院長インタビュー

安心して医療を受けられる体制づくりを─半田市立半田病院の取り組み

安心して医療を受けられる体制づくりを─半田市立半田病院の取り組み
渡邉 和彦 先生

半田市立半田病院 病院長

渡邉 和彦 先生

目次
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半田市立半田病院は愛知県南部の知多半島に位置し、この地域では数少ない救命救急センターを有する公立病院です。急性期医療に重点をおく同院は、2025年に予定されている隣市の常滑市民病院との統合と新築移転に向け、多忙な診療活動の中でその準備に鋭意尽力されています。

同地域における医療統合のお話を中心に院長の渡邉(わたなべ) 和彦(かずひこ) 先生にお話を伺いました。

半田市立半田病院の歴史は、昭和24年に旧中島飛行機の診療所を買い取り病床数40床7診療科の病院として出発したことに始まります。増床を重ねて現在は499床26診療科を有し、名古屋市の南に位置する知多半島で広い医療圏をもつ病院へと成長しました。

当院は知多半島の3次救急医療機関として、地域の急性期に重点を置いた医療を提供しています。

私自身脳神経外科が専門で、この分野を目指したのは命に直結する場所で医師としての力を発揮したいという考えがありました。研修医時代に優秀な先生のもとで働ける機会をいただき、研鑽を重ねてこの分野での急性期医療に力を注いでいました。当院に着任してからも変わらず力を入れて取り組んでいます。

当院は3次救急を受け持つ急性期医療に重点を置いた病院です。我が国の救急医療体制は、在宅当番や休日夜間救急での1次救急、そして病院の輪番制等で入院や手術が必要な重症患者に対応する2次救急、そして各地域の最終受け入れとして命の危険に関わる重篤な患者に対応する救命救急センターによる3次救急という、機能分担が行われています。

当院ではその3次救急医療機関として一般の病院では対応が難しい脳卒中などの重篤な急性期疾患に対応しており、救急医療の最終的な拠点としての任務を負っています。

知多半島での救命救急センターは現在のところ当院のみで、また2次救急施設も周辺には少ないため、軽傷から重症までの患者さんを24時間365日体制で対応しています。

医療機器は、病院の移転が間近に迫っているので移転の際にいろいろと新しい機器をそろえる予定でいます。ただし手術支援ロボットのダビンチ (Da Vinci Xi)は患者さんにとっても利益が大きく、またコンパクトな機種があったため移転後も使えるだろうと2020年に導入しました。
現在、泌尿器科をはじめ、外科、産婦人科で活用しています。ロボット支援下の手術は従来の方法と比較して深い場所での視野が良好で、微細な操作が格段にやりやすく、安定的に低侵襲な手術が可能です。また、教育面においても有用で、術者以外にもよく見えたりシミュレーターで練習が可能だったりと、複雑で多様な近年の医療において治療面でも医師の育成においても役立っています。

当院は“断らない救急”をモットーとし、ほぼすべての患者さんを受け入れています。しかし慢性的な医師不足や社会意識の変化による気軽な受診が増えたこともあり、当院では救急の医療リソースが不足しています。さらに、今後の人口減少にともなう地域の過疎化、働き方によるさらなる医療者の人手不足や建物の老朽化を考え、お隣の常滑市民病院と独立行政法人化での経営統合を行い、当院は半田公園の東側に新築移転することになりました。急性期病院の当院が急性期機能を受け持ち、回復期医療が充実している常滑市民病院がその機能を集約的に担うというやり方です。2つの病院がそれぞれの強みを生かして機能を集中化することにより、この取り組みはよい方向に向かうと考えています。

統合は実利の面ではよいことが目立ちますが、自治体も違う病院が一つになるというのは簡単ではないと思います。実際統合すると異なる院内文化・理念やオペレーション、職種の役割など、さまざまな問題が噴出するでしょう。

そんな中、新型コロナウイルス感染症下で2院で医療分担をした際は、統合時のシミュレーションにもなりました。具体的には、第4波ごろまで当院で受け入れた急性期のコロナ患者さんを常滑市民病院に搬送し、その後の回復期を担当していただく、というやり方です。

当院から医師や看護師を派遣し、相互に密な医療連携をとることで事前に統合の際の課題を見つけることができたのは良い経験でした。

この統合計画は2病院だけの問題ではなく、当区域内の医療機関全体においても協議が行われている大プロジェクトです。各病院の病床管理や機能分化連携、医療連携の仕組みづくりなど、大きい枠組みの中でもしっかりと検討を重ねています。

新病院は、半田運動公園や知多南部総合卸売市場の付近に建築中です。建物は地下1階地上5階建てで、ドクターヘリが離着陸できるヘリポートを屋上に設置する予定です。建築作業も順調に進んでおり、進捗状況は専用ホームページでも閲覧可能です。( https://www.shin-handa-con.com/index.html

当院では新病院での運用について、サービスロボットの導入を目指した実証実験を行いました。

これからの人口減少や働き方の変化によりマンパワーを補う施策は必須です。いち早く取り入れた飲食業界において、予約の案内や料理の運搬でロボットによるサービスを目にされた方は多いと思います。医療業界では、ダビンチを中心とした手術支援ロボットの導入が注目を集めていますが、そのほかの部分でロボットが登場するシーンは現在はそれほど多くはないと思います。

今回は、2024年1月29~31日の3日間で9社10機のロボットが実験に参加し、院内搬送、遠隔診療・投薬説明補助、ご家族案内、院内案内、院内清掃の5つの仕事を実施してもらいました。

この経験から得た結果をもとに、新病院での運用について検討いたします。

公立病院は医療インフラとしての面から、稀少疾患など需要が少ない分野でも診療を受け持つ必要があり、大半の公的病院では赤字経営となりやすい面があります。当院もその1つでしたが、数世代にわたる院長の改革で改善していき、ついに黒字化を達成することができました。

特に病院スタッフによる経営の精鋭チームが、DPC制度を活用したデータを他院と比較することで、診療科単位で経営面での弱点や原因の検討に大いに役立ちました。また、他の公立病院の先生たちとの経営検討会がとても勉強になり、情報交換したり互いの弱点を指摘したりと切磋琢磨しあい有意義な学びをさせていただいています。

当院は、患者さんやご家族の笑顔のために力を尽くし寄り添う、そんな病院でありたいと願っています。

また、当院には強い連携で協力関係にある医療機関がたくさんあります。おかしいなと思ったら、まず当院に相談してもらえれば、最適な病院をご紹介することも可能です。病院同士のネットワークで、患者さんの状態にあった最適な医師へ直接紹介できるのは患者さんにとっても簡単でメリットが大きいと思います。そのような、地域の方の第一想起になれる病院でありたいと考えています。

これからも地域医療の向上にスタッフ一同力を尽くしてまいります。

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