日本の交通事故による死傷者数は1年間でおよそ72万人(警察庁調べ。平成26年度統計)であり多くの人が遭遇するにも関わらず、意外にも交通事故に遭ったらどうしたら良いか知らない方も多いのではないでしょうか。交通事故では自分だけでなく、友人や家族はもちろん、時には面識のない人とも関わるため状況が複雑になるのが特徴です。また相手が重篤な状態になれば蘇生行為や救急搬送等の迅速な対応も要求されます。そのため交通事故のことをきちんと理解しておく必要があります。
交通事故に遭って、最初に確認すべきことは周囲の安全確認です。事故直後は気が動転してしまいがちですが、高速道路など周囲の状況によっては二次災害の危険性があるため、まずは車を安全なところに移動させます。次にやるべきことは傷病者の有無の確認です。まず自分の体を確認し大丈夫であれば周囲を見渡します。もしも負傷している方がいればすぐに「119」コールで救急車を呼びましょう。
よく交通事故の場合には「110」コールで警察を最初に呼ぶと思われがちですが、警察を最初に呼ぶのはあくまでも傷病者がいない場合です。何故なら救急車は場所や時間帯によっては到着までに時間がかかることがあるのに対し、交通事故による腹腔内出血、外傷性大動脈解離、急性硬膜外血腫などは迅速な治療が求められるからです。
交通事故による外傷の特徴として、最初は症状が軽いように見えますが時間が経つに連れて重症化するということがあります。つまり、軽症に見えて実は重症であったというケースもしばしばあるということです。
また、救急車や警察を待っている間も二次災害には十分気をつけなければなりません。もしも自分の身が大丈夫であれば、ハザードランプをつけて停止表示器材を置く・発煙筒を炊くなどの行為が必要な場合があります。
もしもあなたが歩道を歩いていて、偶然交通事故に遭遇したと仮定してみましょう。あなたは何かできそうですか? もしも交通事故の場面に遭遇した場合には、まずはご自身が安全な状況にいるかどうかを判断することが重要です。安全な場所でない・二次災害に巻き込まれる可能性があればその場所から速やかに距離を取ってください。安全が確認出来た後、傷病者が発生していると推定されれば救急車をコールしましょう。その後で警察にも電話をします。
ここでポイントですが、基本的に軽症であれば、事故を起こした方達はすぐに車を安全な場所へ動かし車外に歩いて出てくることがほとんどです。もしも事故を起こした車が動かない場合は重症である可能性が高いので、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。また実際の現場では傷病者がいるかどうか不明の場合も多いため、そのような場合には救急車をコールして問題ありません。
さらに通行人の目撃情報ですが、これも事故状況を把握したり原因を推定したりするのに役に立ちますので、警察へ可能な限り情報提供をするようにしましょう。
出血がひどい場合にはタオル等を用いた手圧迫が有効です。この際には自分に他者の血がつかないように注意しましょう。また骨折が疑われる場合にはできるだけ骨折部は動かさないようにします。多くの骨折は骨のズレが無ければ保存的に治療出来るからです。
また「事故の当事者たちが心肺停止状態の場合、車から救出して人工呼吸や胸骨圧迫などの心肺蘇生を実施した方が良いのか」という質問をよく聞きます。これは状況次第ではありますが、基本的に心肺停止となるような事故は大きな事故の場合が多く、車が炎上したり後続車が事故に巻き込まれるなどの二次災害の危険性が高いため、現場の安全が確保されている場合以外ではお勧めできません。できるだけ速やかに救急車を呼びましょう。