鹿児島県鹿児島市にある、公益財団法人昭和会 今給黎総合病院は地域に急性期医療を提供する民間病院です。整形外科手術や新生児治療を得意とし、質の高い医療サービスを提供してきました。
同院ではスタッフ一丸となって24時間体制の救急医療を行っており、年間約2,700件の救急搬送を受け入れています。創立以来、約80年続く歴史を誇る同院の取り組みや、病院運営にかける思いについて、理事長である今給黎 尚典先生にお話を伺いました。
当院は、鹿児島県鹿児島市にある私立の急性期病院です。27ある診療科のうち、特に救急医療や整形外科手術、新生児治療などを得意とし、この分野において質の高い医療を地域に提供してきました。また、450の病床を有し、月平均700名以上の入院患者さんを受け入れています。
当院は畳部屋に7、8名の入院室のある診療所とし1928年(昭和13年)に開院しました。戦災によって一度は消失したものの、1947年(昭和22年)に24床の病院として再建しました。再建後は徐々に医療機関としての機能を拡張させ、鹿児島に急性期医療を提供する病院として、長きにわたり地域の方々からの信頼を積み重ねてきました。2013年(平成25年)3月には、地域医療支援病院としての認定も受け、創立から約80年経った今も地域医療に貢献し続けています。
ある講演会で100年続く企業の条件は、①企業の目的がはっきりしていること②内部の風通しが良いこと③組織に一体感があること、と聞きました。当院は、鹿児島県において鹿児島大学病院、鹿児島市立病院についで3番目の規模の450床の急性期に特化した病院です。診療科の壁がなく、27診療科のスタッフが気軽に相談し合える風通しの良さがあります。24時間救急体制を全員の医師で実行するという一体感があり、100年続く企業の3つの条件が揃った病院です。これからも、地域に貢献していける病院運営を続けてまいります。
救急医療に力を入れる当院では、24時間365日の救急医療体制を維持してきました。毎晩の当直は、準夜勤1名と夜勤1名、集中治療室を診る医師が1名の計3名です。当院に在籍する医師が毎晩交代でこの当直を受け持っています。また当直に加え、各診療科の医師が1名ずつ、夜間の急患に対応するために、当番制で自宅待機をしています。このような体制で、当院は地域のみなさまに救急医療を提供してきました。
当院が受け入れる救急搬送は年間約2,700件です。時間外の全身麻酔の手術は、月に20例から40例行われ、外傷は3分の1、腹膜炎が3分の1、異常分娩による帝王切開が3分の1となっています。オンコール制で月に120名から130名の医師で対応しています。離島からドクターヘリでの搬送も積極的に受け入れ、どんな患者さんであっても絶対に断らないという姿勢を貫いてきました。これからもこの救急医療体制を維持し続けることで地域に貢献してまいります。
当院は整形外科治療を得意する医療機関として、地域の方々に認識していただいています。なかでも、脊椎や頚椎の手術を得意としており、離島を含む県内全域から患者さんがいらっしゃいます。
また、変形性関節症・関節リウマチなどに対する骨切り手術や人口関節手術も積極的に行っており、整形外科全体の総手術件数は、2015年(平成27年)の実績で年間1,000件を超えました。整形外科医からの人気も高く、当院としても同科の実績を誇りに思っています。
小さく生まれたり、病気を持って生まれたりしたために自力での呼吸や哺乳が、うまくできない赤ちゃんへの専門的な治療、いわゆる新生児治療も当院が得意とする分野のひとつです。鹿児島市内で新生児治療を行う医療機関は、鹿児島市立病院と当院のふたつだけです。1000g未満の赤ちゃんを鹿児島市立病院が、それ以上の体重がある赤ちゃんや回復期に入った赤ちゃんを当院が診ることで、市内の新生児治療にあたっています。
当院の麻酔科には、6名の常勤医と常時1、2名の非常勤医が在籍しています。当院の規模を考えれば、麻酔医が多いように感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、麻酔科は手術に不可欠な部門です。救急に力を入れ、年間4,000件以上の手術を行う当院は麻酔医の存在が欠かせません。麻酔医を多くかかえているのは、急性期医療を大切にする思いのあらわれなのです。
画像診断の技術が発達していないころは、患者さんのお腹を開いてはじめて疾患の全容がわかるということが頻繁にありました。しかし、技術の発達した現在では体を傷つけることなく、多くのことがわかります。画像診断の重要性に早くから注目していた当院は、県内ではじめてMRIを導入した医療機関でもあります。現在も多くの先生方が当院の画像診断技術に信頼をおいてくださり、CTやMRIの撮影依頼をいただいています。
当院には80年にわたる歴史があります。鹿児島県は公的な医療サービスが十分に提供されている地域とは決していえません。当院は、そのようなエリアにあって、できるだけ質の高い医療を住民の方々へ届けたいという思いのもと、地域に急性期医療を提供してきました。公的な医療機関が提供できない医療を、私立病院である私たちが地域に届けるという思いは、父の代から現在も変わることなく受け継いでいます。父は90歳になるまで現役を貫いた人です。私もそれを見習い、可能な限り長く医師として勤めようと考えています。
私はスタッフたちに向けて、自身の専門性を大切にしながら奉仕の心をもって日々の診療にあたってほしいと伝えてきました。医療に関わる者として奉仕の精神をもつことはとても大切なことです。しかし、日々医療の提供を行うなかで、奉仕の精神だけでは乗り越えられないほど辛い気持ちになることもあるでしょう。そのようなときのために、自身の専門性を大切にすることを忘れてはいけません。自分の専門に関することであれば、きっとやりがいをもって業務に取り組めるはずです。
このような思いから、当院ではスタッフそれぞれの専門性を大切にしています。スタッフには自身の専門にどんどん特化してほしいと考えているのです。そして、在籍するスタッフの専門では診療しきれない患者さんを、当院では総合内科で診ています。
幸いなことに、当院には総合診療を志す優秀な医師が集まってくれています。異なるバックグランドを持つ彼らが、当院の総合内科を盛りたててくれています。
当院はこれからも、専門性に特化して各診療科を運営していくとともに、それだけでは診療しきれない疾患を総合内科で診ていきます。いつでもみなさまのお役立てるよう、院内一丸となって24時間365日の体制の救急医療を地域に提供していく所存です。
今給黎総合病院 理事長
今給黎 尚典 先生の所属医療機関
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。