インタビュー

生後3か月未満の赤ちゃんの発熱で注意すべき重症感染症

生後3か月未満の赤ちゃんの発熱で注意すべき重症感染症
橋本 祐至 先生

うさぴょんこどもクリニック 院長、千葉市立海浜病院 小児科 非常勤医師

橋本 祐至 先生

この記事の最終更新は2017年10月30日です。

熱はそもそも、ほとんどの原因がウイルス性の風邪や環境温(室温が高すぎる、着せすぎ)によるものであり、親御さんがまずは赤ちゃんの様子をしっかりと確認することが重要になります。しかし発熱は、ときに重篤な細菌感染症のサインである場合があります。

今回は、万が一罹患した場合に注意が必要な重症感染症について、千葉市立海浜病院小児科 橋本祐至先生にお話していただきました。

細菌感染症のなかでも、特に尿路感染症は3か月未満の発熱において最も多い疾患です。尿路感染症とはその名の通り尿路系を介した感染症であり、原因の大部分は腸内細菌、すなわち大腸菌です。おむつを使用しており、陰部に便が付着したからといって全員が尿路感染症をきたすわけではありませんが、感染症をきたしやすい1つの要素になっています。

陰部に尿を採取する袋を貼ったり、陰部から細いカテーテルを挿入して膀胱内の尿を直接採取したりして、尿検査を行い判断します。通常は尿中に白血球は認められませんが、尿路感染症を起こすと尿中に白血球がたくさん認められることで診断をすることができます。当院では尿中に細菌がいないかを顕微鏡で確認することもできます。

尿路感染症は単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症があり見極めに注意がいる

尿路感染症には単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症があります。複雑性尿路感染症は、膀胱尿管逆流現象(いったん膀胱に溜まった尿が尿管を通して腎臓に逆流する現象)や先天性の尿路奇形など、尿路感染症を引き起こしやすいリスク因子をもつ尿路感染症をさします。これは、リスク因子をもったお子さんが罹患するべくして罹患した尿路感染症といえます。

一方で、単純性尿路感染症は、上記のようなリスク因子のない尿路感染症で、たまたま陰部から逆行性に腎臓まで細菌が入り引き起こされた尿路感染症です。

複雑性尿路感染症は、単純性尿路感染症と比べて反復しやすいことが特徴です。尿路感染症と確定診断をした時点では、単純性か複雑性かを区別できないことも多いのですが、後々、精密検査をすることで、膀胱尿管逆流現象や尿路奇形の有無を確認でき、両者の区別が可能になります。

なお、単純性尿路感染症と複雑性尿路感染症のいずれの場合も抗菌薬による治療が用いられますが、複雑型尿路感染症は急性期の治療後に抗菌薬の少量予防内服や手術が必要な場合があります。

3か月未満の赤ちゃんの発熱のうち、5%程度は菌血症が原因とされています。菌血症とは、細菌が血液中に侵入した状態です。人の血液中は本来であれば無菌状態で、細菌が入るとさまざまな重い症状を引き起こします。なお敗血症とは、重篤な全身症状のある菌血症をさしますが、ご家庭ではほぼ同義と考えていただいて差し支えありません。

血液中に細菌が入るということは、細菌を全身にばらまくということでもあります。この延長として中枢神経にまで感染が波及したものが髄膜炎ですから、菌血症や敗血症に陥った場合、しっかりとした抗菌薬治療が必要です。

菌血症や敗血症の診断には、まず子どもから採血した血液を培養します。菌血症や敗血症の場合、多くは48時間以内に菌が育ってきます。この血液培養検査から、菌血症の有無を判断します。

また、3か月未満の赤ちゃんの発熱をきたす菌血症の原因菌として主なものには、母親の膣内にいるB群溶連菌、その他に大腸菌、リステリア菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などが挙げられます。なかでも近年、感染が多く報告されている原因菌は、妊婦の膣内に認められることがあるB群溶連菌による菌血症です。

こうした菌が血液を通って中枢神経に侵入すると後述する髄膜炎をきたすため、より迅速な治療が必要です。

髄膜炎は、大脳の表面にある髄膜という場所に細菌が感染した状態です。菌血症・敗血症よりも重症度が高く、通常、いきなり髄膜への感染症が起こることはまれで、菌血症・敗血症を経由して起こります。原因菌は上述した敗血症・菌血症と同じ菌となり、治療では確実に抗菌薬を髄膜(中枢神経内)に届かせなければいけないため、菌血症・敗血症よりも抗菌薬の投与量を多くしなければなりません。

RSウイルス感染症は2歳未満の子どもに感染すると呼吸障害を引き起こす疾患ですが、3か月未満の赤ちゃんの場合、呼吸苦などの症状が重く現れる傾向にあります。

RSウイルス感染の症状は発熱、咳嗽、鼻汁からはじまり、その後、呼吸がゼーゼーする(喘鳴)急性細気管支炎をきたします。3か月未満の子どもの場合、まれに顔全体をマスクで覆って呼吸を補助するような非侵襲的陽圧換気療法(ひしんしゅうてきようあつかんきりょうほう)、または気管挿管による人工呼吸器管理が必要な場合があります。

新生児ヘルペスウイルス感染症には、全身型、中枢神経型、皮膚型と3種類の病型があります。特に全身型は死亡例が多く、中枢型の場合は生命予後が良いものの後遺症が残るリスクが高いため、注意が必要な疾患です。

全身型のヘルペスウイルス感染症の多くは、生後1週間頃までに起こるタイプの疾患です。症状としては皮膚・眼・口などの水疱(水ぶくれ)が、多臓器(肺、肝臓、脳など)に播種し、状態が悪くなっていきます。繰り返しになりますが、全身型のヘルペスウイルス感染症は死亡率の高い重篤な疾患です。

中枢神経型のヘルペスウイルス感染症は、生後1~4週間頃に多くみられます。全身型のように多臓器不全に至るケースはなく、中枢神経だけが侵され、けいれんを繰り返すことが特徴です。中枢神経型のヘルペスウイルス感染症は全身型ヘルペスウイルス感染症に比べて死亡率は高くありませんが、後遺症を残す確率が非常に高い疾患ですので注意が必要です。

ヘルペスウイルス感染症は抗ウイルス薬で治療が可能ですが、早期段階から治療を行っても後遺症を残してしまうケースが残念ながら多いのが現状です。

敗血症や髄膜炎のような重症感染症を疑わせる状態で運ばれてくる赤ちゃんのなかに、ヒトパレコウイルス感染症の赤ちゃんがいることがあります。

ヒトパレコウイルス感染症(特に3型)は、新生児~生後3か月未満の赤ちゃんにウイルス血症やウイルス性の髄膜脳炎などを引き起こし、神経学的後遺症や死亡に至らしめる、近年注目を集めている非常にやっかいなウイルス感染症です。

ヒトパレコウイルス感染症の症状では発熱、頻脈、全身の網状チアノーゼ(皮膚が網目状になり青紫色状に変化すること)、発疹、手掌あるいは足の裏に紅斑(皮膚表面が赤くなること)、無呼吸が出現することが特徴です。

1~5のいずれの疾患も除外診断できているにもかかわらず赤ちゃんの容体が改善しない場合、詳しい検査をしてみた結果、ヒトパレコウイルス感染症であった場合があります。細菌感染ではないため、細菌培養検査では診断がつかず、ヒトパレコウイルス感染症を疑って検査をしないと診断がつきません。

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