
本記事では、敗血症のなかで最も重篤な状態である敗血症性ショックについて、ハーバード大学医学部外科学講座研究員の近藤豊先生にお話頂きました。
敗血症性ショックとは、日本救急医学会による定義では「臓器障害または臓器灌流異常をともなう敗血症のうち,適切な輸液負荷を行っても低血圧が持続する状態」とされています。
臓器障害を伴う敗血症は一般に重症敗血症と言われますので、簡単に言えば「血圧が下がった重症敗血症」となります。敗血症性ショックでは、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)と呼ばれる物質が放出され、人の血管の中の血管内皮細胞と呼ばれる細胞を傷つけます。その結果、血管内に微小血栓(ごくごく小さな血栓のこと)を作り、DIC(播種性血管内凝固症候群)と呼ばれる状態などに落ち入り多臓器障害や多臓器不全を起こすことになります。
敗血症性ショックでは様々な症状を引き起こします。具体的には尿量の減少や意識レベルの変化、皮膚の色が変わる、発熱などがあります。また、敗血症ショックの初期には「四肢が温かくなり、血圧が低くなる」という症状があります。これをWarm Shock(ウォームショック)と呼びます。
一酸化窒素などの血管拡張作用を持つ物質が産生されることと、心臓の拍出量が増加するためにこのような症状が起こります。その後、敗血症がさらに増悪した場合にはCold Shock(コールドショック)と呼ばれる状態になります。Cold Shock(コールドショック)の状態では逆に、血管が収縮し、四肢が冷たくなり、心拍出量は低下し、循環不全に陥ります。こうなると非常に重篤な状態です。
敗血症性ショックの治療は感染の制御に加え,早期に臓器灌流(臓器に向かう血液の流れのこと)異常を改善する必要があります。通常の敗血症とは異なりショックを伴っていることから、より多くの輸液が必要になります。
また昇圧薬を使用して十分に臓器に血流が届くようにします。さらに、敗血症と診断後1時間以内を目標として、血液培養検査の後に抗生物質の速やかな投与が必要となります。
その他、人工呼吸管理、血糖コントロール、栄養管理、ステロイド投与、免疫グロブリン投与、タンパク分解酵素阻害薬投与、急性血液浄化法などを検討します。これらの薬剤や治療は患者の容態に併せて選択されます。
通常の敗血症(重症とショックを除いたもの)と比較すると、敗血症性ショックの予後は非常に厳しいものとなります。
敗血症敗血症性ショック
死亡率低い高い
血圧低下無しあり
ICU入室不要なことが多い必要なことが多い
臓器障害有無は問わないあり
ステロイド投与不要必要な場合あり
昇圧薬投与不要必要
免疫グロブリン不要必要な場合あり
人工呼吸管理不要必要な場合あり
DIC治療不要必要な場合あり
*実際の治療では個人の症状や状態によります
敗血症性ショックにならないように、軽症の敗血症の時点で早期発見をして、早期治療をすることがとても大切です。皆様も十分気をつけましょう。
周辺で敗血症の実績がある医師
東京都立多摩総合医療センター 院長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、感染症内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、血管外科、頭頸部外科、精神神経科、総合診療科、病理診断科
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JR武蔵野線「西国分寺」南口 JR中央線も乗り入れ バス(約5分):総合医療センター(府中メディカルプラザ)行き、西府駅行き 総合医療センター(府中メディカルプラザ)下車 徒歩14分
順天堂大学大学院 医学研究科 救急・災害医学講座 主任教授
内科、血液内科、膠原病・リウマチ内科、外科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、肛門科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科
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