院長インタビュー

地域で唯一の総合病院として上都賀総合病院が担う役割

地域で唯一の総合病院として上都賀総合病院が担う役割
十川 康弘 先生

上都賀総合病院  病院長・外科

十川 康弘 先生

この記事の最終更新は2017年09月26日です。

上都賀厚生農業協同組合連合会 上都賀総合病院は、地域の農家の方などが加盟する産業組合の出資により、1935年(昭和10年)に建てられました。開院以来、栃木県鹿沼市唯一の総合病院として、地域医療を支え続けています。長きにわたり、地域に暮らす方々の健康を守り続けてきた同院の取り組みや今後の展望について、院長である十川 康弘先生にお話を伺いました。

 

 

当院は開院以来、2次医療圏の中核病院として、地域のための医療サービスを提供してきました。26の診療科を構え、一般病棟302床・精神科病棟50床の施設規模で、地域の方々の健康を守り続けています。

当院が開院したのは1935年(昭和10年)であり、当時、鹿沼市の人口は約7万5,000人でした。2001年(平成13年)の約104,000人をピークに人口の減少が始まり、現在の人口は約97,000人です。地域の高齢化にともない複数の疾病を持っているご高齢の方が増加しているため、病院を利用する患者さんの数は増えてはいるものの、この先も人口の減少が続けばいずれ、何らかの対策が必要になると予想されています。

厚生農業協同組合連合会グループに属している当院は、地元の農家の方などが加盟する産業組合の出資によって建てられた医療機関です。かつての産業組合は、歴史を経て現在の厚生農業協同組合連合会(JA全厚連)に引き継がれ、当院を運営しています。全国にある同グループ病院は当院と同様に、まだ民間病院が不足していた時代に地域の一次産業従事者が自らの健康を守るために出資を募ってつくられました。

そのような歴史的背景をもつ、同グループ病院は医療法で規定されている公的病院です。公の医療機関であるということは、地域の方々のニーズに応じた医療サービスの提供が求められているということを意味します。当院は、栃木県鹿沼市唯一の総合病院であることに加え、公的病院としての役割を果たすためにも、地域のための病院であり続けなければならないという使命をもっております。

 

 

地域にはさまざまな疾患をかかえた患者さんがいらっしゃいます。そんななかで、地域にお住いのすべての方の健康を守っていくためには、あらゆる疾患に対処できるようしっかり備えておかなければなりません。強みとなる診療科を持つことも大切ですが、そのほかの診療科が手薄になるようなことがあってはならないのです。頻度の高い疾患に対しては、地域内で完結できる診療体制整備が必要です。

当院の特徴は、すべての診療科を満遍なく充実させていることです。地域で暮らすみなさまの健康を守っているという自負のもと、さまざまな疾患と向き合っていくための体制を整えています。鹿沼市には、当院のほかに総合病院がありません。これからも現在の医療体制を維持し、当院を頼ってお越しくださるすべての患者さんを受け入れていくことで地域に貢献したいと考えています。

 

 

 

現在、日本人男性は19.5%、日本人女性は9.2%の割合で、強く糖尿病の疑いがあると2015年(平成27年)度、厚生労働省が発表しました。

当院ではこのような社会のニーズにあわせ、糖尿病患者さんやその予備軍となる方を専門的に診療することを目的とした「糖尿病センター」を開設しました。センターでは、専門指導医師だけでなく、認定看護師、薬剤師、栄養士など他職種で構成された糖尿病支援チームが、外来から病棟まで切れ目なくサポートしています。開設以来、チームスタッフ一同が精力的に糖尿病患者さんの診療にあたっており、そのクオリティーは、県内で高く評価されています。

糖尿病に悩む地域の患者さんは、ぜひ当院の糖尿病センターにいらしてください。

 

 

全国に先がけて2017年(平成29年)4月1日に開設した、地域包括ケア病棟の存在も当院の特色のひとつとなっています。地域包括ケア病棟は、急性期治療を要する患者さんの病状が安定した際に、退院支援を行うことを目的とした病棟です。安定期に入った患者さんのなかには、在宅での療養に不安を覚える方もいらっしゃいます。病院での療養期間をもう少し延長し、安心して退院したいと望む患者さんのために地域包括ケア病棟があります。

当院の地域包括ケア病棟では、患者さんの健康面はもちろん精神面の不安も取り除き、安心して退院していただけるようスタッフ一同、全力で支援いたします。地域の方々の入・退院に対する不安を軽減することにより、些細な体調の変化でも当院で受診していただけるような意識につながればと考えています。

 

 

 

当院にお越しくださる、地域の患者さんのおよそ半数は内科系の診療科に受診されています。そのため、あらゆる診療科を充実させることを念頭におきながらも、ニーズにあわせて内科系診療科の充実度を向上させる必要があると感じています。地域の方々の要望を取り入れ、診療科ごとに充実度のバランスをとりながら医療サービス全体の質向上を図ってまいります。

もちろん、外科などに関しても、内視鏡や腹腔鏡手術のシステムを導入するなど、ほかの医療機関に劣らない設備を用意しております。

 

 

私は、自身の仕事に本質的に楽しんで取り組んでほしいと若手の医師やスタッフに伝えてきました。それが、彼らの成長につながると信じているためです。現在、私の思いを特に実践してくれているのは当院の看護師や他職種で構成されているチームのメンバーや認定看護師たちです。彼らがいきいきと心から楽しんで仕事をしてくれているように感じられます。

やる気のある看護師には、認定看護師資格取得への挑戦を促してきました。なかには、病院から補助金で講習会へ参加してもらっている看護師もいます。また、当院の看護部長は、ネゴシエーターなどが駆使する交渉術を勉強し、医療従事者や患者さんとのコミュニケーション論を独自に開発しました。医療における交渉術という内容で書籍も出版しています。このように、本質的に業務を楽しんで行っているスタッフ達が、これからも当院を支えていってくれると考えております。

 

 

 

現在、鹿沼市の患者さんのおよそ30%は地域外の病院、特に宇都宮市内の大規模病院を受診されています。これは、この地域と当院にとって大きな課題です。この課題を解決するために、現在もっとも必要なことは医師や看護師の確保だと考えています。特に当院がかかえる医師不足の問題は深刻です。地域のための病院として同市のあらゆる患者さんの受け入れを目指す当院にとっては、この現状はあってはならない事態といえます。
現在は、これまでも多くの医師を当院へ紹介していただいた千葉大学、獨協大学や自治医大などの医局へ医師の派遣をお願いしているほか、人材紹介会社などを利用して医師の採用活動を行っています。今後は、より有効な求人方法を院内で検討し、地域にお住いのすべてのみなさまを受け入れることのできる体制づくりを早急に進めてまいります。

 

 

十川 康弘先生

 

当院の使命は、鹿沼市と周辺にお住いのすべての方の健康を守ることです。当院はこれまで、地域の医療ニーズに応えバランスをとりながらも、あらゆる診療科を満遍なく充実させていくことで、どんな疾患にも対処することのできる病院づくりに努めてまいりました。

そのなかで生まれた、糖尿病センターや地域包括ケア病棟などは当院の特色となるサービスといえます。また、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院、臨床研修病院、へき地医療拠点病院などの公的な役割も担っています。今後は、この特色を大切にしながらも、さまざまな課題を解決していくことで、いついかなる症状をかかえた患者さんがいらしても不足のない医療サービスを提供できる体制づくりを推進してまいります。

当院はこれからも、地域で唯一の総合病院として地域医療を担っていく所存です。地域になくてはならない存在として、これからも同市の方々から頼りにしていただけるよう質の高い医療の提供を行ってまいります。

 

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