔と名前を覚えることができ、密なコミュニケーションが可能になります。また患者様の些細な変化にも気付きやすく、容態が悪化した際に迅速な対応ができるという利点もあります。

患者様の咀嚼力(噛む力)や嚥下力(飲み込む力)などを含めた口腔機能を考慮し、常食、軟菜食(やわらかめの食事)、ソフト食(食材を裏ごし後に見栄えよく再形成し、味付けした食事)の3種類から食事を選択することができます。

一日の食事カロリーはおよそ1500〜1700kcalで、調理についてアウトソーシングはせず、すべて院内の調理場で作ります。患者様、ご家族からのご意見、ご要望も積極的に受け付けています。

このように当院では食事にこだわり、生活に欠かせない「食」を楽しめるよう工夫しています。

お食事の一例 写真提供:よみうりランド慶友病院

普段の食事以外にも、「好きなときに好きなものを」食べられるよう配慮しています。6階にある喫茶室では、ご家族とともに食事ができるよう、デザートやお酒を含めたバラエティ豊かなメニューを取り揃えています。

お酒も禁止しておりませんので、なかには毎日晩酌をされる患者様もいらっしゃいます。基本的には何を食べても飲んでもよく、制限するべき食材などがある場合には、主治医と相談のうえ、調整をしながらなるべく食事を楽しめるように工夫しています。

喫茶室でご用意しているメニュー 写真提供:よみうりランド慶友病院

病院内は常に温度を一定に管理しているので、どうしても季節を感じにくくなります。そのため、院内にいながらにして季節感を味わえるよう、各月に季節のイベントと美食倶楽部というイベントを開催しています。

たとえば5月には新茶の会、夏には夏祭りなどを開催し、美食倶楽部では毎月のお寿司に加えて、5月にステーキ会席、6月には鮎会席などを設けています。

美食倶楽部では、常食とソフト食を用意しているので、患者様とご家族が一緒のテーブルで食事を楽しむことができます。外出が困難な要介護の方でも、美食倶楽部ならば病院内でご家族と一緒に外食の気分が味わえると好評をいただいています。

さらに、毎月一度、プロの演奏家を呼んで喫茶室でコンサートを開催しています。会場で聴く音楽は耳によい刺激になりますし、ちょっと着飾ってコンサートに出かけるような気持ちで楽しんでいただけます。ボランティアによるコンサートも随時開催されています。

明るい日差しが差し込む喫茶室 写真提供:よみうりランド慶友病院

個々の患者様に最適なリハビリテーションのプログラムを作成し、持ち得る能力を長期間にわたり衰えさせないことを目指しています。

PT、OT、STなどによる介入に加えて、リハビリテーションルームでのスタッフとの交流や、趣味を通したリハビリテーションを行ないます。運動プログラムはもちろんのこと、習字、絵画、裁縫など、楽しみながら頭と手を動かせるプログラムも豊富です。

患者様の作品

患者様の作品

当院では、患者様の生活を一番に重視しています。心穏やかに、静かに、痛みなどの苦しい症状がなく、毎日の生活を楽しめる環境を作ることが、私たちの使命であると考えます。そしてその背景には、良質な医療体制が整っていなければなりません。実力のある医師がそれぞれ素晴らしい専門分野を持ちつつも、トータルに診ることを信念としています。患者様にとって、すべてのスタッフが頼れる存在であることは、日々生活するうえでの安心感につながるでしょう。

青梅慶友病院創設当初から変わらず「自分の親を安心して預けられる病院」というコンセプトを大切にしています。スタッフには、「患者様が自分の親だったら?」といった視点で、何をしてあげたいか、どうしたら喜んでいただけるのかをイメージして仕事をするよう伝えています。

10数年前のことになりますが、私の両親が青梅慶友病院で人生の最晩年を過しました。それはひとえに、私たちの病院が良質な医療体制を持ち、患者様が日常の生活を楽しめる環境を提供していると心から感じるからです。これからも私たちは、患者様一人ひとり、そしてそのご家族が心穏やかになれる場所を提供し続けていきます。

屋上からみえる風景

屋上からみえる風景

一昔前までは、自分の親を老人ホームや老人病院に預けることは親不孝のようにいわれたこともありました。しかし高齢化が進む現代において、高齢者の生活を支えるための施設は様々な形で増加しています。そのなかで私たちは、それまで一生懸命に生きてきた方々の人生の終末期を、できるだけ心穏やかな時間にするために理想を追求してきました。

 その努力が形となり、今では私たちの理念に賛同して下さる方々が大勢いますし、当院に入院される方々は皆穏やかに毎日を過ごされています。私たちはこれからますます高齢化が進む社会のなかで、今ある姿を貫き続け、「自分の親を安心して預けられる病院」としての使命を全うしていきたいと考えます。

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