敗血症は、臓器障害を伴う重度の感染症で、世界で毎年約3000万人の患者さんが発生している病気です。乳児から高齢者まであらゆる年齢層の方がかかる可能性があり、発症後は非常に早く進行します。ところが、敗血症の認知度は高いとは言えず、予防や早期診断が難しい現状があります。このことを問題視した日本集中治療医学会・日本救急医学会・日本感染症学会の3学会は、日本敗血症連盟を結成し、合同記者会見においてその取り組みを発表しました。本記事では、記者会見の様子をレポートします。
小倉先生:
敗血症というと、「怖い病気かもしれないけどよく分からない」という感覚の方が多いかと思います。診断が遅れた分だけ命に関わってくるような一刻を争う病気ですが、一般診療の先生方でもすぐに敗血症だと判断することが難しいです。また、実際に敗血症だと判明しても適切な治療法を熟知していない先生が多いというのが現状です。
敗血症に関する正しい知識を一般の方にも理解していただき、予防や早期診断につなげていくために、敗血病という病気とその対策を広く知っていただきたいと考えています。
中川先生:
敗血症は、臓器障害を伴う重症感染症です。あらゆる感染症が原因で発症するため、誰でも発症する可能性があり、特に、乳児や高齢者、免疫力が低下している方は発症しやすいことが知られています。米国では1年あたり約75万人が敗血症に罹患し、そのうち約20万人が亡くなっています。言い換えると、敗血症にかかった患者さんのうち3~4人に1人が亡くなっており、救命できた場合にもさまざまな後遺症に悩まされる患者さんが少なくありません。
敗血症は、誰でも発症リスクのある一般的な疾患であるにもかかわらず、そのことが一般の方々はもちろん、医療従事者にもあまり認識されていません。このような認識のずれから、敗血症の診断の遅れや不適切な診療が起こっている可能性が考えられます。今回、こうした形で皆さんにお話をさせていただくことで、一般の方々は早期受診を、医療従事者は早期治療、早期回復に努めるという一連の流れを形作っていきたいと考えています。
栁原先生:
敗血症は、予防が可能な病気です。まずは原因である感染症の予防として、手洗いやうがいをすること、そしてワクチンを打つことが大切です。感染症学会では、敗血症予防や診断を手伝えるような資料も医療従事者向けに提供しています。
また、早期診断も非常に重要です。そこで、ぜひ覚えていただきたいことがquick SOFA(以下qSOFA)です。敗血症を疑うときには、「意識の変容」、「頻呼吸」、「血圧の低下」という3つの指標に着目します。3つの指標のうち、2つ以上該当すれば敗血症の疑いが強いと判断できます。qSOFAは集中治療室以外での使用を想定して作られました。一般の方にも、緊急時の判断材料として使っていただき、受診時に医師へqSOFAを参考に状況を伝えていただくことで、早期診断や迅速な治療につながる可能性があります。
舘田先生:
この度、敗血症の啓発と対策のために、日本集中治療医学会・日本救急医学会・日本感染症学会の3学会が連携して日本敗血症連盟を結成致しました。
日本敗血症連盟では、敗血症の予防・診断・治療・教育における積極的な推進、一般の方や医療従事者に向けた情報提供、そして敗血症による死亡者の減少を目標にしています。また、後遺症や合併症に苦しむ患者さんへのフォローや、社会復帰に貢献する活動も行っていきたいと考えています。
舘田先生:
毎年9月13日は、世界敗血症デー*です。世界敗血症デーに関連した取り組みとして、ホームページ(敗血症.com)による情報発信や市民公開講座、敗血症セミナーなどを行っていく予定です。
https://www.youtube.com/watch?v=vSAxd2YtNX0&feature=youtu.be
*世界敗血症デー…敗血症の啓発活動の一環として世界敗血症連盟(Global Sepsis Alliance:GSA)が定めた日。
舘田先生:
年に3回、3学会の学術集会の折に市民公開講座を開催予定です。市民の方々に、敗血症をより身近なものとして知っていただくことが目的です。
市民公開講座では、一般の方が気軽に聞きに来ていただけるようなテーマを設定し、実際に敗血症に関わった方を招いて、臨床現場におけるさまざまなエピソードをお話しいただきます。
次回は10月4日、東京国際フォーラムにて「敗血症ってどんな病気?なぜこわいの?」というテーマで開催します。(予約不要・入場無料)
西村先生:
敗血症は重症化すると救命が難しい病気ですが、1人でも多くの患者さんを救命し、患者さんが元通りの日常生活のレベルまで回復できるような取り組みをこれからも進めていきたいと思っています。
田中先生:
引き続き、敗血症を知っていただくための活動を行っていきます。まずは10月4日に市民公開講座を行いますのでぜひお越しください。
舘田先生:
敗血症の問題は、認知度が非常に低い一方で、高い死亡率を示しているということです。そのため、多くの方に正しく敗血症の病態を知っていただくことが非常に重要です。日本感染症学会としても、日本敗血症連盟の先生方と一緒に、効果的な予防と適切な治療について推進していきたいと考えています。
このようにして、3学会合同記者会見は終了しました。
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