えちごトキめき鉄道南高田駅から徒歩約5分、上越市南高田町に施設を構える上越地域医療センター病院。病院長の古賀昭夫先生は、「病気や日常生活での困りごとはできる限り何でも相談に乗り、親身に対応する病院を目指したい」とおっしゃいます。この目標を掲げた上越地域医療センター病院では、総合診療や在宅医療、訪問看護、リハビリテーションなど、患者さんの生活に寄り添った医療を幅広く提供しています。在宅医療や在宅介護を応援するカフェの開催など、独自の取り組みで上越地域の健康を守る上越地域医療センター病院について、古賀昭夫先生にお話しいただきました。
上越地域医療センター病院は、1908年(明治41年)に旧日本陸軍軍隊の衛戍(えいじゅ)地に衛戍病院として創設されました。つまり、当院は当初、軍人のための病院として作られたのです。その後、高田陸軍病院と名を改めていた当院は、第二次世界大戦の終戦を機に厚生省に移管され、国立高田病院へと改称されます。2000年には、上越市が国からの移譲を受け、上越地域医療センター病院が開設されました。
開院後は回復期リハビリテーション病棟、専門外来の開設など拡大を続け、現在は慢性期医療を中心に地域医療に貢献しています。内科、外科、整形外科、リハビリテーション科など一般的な診療科での外来・入院診察に加えて、在宅医療も行っています。また、地域連携パス*も主体的に実施しており、老人ホームの入居者さんが急変した場合の緊急受け入れにも対応しています。
地域連携パス:患者さんを中心に地域の医療者が役割分担と情報共有を行い、診療方針を定める仕組みのこと。たとえば、脳卒中のリスクが高い患者さんを大病院に紹介し、大病院で精密検査を行ったうえで今後の治療計画について患者さんや地域の医療者に説明するシステム。
上越地域医療センター病院総合診療科は2015年6月に内科から独立した診療科で、初診の方や診療所からの紹介患者さんの検査・入院受け入れ窓口を担っています。
どの診療科を受診すればよいかわからない方は、いったん総合診療科を受診していただき、容体に応じて各診療科への紹介や振り分けをさせていただくこともあります。
リハビリテーションセンターでは、脳卒中や大腿骨骨折で手術を受けられた方を主な対象とし、リハビリテーション医療を行っています。上越地域のほかの病院と地域連携パスを結び、脳卒中パスや骨パスを受け取ることもあります(※制限あり)。
具体的な治療の内容としては、脳に障害を負った方に対するドライビングシミュレーターを用いた運転教習や、嚥下訓練などが挙げられます。嚥下訓練の際には、歯科医師の往診を同時に行うこともあります。
このほか、小児の患者さん専用のリハビリテーション治療室も設置しており、子どものリハビリテーションにも対応しています。
上越地域医療センター病院には、訪問診療、訪問リハビリテーション、訪問看護、居宅介護支援、地域包括支援センター、相談支援事業所の6部門が集う在宅医療支援センターがあります。ここには医師、看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネージャーなどが在籍し、各部門の担当者が患者さんのご自宅に訪問して看護やリハビリテーション、介護を行ったり、居宅サービス計画(ケアプラン)を立てます。
在宅医療支援センターは地域の「よろず相談所」のような役割も担っており、大人の引きこもり、DV、家庭内暴力などの生活相談を併せて受けていることも特徴です。病院がこうした相談を受けることには利点があります。たとえば、DVについて相談にいらした方が大きなけがを負っていて、医師が必要だと判断した場合は、緊急入院措置を取り保護をすることも可能です。
当院では病診連携を大切にしており、病院とは診療所をバックアップする存在であるべきだと認識しています。そのため、日常的に通院している診療所がある場合は、そちらの先生に訪問診療をお願いすることがあります。もちろん、緊急訪問や入院治療を要する場合はこの限りではありません。
当院に入院・通院されている患者さんとそのご家族、地域にお住まいの方々を対象として、毎月1回「在宅介護を応援するカフェ」をオープンしています。ここは、病院に入院している患者さんのご家族が抱える悩みや不安、患者さんが退院された後の日々の介護で生じる困りごとを共有しあう場です。また、当院の看護師・ソーシャルワーカーから皆さんへ在宅介護に関する情報提供を行う場でもあります。
このほか、ボランティアの方による「笑いヨガ」や談話会なども開催しており、在宅介護を応援するカフェは地域の患者さんのご家族同士をつなぐネットワーク作りにも役立っていると感じています。
上越地域では医師不足が問題となっており、地域医療の安定と充実のために、若手医師の採用と育成が求められています。上越地域医療センター病院では若手医師を積極的に受け入れる環境を整えている段階です。
前述したように、当院は総合診療部門に力を入れており、総合診療医を目指す方や幅広い分野の病気を診られるゼネラリストになりたい方が深く学ぶことのできる施設だと考えています。
医師が持つべき能力のひとつに、「共感力」があります。若手医師の方々には、患者さんが何を思い・何に期待して・どうして欲しいと望んでいるのかを考え、感じ取れる人間に成長して欲しいと願います。人の気持ちを汲み取る力は、何らかの不調を抱えて戸惑われている患者さんが訪れる総合診療科はもちろん、在宅医療やリハビリテーションなど、さまざまな場面で存分に役立ちます。
総合診療専門医や家庭医療専門医が身につけるべき臨床技法のひとつに、PCCM(Patient-Centered Clinical Method:患者中心の医療の方法)という技法があります。PCCMとは、社会心理的要素を診療に取り入れつつ、医師と患者さんが健康問題解決に向けて協同する方法です。
医師が患者さんの病気だけではなくバックグラウンドをも理解し、患者さんは医師から受けた説明をしっかりと理解して、両者が共通の目標を見出すことで、患者さんと医師の関係が強化されます。このようなPCCMの実践により、患者満足度や健康指標が改善される可能性が示唆されています。
上越地域医療センター病院はこの方法に基づいた患者さん中心の医療を目指し、これからも日々の診療や医師の育成に尽力していきます。
上越地域医療センター病院 院長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。