インタビュー

敗血症ってどんな病気?

敗血症ってどんな病気?
近藤 豊 先生

順天堂大学大学院 医学研究科 救急・災害医学講座 主任教授

近藤 豊 先生

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この記事の最終更新は2015年09月21日です。

敗血症という病気を聞いたことがある方はいても、具体的にどのような病気かご存知という方は少ないのではないでしょうか。今回は敗血症の概要とその原因・予防について、ハーバード大学医学部外科学講座研究員の近藤豊先生にお話頂きました。

皆様は敗血症という病気をご存知でしょうか? 簡単に言うと「全身症状を伴う感染症、あるいはその疑い」をまとめて敗血症と呼び、また英語では「Sepsis (セプシス)」と呼ばれています。この敗血症ですが、世界では約2700万人が罹患し、うち約800万人が死亡していると言われており、とても頻度の高い疾患です。もしかするとこの記事を読んでいる皆様のなかにも罹患した方がいらっしゃるかもしれません。
 

敗血症の原因は感染症です。感染症の原因として細菌はもちろん、ウイルス、寄生虫、真菌などが挙げられます。敗血症を発症しやすい人とそうでない人がいますが、敗血症を発症しやすい人は、糖尿病、悪性腫瘍、肝硬変腎不全、ステロイドや免疫抑制剤内服等のある方です。また近年注目されているのが高齢者であり、敗血症は高齢者に多く見られる病気となっています。

この理由として、加齢による免疫機能の低下と免疫応答に対する炎症反応の長期化(免疫機能が弱っているため、生体を防御する機構の使用時間が長くなり結果として体が疲れてしまいます)ことが挙げられます。

このため敗血症の予防には「微生物が身体に侵入するのを防ぐ」もしくは「身体に侵入した微生物に対する抵抗力をつける」のいずれかが重要となります。前者では手洗いやマスクの着用、後者では適度な運動、規則正しい生活、予防摂取を受けることなどが挙げられます。

敗血症の死亡率に関しては様々な報告があります。2001年にアメリカで発表された重症敗血症の死亡率は28.6%でした( Epidemiology of severe sepsis in the United States: Analysis of incidence, outcome, and associated costs of care, Crit Care Med, (2001)より)。

その後2007年に日本集中治療医学会Sepsis Registry委員会が実施した調査では、重症敗血症・敗血症性ショックの死亡率は、ICU(集中治療室)死亡率30.8%、28日死亡率36.4%、院内死亡率37.6%でした(日本集中治療医学会第1回Sepsis Registry調査 -2007年の重症敗血症および敗血症性ショックの診療結果報告-, 日本集中治療医学会雑誌, (2013)より) 。

なお、この調査では日本の41施設の病院が参加しており、305名の患者数が登録されています。またいずれも重篤な敗血症に限っていますので、広義の敗血症自体の罹患率はかなり高いものと推測されます。2015年時点での世界的な重症敗血症・敗血症性ショックの死亡率は20~30%くらいだと考えられています。

敗血症では様々な臓器障害を引き起こします。具体的には呼吸不全、凝固障害、肝機能障害、循環不全、中枢神経障害、腎機能障害などです。

私は特に最近、敗血症による中枢神経障害に注目しています。敗血症ショックに至った場合、脳に虚血性変化や出血などの異常所見(明らかにおかしな変化)を合併することが知られています。またせん妄(突如発生する精神機能障害。意識障害が起こり、頭が混乱状態になる)の合併率も高くなります。

近年では敗血症から回復した後のPICS(Post intensive Care Syndromeの略。“ピックス“と呼ばれています)の合併が社会問題となっています。PICSは敗血症などの重篤な状態から回復した際に、認知機能障害、筋力低下、PTSD心的外傷後ストレス障害)などを併発した症候群の総称です。

なおPICSは日本語で「集中治療後症候群」と訳されますが、まだまだ日本での認知度は低く、今後の啓蒙活動が必要であると考えられます。2016年度の日本版敗血症診療ガイドラインではこのPICSの項目が追加される予定です。

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