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医学部を目指す中高生のためのイベント「桐蔭学園 医学を志す」レポート

医学部を目指す中高生のためのイベント「桐蔭学園 医学を志す」レポート
朝倉 太郎 先生

鶴間かねしろ内科クリニック 院長

朝倉 太郎 先生

金城 瑞樹 先生

東林間かねしろ内科クリニック 理事長/杏林堂クリニック 院長

金城 瑞樹 先生

目次
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2019年6月15日(土)、横浜市にある桐蔭学園にて、医学部を目指す中高生のためのイベント「医学を志す」が開催されました。現役医師による講演をはじめ、桐蔭学園出身の医学生や研修医との座談会、来場した中高生によるグループワークなどが行われました。

本記事では、このイベントの様子をお伝えします。

医師を目指す中高生を応援する活動を行っている、現役医師・医学部生の団体「AVENUE Education」の朝倉太郎先生と、金城瑞樹先生から、開会の挨拶がありました。

朝倉先生

朝倉先生:

AVENUE Educationの副代表の朝倉です。本日は司会・進行を務めますので、よろしくお願いいたします。

日本で医師になるためには、その第一歩として、医学部に入ることが必要です。つまり、中高生という早い段階で医師になることを決め、準備しなくてはなりません。しかし、医師の仕事とはいったいどのようなものなのか、実情を知る機会があまりないということが、問題であると思っています。「医学を志す」は、医師が実際にどのような仕事をしているのか、どのような情熱を持って仕事をしているのかということを伝える場として、始めました。

本会は、JR東日本根岸線の山手駅にある聖光学院で、何度も開催してきました。桐蔭学園で開催するのは初めてですが、多くの学生さんに参加いただき、嬉しく思います。本日は、大いに盛り上げていこうと思います。

金城先生

金城先生:

AVENUE Education代表の金城です。私は、神奈川県の東林間かねしろ内科クリニックと鶴間かねしろ内科クリニックの院長を務め、主に糖尿病の患者さんを診ています。2018年8月からは、小田原市にある杏林堂クリニックにも勤務して、現在3つのクリニックで診療しています。

本日は、医師とはどういうものなのか、自分は医師に向いているのか、考えながら話を聞いていただければと思います。そして、あとでたくさん質問してください。よろしくお願いいたします。

朝倉先生:

続いて、みらい在宅クリニック理事長の沖田将人先生のご講演です。沖田先生は、桐蔭学園出身で、皆さんの先輩にあたります。1993年に桐蔭学園を卒業したのち、横浜市立大学医学部に入学し、医師の道を歩んでいらっしゃいます。

その過程に関して、これまでの苦労話をはじめ、さまざまなお話をいただけると思いますので、皆さん楽しみにしていてください。

沖田先生

沖田先生:

私は、桐蔭学園理数科の25期生です。将来は経営に携わりたいと考えていました。実を言うと成績はよいほうではなく、学年1,500人いるなかで成績はいつも800番台でした。しかし、物理だけは得意で、必ず学年の10番以内でした。得意なのは物理だけでしたが、受験だけでなく、人生において何か1つでも得意なものを持っていると、人が生きていくうえでものすごく力になります。大学受験で横浜市立大学の医学部に合格したことをきっかけに、医師としてのキャリアを始めることになりました。

研修医時代に、さまざまな科を回るなかで、格好良いと心惹かれた、心臓外科医の道に進むことを決めていました。そして、診療科のトップに憧れて、教授になりたいという野心を抱いていました。この夢を叶えるために、自ら飛び込んだのが、大阪にある国立循環器病研究センターです。

国立循環器病研究センターでは、レジデントとして朝6時から病棟回診を行い、8時から手術に入るという生活を送っていました。心臓手術後の患者さんには、人工呼吸器や点滴などの管理を行うことが必要不可欠で、真夜中でも眠らず術後管理を行いました。ハードな生活でしたが、充実した日々を過ごしていました。

センターでは、多くの尊敬する先生との出会いがあり、研修修了後に1日20例近くの心臓手術をしているインドの心臓外科病院への勤務の道などもご提案いただき、短期間見学に行きました。しかし、私は心臓外科医として研鑽が必要なときに経済的に余裕がありませんでした。医師といえども、給与は病院によりさまざまです。特に、レジデントの給料は決して高くありません。貯蓄もゼロの状態で、家庭の事情、さらには自分の外科医の能力としての限界も感じて、心臓外科医の道はあきらめよう!と決断しました。

インドから日本に帰ってからは、心にぽっかりと穴があいたようで、3か月ほど健診の仕事などのアルバイトをしながら生活していました。しかし、「やはりこれは違う」と感じ、母校である横浜市立大学の医局に戻ることを決心しました。横浜市立大学の医局の先生方は、温かく迎え入れてくれて、教授も「学んできた知識や経験を周りにフィードバックしなさい」と、関連病院である横浜市南部病院に私を配属してくださいました。

横浜市南部病院では、当時、手術を行うのは水曜日だけと決まっていましたが、その数少ない手術のほとんどを私に任せていただきました。いつか辞めるつもりではあったものの、安定した収入が得られるようになって生活が充実したことから、しばらくは手術や診療を続けていました。

やがて、私の下に後輩の医師が赴任してきました。そこで、後輩に経験を積ませてあげたいと思ったのですが、術者として指名されるのはいつも私でした。あるとき、私が助手となって後輩に術者を担当させようとしたら、上司から「沖田がやるように」と言われてしまったこともあります。いつかは辞めるはずの私が手術を任されるという状況に、次第に心苦しさを感じるようになった私は、退職を決意しました。私を配属してくださった医局の教授には、退職理由として「医療経営に挑戦したいと思います」と伝えました。

引き留められるだろうという予想に反して、教授は「よい目線だね。これからは医師も経営感覚を持たないとだめだよ」とおっしゃって、退局してアメリカでMBA(経営学修士)の学位を取るようアドバイスしてくださいました。

医療経営を志すなら、アメリカで開業したいと奮起していた私は、ハワイ大学のMBAコースを見学するためにアメリカへ渡りました。しかし、現地で働く医師の話を聞くなかで、開業に必要なビザを取得するための要件はとても厳しく、私にはその要件を満たすことは困難だと分かりました。そこで、いったんは医療経営の道を断念し、日本に帰国しました。

その後、帰国した私を心配した横浜市南部病院の院長が、「赤字で困っている有床診療所を黒字化させてみたらどうか」と電話でアドバイスをくださったことから、私は、有床診療所に勤めることになりました。

赴任した先の有床診療所は、朝9時から夜7時まで診療しているにもかかわらず、患者さんは1日に数名程度という状況でした。診療所が山の上にあり、高齢の患者さんがご自身の足で歩いて来るのが難しい環境だったからです。

そこで、私は、患者さんの家に訪問診療をすることに決めました。ご自宅を訪れると、患者さんは非常に喜んでくださいました。また、「医師が家まで来てくれる」という話が地域の方に広まるにつれて、患者さんが増えていきました。半年ほど経った頃には、当初の目的通り、診療所の経営を一気に黒字化させることができました。

沖田先生1

訪問診療を行うなかで、私にとって、その後の医師人生を決定づける患者さんとの出会いがありました。

その患者さんは、40代で、肝臓がんを患っていました。私が訪問診療に伺うと、末期の肝臓がんで腹水が溜まり、声を出すのも苦しいにもかかわらず、「親父、先生にお茶出して」と気遣ってくれました。どんなときも優しく接してくれ、年齢も近いその患者さんを、私は心の中で兄のように思っていました。

ある日、訪問診療に伺うと、患者さんの病状が急変していました。私を気遣い、いつも通りに振舞おうとして、「親父、先生にお茶出して」とおっしゃいましたが、その声は細くて震えていました。

その日、患者さんが私に「先生、あとどのくらい生きられるんですか」と問いかけてきたとき、私は答えずに逃げてしまおうかと一瞬迷いました。しかし、兄のように慕ってきた人だからこそ向き合わなくてはと思い、手を握って正直に病状を伝えました。

その日は、患者さんが亡くなる2日前でした。私が「なんにもしてあげられなかったですね」とつぶやいたとき、患者さんは、「何を言ってんだ、先生。俺の幸せは、沖田先生っていう先生に、最期に出会えたことだよ」と、励ましてくれたのです。そのとき、涙が止まらなかったことを、今でも鮮明に覚えています。

訪問診療で、患者さん一人ひとりと向き合い、安心して自宅で過ごせるように支えるという経験を通して、私は在宅医の道に進む決心をしました。私が理事長を務める、みらい在宅クリニックの医師たちには、「最期に出会えてよかったと言われる医師になってください」という言葉で、自分の経験から学んだことを伝えています。

私は、お世話になった院長や教授など、多くの方たちに導かれながら歩んできました。中高生の皆さんも、人と人とのつながりを大事にしながら、自分の夢を追いかけてもらえればと思います。

沖田先生の講演のあと、中高生の皆さんによるグループワークが行われました。テーマは、『高齢の方が安心して住める街とは?』です。

高齢化が進む日本では、病院に通うことが難しい患者さんや、家で過ごしたい患者さんを支える、「在宅医療」が欠かせません。その現状を踏まえて、トラオさん(92歳)とトメさん(88歳)というご夫婦が街にいると想定して、医師・行政・介護・地域住民など、それぞれの視点に立って、ご夫婦が安心して住める街について検討しました。

グループワーク

各グループには、医学生と研修医がファシリテーター役として参加し、議論を盛り上げました。

グループワーク1

グループワークのあとは、教室に4チームずつ集まって、各グループによる発表会が行われました。次のような、さまざまな意見が挙げられ、活発な意見発表となりました。

<医師の視点での意見>

  • 在宅医の人数を増やし、訪問診療を定期的に行う
  • 遠隔診療を導入する
  • 認知症を発見したら、早期に治療や生活指導を始める

<行政の視点での意見>

  • 認知症カフェなどの交流の場をつくる
  • 街自体をバリアフリーにする
  • 介護用ロボットを各家庭に配布する

<介護の視点での意見>

  • ケアマネージャーが感情面をケアして、介護ロボットが体への負担の大きな作業を行うなど、人とロボットとで役割分担する
  • ケアマネージャーと家族が緊密に連絡を取ってスケジュールを共有するなど、協力して介護を行う

<地域住民の視点での意見>

  • 地域住民同士が安否確認できるよう、回覧板などを欠かさない
  • 日頃から、地域の方と挨拶するなどのコミュニケーションを大切にする

ホワイトボード

発表会に参加した現役医師たちは、中高生たちが挙げた、既存の考え方にとらわれないアイディアに感心していました。また、発表内容だけでなく、プレゼンテーションの構成がしっかりしている点も素晴らしいという声が聞かれました。

加藤先生

加藤先生:

私は、25年以上前に桐蔭学園にお世話になり、横浜市立大学では、沖田先生の後輩にあたります。現在は、新横浜にある横浜労災病院で眼科医をしています。顕微鏡下手術が好きで、眼科医になりました。

朝倉先生が、大学時代のバスケットボール部の後輩という縁もあって、本会に参加したのですが、中高生の皆さんが本会に真剣に取り組む姿勢を見て、私自身、勉強になりました。

私は、教育や研究ではなく、臨床に携わってきました。医学部受験を考えている皆さんの疑問に、臨床医の立場から答えていきますので、このあとの個別相談の時間で、ぜひ質問しに来てください。

続いて、桐蔭学園出身の研修医1名と医学生5名による、座談会が行われました。

ひとりずつ自己紹介したあと、「桐蔭学園で学んで得たこと」や「医学部受験をするうえで役に立ったこと」など、それぞれの体験談や思い出が語られました。

桐蔭学園の特徴として、レッスン制(習熟度別クラス)が導入されたこと、塾講師の経験のある先生がそろっていること、放課後でも先生が個別質問に対応してくれることなど、さまざまな意見が挙がりました。

質疑応答

質疑応答では、中高生たちから、医師になりたいと思ったきっかけや、学生時代にやっておくべきことなど、医師に対する質問が投げかけられました。先輩医師が、それぞれの質問に丁寧に答えました。

個別相談会では、医師が中高生たちに実際の現場の様子を話したり、医学部受験に関する相談に応じたりしました。中高生たちは自由に歩いて、話を聞きたい先生のところへ行き、進路相談をしていました。さまざまな立場の医師に質問できる貴重な機会ということで、積極的に質問する中高生の姿が見受けられました。

司会の朝倉先生から、「家庭内介護、施設内介護、どちらが家族と本人にとって幸せか」というテーマで、小論文の添削指導の案内がありました。そのあと、本会についてのアンケートへの協力が呼びかけられました。

アンケートでは、本会に参加した中高生たちの率直な思いがつづられていました。「身近に医療関係の仕事に就いている人がいないので、普段聞けないような話を聞けて嬉しかった」「テレビや本では分からない医師の話を知ることができてよかった」など、医師の仕事を身近に感じられたという感想が寄せられました。そのほか、「信頼される医師になるために勉学を頑張りたい」「医師になることを諦めかけていたが、沖田先生や先輩たちの話を聞いて、もう一度頑張ってみようと思えた」といった、熱意に満ちたコメントもみられました。医師を目指す中高生たちにとって貴重な経験となったようです。

最後に、金城先生より閉会の挨拶があり、中高生の皆さんへのメッセージで締めくくられました。

金城先生1

金城先生:

本日は、中高生の皆さんにとっても意義深い時間だったと思いますが、医学生や研修医、医師にとっても学びの時間だったと思います。これからも、一緒に勉強したり、研究したりする機会が訪れます。私たちは、1人では生きていくことができませんので、やはり周囲の人と協力するにはどうしたらいいのか、いろいろなところで学んでいくことが大切です。

皆さんが大人になったとき、本会のような機会を活用して、自分自身の経験や知識を後輩たちに教えていただければと思います。

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