院長インタビュー

病気でない人にとっても存在感のある病院を目指す長浜赤十字病院

病気でない人にとっても存在感のある病院を目指す長浜赤十字病院
楠井 隆 先生

長浜赤十字病院 院長・放射線科部長

楠井 隆 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年12月26日です。

長浜赤十字病院は滋賀県長浜市に位置し、地域への急性期医療の提供や国内外を問わず災害救護活動に尽力しています。救急患者さんの受け入れや周産期医療などの急性期医療を提供しながら、今後は滋賀県や地域のニーズに合わせて柔軟に病院機能を変化させていかなくてはならないと楠井先生は考え、実践しています。手術支援ロボットダヴィンチも導入し、今後も地域の急性期医療を支えていく、長浜赤十字病院 病院長 楠井隆先生にお話を伺いました。

 

長浜赤十字病院外観(長浜赤十字病院よりご提供)

長浜赤十字病院は1932年に日本赤十字社滋賀支部病院長浜診療所として発足したことから、地域への医療提供を開始しました。病院として地域医療を提供するかたわらで、日本赤十字社の取り組みである、国内外を問わない災害救護活動にも尽力しています。

当院の位置する滋賀県は関西地方に属しています。たとえば、関西地方では2018年6月に発生した大阪府北部地震がありました。災害救護活動のひとつとして、被災地で救護活動や炊き出しなどの活動にも尽力しました。今後も地域で災害が発生したら、いざというときに活動が行え、地域の皆さまに平時と変わらない医療提供をしていくためにも実践での経験や訓練を積んでいかなければならないと考えています。

赤十字社で実施している訓練には積極的に参加し、院内でも災害訓練を定期的に実施しています。

また、取り組みのひとつとして断らない救急を実現するために救急患者さんの受け入れに力を入れています。救急患者さんは子どもから高齢者までさまざまな状態で搬送されます。当院は迅速な治療が必要とされる三次救急の指定を受けています。そのため、救急車での搬送だけでなく、屋上に設置しているヘリポートを利用したドクターヘリの受け入れや、救急患者さんの受け入れに尽力しています。

 

BLS(一次救命処置)訓練の様子(長浜赤十字病院よりご提供)

 

救急患者さんの受け入れの中でも、精神疾患の患者さんを受け入れるスーパー救急の体制を整えています。これは滋賀県から精神科応急入院指定病院の要請を受けた当院が担っていく救急医療のひとつだと強く思っています。

精神科応急入院指定病院とは、精神保健指定医が緊急入院による治療が必要だと判断した精神疾患の患者さんを受け入れることができる病院のことを言います。

うつ病統合失調症などの精神疾患にかかり、就業が困難になる場合や、さまざまな理由から治療が遅れてしまい、重症化してしまうことがあります。また、地域の高齢化も進み認知症の患者さんも増加傾向にあり、若年層から高齢者まで幅広い精神疾患の患者さんを受け入れ、社会復帰の支援をしていく必要があると考えています。

また、患者さんの中には身体合併症を持っている方や、自傷行為をしてしまい精神科以外の診療科での治療が必要になる方も少なくありません。当院は総合病院として多くの診療科を設置しているため、そういった患者さんにも柔軟に対応し、他科との連携を深め精神科救急の受け入れを行っています。

地域の周産期医療を充実させ、安心して出産から子育てまでができる地域にしていきたいと思います。当院は地域周産期母子医療センターに指定されており、妊娠糖尿病の方や複数の赤ちゃんを同時に妊娠する多胎(たたい)、高齢出産などのハイリスク妊娠と呼ばれる妊婦さんの出産などを担っています。また、地域の周産期医療を担ううえでNICU(新生児集中治療室)を備え、母体だけでなく新生児や未熟児に対する治療も行えるようにしています。

滋賀県では開業している産婦人科の医師の高齢化が目立ってきました。今後も滋賀県や長浜市、近隣の市町村の周産期医療を支えていくためには、さまざまな取り組みを実施していかなくてはならないと考えています。5年後や10年後でも周産期医療を24時間365日受け入れる体制を整えていくために、今後多くの医療機関との連携が必要になります。

地域包括ケアシステムの構築の中で、高齢者だけでなく、赤ちゃんや子どもにも包括的な支援を提供できるようにしていきます。

 

ダヴィンチ手術の様子(長浜赤十字病院よりご提供)

地域の少子高齢化が進み、地域の皆さまが適切な医療をスムーズに受けるためには、それぞれの医療機関が協力し連携体制を整えていかなくてはならないと強く感じています。また、団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに地域包括ケアシステムの構築も叫ばれています。地域の医療機関同士が今まで以上に連携を強化するためには、行政との連携や協力も必要です。さらに、滋賀県は産婦人科の医師が高齢化してきたこともあり、地域医療や周産期医療の充実を図るためにも地域医療連携を強化することはひとつの課題だと感じています。

当院では情報通信技術ICTを用いて、参加施設で治療したことがある患者さんの情報を共有できるびわ湖あさがおネットを導入し、活用しています。情報を共有することで、急性期治療がひと段落した患者さんが転院した際にも、事前に情報が共有されているため適切な医療を受けることが可能です。また、びわ湖あさがおネットは医療機関だけでなく、薬局や在宅医療を提供している事業所や介護に関係する施設などでも活用されており、今後どういった治療やリハビリテーション、介護支援が必要なのかを把握することができます。

在宅医療や施設に入所されている患者さんの中には、急に病状が悪化し病院での治療が必要になることがあります。そういった場合にもびわ湖あさがおネットで患者さんの治療歴などを把握することで適切な治療を提供することが可能です。

高齢化や人口減少が進み、地域に求められる医療ニーズはどんどん変化してきています。地域の平均寿命だけでなく、健康寿命を延ばし地域の皆さまが最期まで元気な生活を送ることができるように、さまざまな取り組みを実施していきます。ご自身やご家族が病気になったときに病院の存在を意識するのではなく、健康なときでも存在感を覚えてもらえる病院を目指していきます。当院が急性期医療を担うことで、地域の皆さまが安心し、長浜市は住みよい街だと思い、地域全体の幸せが高まることができるようにスタッフ一同努力を重ねてまいります。

時代のニーズに合わせ、子どもからご高齢の方まで安心して治療が受けられるように尽力いたします。地域の方々の健康維持や診療に一層力を注いでいきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

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  • 長浜赤十字病院 院長・放射線科部長

    楠井 隆 先生

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