インタビュー

交通事故と慰謝料・示談金―意外と知らない交通事故のこと(3)

交通事故と慰謝料・示談金―意外と知らない交通事故のこと(3)
近藤 豊 先生

順天堂大学大学院 医学研究科 救急・災害医学講座 主任教授

近藤 豊 先生

この記事の最終更新は2015年08月16日です。

日本の交通事故による死傷者数は1年間でおよそ72万人(警察庁調べ。平成26年度統計)であり多くの人が遭遇するにも関わらず、意外にも交通事故に遭ったらどうしたら良いか知らない方も多いのではないでしょうか。交通事故では自分だけでなく、友人や家族はもちろん、時には面識のない人とも関わるため状況が複雑になるのが特徴です。また相手が重篤な状態になれば蘇生行為や救急搬送等の迅速な対応も要求されます。そのため交通事故のことをきちんと理解しておく必要があります。

交通事故でよく問題となるのが慰謝料や示談金などのお金に関することです。なお、慰謝料と示談金は同じものではありません。あくまでも精神的な苦痛に対する対価が慰謝料であり、示談金は交通事故被害者の全ての損害を被害者と加害者の双方が合意して金額にしたもののことです。

公益財団法人交通事故紛争処理センターには毎年19万件以上の交通事故に関するトラブルの相談が寄せられています。その理由は様々ですが、後遺障害が残ってしまった・保険のこと・休業補償・過失割合の問題などが中心です。

また時に、交通事故ではどちらが被害者でどちらが加害者かの判定が難しい場合もあります。なぜなら、事故を起こした両者ともが“自分は被害者だ”と思っている場合がしばしばあるからです。

そのため病院で交通事故に伴う疾患の診断書を発行してもらったとしても、そこに被害者と加害者に関する記載はありません。あくまでも病院は疾患に対する診断や治療などの医療行為を行う所なので、交通事故の責任の所在に関する記載は基本的にしないのです。ですから、病院の発行する診断書には「交通事故の発生した日、医療機関を受診した日」「診断名」「治療を要する期間」等の交通事故に対する客観的な情報と医療情報のみが記載されることになります。

交通事故証明書は病院ではなく警察で発行してもらうこととなりますが、警察への届出のない事故では交通事故証明書の発行はできませんので注意してください。
また、「交通事故は健康保険が使えない」という話をする人がいます。しかし、決してそのようなことはありません。交通事故でも健康保険を使うことが出来ます。詳しくは加入している保険の窓口に相談してください。

ここまで色々と交通事故のことを紹介してきましたが、当然ながら事故に遭わないこと、防止することが一番重要です。交通事故には十分注意しながら楽しい日常生活を送りましょう。

 

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