新潟県厚生農業協同組合連合会 上越総合病院は新潟県上越市で急性期医療の提供、医療従事者の教育に力を入れています。地域に求められる医療を提供し、地域の皆さんが安心して生活できるように地域発展にも貢献しています。同院の取り組みについて、病院長の篭島充先生にお話を伺いました。
当院は、1937年に上越病院として開院しました。開院の背景には、農村地域にも充実した医療を提供してほしいという、地域の方々の願いがありました。上越地域の医療機関にかかることが難しい方々が資金を出し合い、開院したのが当院です。
病院を利用する患者さんやご家族、地域の皆さんと同じ視点に立ち、心に寄り添った医療の提供を心がけています。
当院は、農村部を中心に、さまざまな事情でなかなか医療を受けられない方々に寄り添い、医療を提供してきました。2006年に現在の場所に新築移転し、2つの理念を持ち、日々の診療に取り組んでいます。なかでも、「医療を通じて上越地域の発展に貢献します」という理念に見合うように努力をしています。地方では高齢化や過疎化が進んでおり、地域の皆さんが健康で安心できる生活を送るためには、活気のある街づくりが重要になってくると思います。そのために、健康で安心して生活できる地域という基盤を作り、地域の皆さんがこの上越の地で元気に生活できるように貢献していきたいと思っています。
地域の皆さんに求められる医療を提供するために、診療科を充実させて、地域医療に貢献したいと考えています。困っている皆さん、弱い立場の皆さんを支えるという開院時の考え方は現在も受け継がれています。患者さんの幅広いニーズに応えるため、さまざまな診療科を擁しています。
また、患者さんの目線に立ち、患者さんの立場で考える医療の提供を重視していきたいと思っています。地域の医療機関と連携を取りながら、患者さんに満足していただけるように、医師の採用や医療の質の向上、心温まる接遇を追求していきます。
当院では断らない救急を目指し、地域の救急患者さんを受け入れ、救命救急に力を入れています。軽症の1次救急から集中治療を必要とする3次救急の患者さんまで、さまざまな病状の患者さんを幅広く受け入れています。たとえば、脳卒中の疑いで搬送された患者さんに対しても迅速に対応できるように、脳神経外科と神経内科が連携を取っています。そのほかでも、急性心筋梗塞に対する緊急心臓カテーテル治療や、さまざまな領域の緊急手術が可能な体制を整えています。
当院は研修機関の側面も持ち、今後の医療を担っていく、さまざまな職種の人材教育に力を入れています。たとえば臨床研修医に対して、定期的に国内外で臨床だけでなく医師の教育でも活躍している先生方をお招きして、教育レクチャーを開催しています。2018年度には、海外からローレンス・ティアニー先生、サンジェイ・セイント先生にお越しいただきました。上越の地にいながら、海外で活躍している先生方からレクチャーしていただくのは、素晴らしいことだと思います。また、院内の指導医たちも熱意を持って研修医一人ひとりに指導しています。医師以外にも、看護師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど、多くの職種で学生を受け入れ、積極的にその指導に関わっています。
研修医に充実した研修を提供するためには、指導医にも教育マインドを持ってほしいと思っています。その目的で、当院では、上越総合病院臨床研修指導医講習会を定期的に開催しています。研修医への指導はどのように進めるのか、どのような目標に向かって、どんな研修医を育てたいのか、いざ指導する立場になって迷うことがないように、指導医のスキルアップ(いわゆる faculty developme-nt)はきわめて重要です。
当院で実施する臨床研修指導医講習会は1泊2日の合宿方式で16時間以上の講習時間を設けて行います。厚生労働省の定める規程を満たしており、受講者には厚生労働省医政局長の修了証書が渡されます。2018年7月14日、15日に開催した*臨床研修指導医講習会では26名の方にご参加いただき、大変有意義な時間を共有できました。
*:7月14日(土)9:00~21:15(全員出席の情報交換会を含む)7月15日(日)8:40~17:00で実施
若手医師の活躍の場を幅広く設けて、充実した研修内容でお待ちしています。先輩医師だけでなく、看護師、事務スタッフなど多くのスタッフが若手医師の指導に熱心に取り組んでいます。診療科同士の垣根もなく、疑問に思ったことはすぐに先輩医師に聞ける環境になっています。上越の地でのびのびと医師としての技量を磨いていってほしいと思います。
日々の暮らしの中で、体調に不安を感じることはよくあることでしょう。また、通院中の皆さんは、治療を進めていくなかで困ったことに直面することもあると思います。そんなとき、当院のスタッフは皆さんの問題を解決するために一緒に考えます。患者さんと同じ立場に立って、職員一同が力を合わせてサポートしたいと思っています。お困りのことがあったらお気軽にご相談ください。
今の世の中は流動的で、変化が速く、求められる医療はどんどん変わってきます。私たちも、病院も、変化に応じて変わってゆくことを求められています。これらを危機ではなくチャンスと捉えて、チャレンジしていくことを忘れず、地域の皆さんの健康と発展に貢献できるように力を合わせていきましょう。求められる役割に一生懸命取り組むことは、とても尊いことです。私はそんな皆さんの姿をいつも見ています。
一方で、これからは皆さんが働きやすい環境を作ることも大切です。どの人にとっても、時間は貴重なものです。皆さんがもっと早く帰宅でき、自分の時間を持ち、ワークライフバランスを充実させて、満足感を得られるような職場環境にしていきたいと考えています。それが私の仕事です。これからも力を貸してください。そして、ともに進んでゆきましょう。