インタビュー

高齢者における尿路感染症(UTIs)について

高齢者における尿路感染症(UTIs)について
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任...

徳田 安春 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2015年10月12日です。

尿路感染症とは尿路(腎臓から体外までの、尿の通り道)における感染症の病気です。主な症状には以下の2点が挙げられます。

  • 排尿時に灼熱感(やけるような痛み)を伴う
  • 頻尿

ほとんどの尿路感染症の場合、細菌が原因です。そのため、医師は細菌に対して強い殺菌力を持つ抗菌薬での治療法を用います。

高齢者は介護福祉施設で尿路感染症を発病することが多いですが、尿路感染症の症状が見られない場合、検尿はあまり意味を持たないといわれています。また、この検査が必要のない治療に結びついてしまうと、逆にその治療は患者さんにとって有害となることもあります。

理由は以下の通りです。

高齢者の場合、たとえ尿路感染症の症状が見られなかったとしても、尿に細菌が含まれていることが多いです。これは介護施設においては、約半数もの高齢者に言えることです。

医師は、高齢者の患者さんにさらなる錯乱・興奮・転倒などの症状が見られると、尿検査を試行することが多々あります。検査結果には上記のとおり、多くのケースで細菌が含まれていることから、医師は抗菌薬を処方します。

しかしながら、尿に細菌が含まれていたとしても尿路感染に至っていない場合、抗菌薬の処方はこれらの症状の改善に意味を持ちません。なぜなら高齢者の錯乱・興奮・転倒が起こりうる原因は、他にも多数挙げられるからです。

抗菌薬を使用する際は、とくに高齢者の場合、副作用が生じます。副作用として主に挙げられるのは、発熱・発疹・吐き気・嘔吐・下痢・腱断裂・神経障害・腎不全です。

他にも膣カンジタ症やその他の重度の下痢や入院、最悪の場合死につながる恐れのある感染症も引き起こしかねません。

そのうえ、高齢者は他の薬を服用していることが多いため、抗菌薬との相互作用に関する危険性も考えられます。

必要のない抗菌薬での治療は患者さんにとって有益な結果をもたらしません。つまり、必要性がなければ、尿中の細菌に対して抗菌薬を使用するべきではないといえます。

抗菌薬には、人間にとって必要な細菌を殺したり、逆に薬物抵抗性(薬物が効かない)の細菌の繁殖を手伝ってしまったりすることがあります。薬物抵抗性の細菌は治療が難しく、治療費も高い感染症の発症を促してしまいます。また、治療のためといって医師が更に数種類の抗菌薬を投与すると、深刻な副作用のリスクも一層高めてしまう恐れがあります。

尿検査にかかる費用は大体80ドル(日本円で約9,500円)からです。抗菌薬による尿路感染症の治療は3ドル〜300ドル(日本円で約350〜36,000円)にのぼります。そのうえ、薬物抵抗性の感染症は、さらなる医師の診療費や高額の薬の処方、加えて看護費用がかかることとなります。

以下のような症状が新たに現れた、または悪化した際に検尿をお勧めします。

  • 排尿に伴う痛み
  • 尿に血液が混入している
  • 頻尿

また、熱がある、または血液検査で感染の可能性があると診断された場合も、尿検査を行うべきでしょう。しかし担当医師は、検査前に、患者さんが咳など他の感染症が原因となって起こる症状をもっていないかを確認することが必要です。

尿路感染症の症状が出ていない場合でも以下のような手術を将来的に行う場合、尿検査を行うべきでしょう。

読者の方々の家族の誰かが介護施設にいて、その方が尿路感染症にかかっていらっしゃる場合、以下の点についてケアチームとよく話し合ってください。

尿路感染症のリスクを減らすため、頻繁にかつ完全に排尿をすることが大切です。

  • トイレにこまめに連れて行き、用を足すのに充分な時間を与えてあげる
  • ベットの脇に飲み水をおき、水分補給をこまめにとるよう促してあげる

衛生を保つことは、感染の可能性を低下させるためにも重要です。

  • 女性の場合、お通じの後は、前から後ろに拭いてあげる
  • 頻繁におむつや、その他取り替えが必要なものを替えてあげる

介護施設のスタッフにほとんどの世話や介護を頼り切っている人もいます。特に以下の場合、お世話をする人は手洗いや消毒を心がけましょう。

  • 患者さんの部屋に入るとき
  • おむつ替えや傷の手当てなど、介護や処置をする前後
  • 患者さんの部屋を出る際

通常の場合、カテーテル使用後は早急に患者さんから外すことが望ましいです。カテーテルの使用は尿路感染症のリスクを高めてしまいます。カテーテルを使うのは以下の場合に限りましょう。

  • 排尿において障害がある
  • 重度の床ずれ
  • 死期が近く、カテーテルを使用した方が快適と感じる

※本記事は、徳田安春先生ご監修のもと、米ABIMによる “Choosing Wisely” 記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。

監修:小林裕貴、徳田安春先生

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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