RSウイルス感染症
概要
RSウイルス感染症とは、RSウイルスによって引き起こされる呼吸器の病気です。
RSウイルスは感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着した手指や物品を介した接触感染によって鼻や口からウイルスが入り込み、上気道から肺に感染します。
感染すると、発熱、鼻水や咳などの上気道症状がみられ、多くは軽症で済みますが、場合によっては肺に向かって感染が波及し、細気管支炎、肺炎へと進展することがあります。
RSウイルスはごく一般的なウイルスで、2歳までにほとんどの子どもが初感染するといわれています。大人を含め一生にわたって再感染を繰り返しますが、初感染時に症状が重くなりやすく、特に乳児期早期の子どもや、基礎疾患がある子どもなどは重症化しやすいため注意が必要です。
原因
RSウイルスはヒトからヒトに感染するウイルスで、その感染経路には“飛沫感染”と“接触感染”があります。
飛沫感染では感染している人の咳やくしゃみ、会話時に飛び散る飛沫(唾液)が鼻や目から入ることで感染します。接触感染ではウイルスが付着した手指や物品(手すり・ドアノブ・机・椅子・コップなど)を介した間接的な接触によって感染します。
なお、麻疹ウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルス、結核菌など一部のウイルス・細菌では空気感染(飛沫核感染)が認められていますが、RSウイルスにおける空気感染の報告はありません。
症状
RSウイルスに感染すると、典型的には4~6日の潜伏期間を経て、発熱、鼻水、咳などの症状が現れます。感染が上気道にとどまると、このような上気道症状のみで済みますが、下気道まで感染が広がると咳がひどくなる、喘鳴(呼吸時のヒューヒュー・ゼーゼー音)、呼吸困難などの下気道症状がみられ、細気管支炎や肺炎が起こることもあります。
RSウイルス感染症は初回感染時に症状が重くなりやすく、初感染の乳児においては約7割が上気道症状にとどまり、約3割が下気道症状に進展するといわれています。
特に低出生体重児や、心臓・肺・神経・筋肉などの病気がある、または免疫不全状態にある場合には重症化しやすくなります。また、生後1か月未満の乳児が感染した場合、無呼吸発作を起こして死につながってしまうこともあるため、このような子どもがいる家庭ではより注意が必要です。
一方、大人では軽いかぜのような感冒様症状(発熱・咳・鼻水・喉の痛みなど)のみで経過することがほとんどです。ただし、高齢者ではしばしば肺炎を起こします。
検査・診断
イムノクロマト法による抗原検出キットを用いた迅速検査で診断可能です。この検査では鼻の粘膜を綿棒で拭ったものを使用し、基本的には10分程度で結果が分かります。ただし、感度は100%ではないため、RSウイルスに感染していても陰性になる場合もあります。
また、保険適用となるのは1歳未満の乳児、入院中の患者、早産児、2歳以下の慢性肺疾患・先天性心疾患・ダウン症候群・免疫不全の子どもに限定されています。そのため、RSウイルス感染症の疑いがある全ての患者に迅速検査が行われるわけではありません。
治療
RSウイルス感染症に対する効果的な薬はありません。したがって、症状を和らげる対症療法が治療の基本となります。
具体的には、栄養や水分を補充するために点滴や胃チューブを用いた経管栄養、痰を除去するために去痰剤の投与などが行われます。
また、呼吸困難によってチアノーゼを起こしている場合には酸素投与、呼吸不全に陥っている重症例では人工呼吸器による治療が行われますが、このような場合でも通常は時間の経過とともに症状が軽快し、最終的には回復します。
予防
RSウイルスの感染を防ぐためには、マスクの着用や手洗い、子どもが日常的に触れる物品のこまめな消毒、人混みを避けるなどの基本的な感染予防対策が重要となります。
RSウイルス感染症に対するワクチンはありませんが、早産児や、2歳以下の慢性肺疾患・先天性心疾患・ダウン症候群・免疫不全の子どもは、予防薬であるパリビズマブという注射薬を用いることができます。
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