院長インタビュー

地域の方々には安心して生活してほしい――​​勤医協札幌西区病院の特色と取り組み

地域の方々には安心して生活してほしい――​​勤医協札幌西区病院の特色と取り組み
小市 健一 先生

公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協札幌西区病院 統括院長

小市 健一 先生

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公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協札幌西区病院(以下、勤医協札幌西区病院)は、札幌市西区における“地域の高齢者を支える病院”として、慢性期の療養と在宅復帰の支援に加え、在宅療養を支援する病院です。また、地域の人々が集う居場所づくりを目標として掲げるなど、医療を通じて地域のまちづくりにも積極的に取り組んでいます。今回は勤医協札幌西区病院の特色や取り組み、今後の展望について、統括院長の小市 健一(こいち けんいち)先生にお話を伺いました。

勤医協札幌西区病院 外観
勤医協札幌西区病院 外観

当院は、夜、急に具合が悪くなったときでも診てもらえる総合病院がほしいという地域の方々の声により、1986年に札幌市西区に開設されました。当院は2020年で34年目を迎え、急性期の患者さんを受け入れる病院から慢性期の患者さんを受け入れる病院へとシフトするなど、時代背景とともに機能を変化させてきました。現在は、より慢性期医療に注力できる環境を構築するために、耳鼻咽喉科、皮膚科、物忘れ外来以外の外来機能については近隣の勤医協西区ひだまりクリニックと連携を取り、在宅療養やリハビリテーションなどにおいて支援機能を高めることを意識して取り組んでいます。

当院は“地域の高齢者を支える病院”として、主に以下の三つに力を入れて取り組んでおります。

訪問診療の様子
訪問診療の様子

“地域の方々には、住み慣れた家あるいは土地で自分らしく療養してほしい”という思いから行っている取り組みのひとつが在宅療養支援です。当院は、機能強化型在宅療養支援病院として、在宅医療を行う体制の強化に努め、地域の方々が安心して暮らせるように整備しています。

外来での通院が困難な方に対しては、当院に設けている内科、耳鼻咽喉科、皮膚科の医師と看護師が患者さんのご自宅に訪問し診療を行っております。定期的かつ計画的に訪問診療を行うことで、病院側は患者さんの様子を把握することができますし、患者さんにとっても少しは安心して生活を送ることができるようになるのではないでしょうか。もちろん夜間や休日の診療にも対応しており、時間外休日の当番医師の配置、そして訪問看護ステーションなどと協力し、24時間体制で在宅医療を提供しています。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

当院で強化している取り組みのひとつとして挙げられるのが、認知症の患者さんに対するケアおよび多職種協働におけるコーディネート機能の充実です。入院から日常生活に復帰するまでの一貫した支援に取り組んでいるだけでなく、日本認知症学会が認定する認知症専門医による“もの忘れ外来”を設置し、認知症専門医や認知症サポート医、日本看護協会が認定する認知症看護認定看護師、医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)などがチームで対応する体制を取っています。 “患者さんにとってどのような認知症ケアがよいのか”を常に考え、患者さん一人ひとりに適したケアを提供できるよう努めています。

また、ご高齢の方の中には誤嚥性肺炎を患っている方も多く、その予防はとても重要です。そのため、 当院は “嚥下に強い病院” を目指し、当院の耳鼻咽喉科医と近隣の勤医協札幌にしく歯科診療所の歯科医、さらには当院の言語聴覚士が連携して、嚥下の評価と嚥下機能低下の原因に合わせた訓練の提供に取り組んでいます。

当院では、これからも患者さんの入院から生活復帰までを一貫して支援すべく、よりいっそう、地域の多職種協働におけるコーディネート機能の充実を図る所存です。

当院では“誰もが安心して健康で住み続けられるまちづくりをすすめたい”との思いから、どのような環境の方でも病院が受診できるようにさまざまな取り組みを行っています。

一つ目の取り組みとしては、“差額ベッド料” がないことと、医療費の減額または免除を行う“無料・低額診療”を第二種社会福祉事業の一環で実施しています。経済的な理由から病院を受診できない方も安心して生活していただくために、まず健康の維持や治療と生活環境の回復を始めることが大切だと考えているからです。

二つ目の取り組みとしては、12,000人を超える “札幌西・手稲健康友の会”による活動です(2020年3月時点)。さまざまなボランティア活動を中心としており、会員の皆さんは健康づくりや囲碁、絵手紙など地域でサークル活動などを行っています。ほかにも、西区の山の手会館を会場に、食堂やこども塾などを開催している“みんなの食堂ヤッホー三角山”というボランティアもしています。特に、“みんなの食堂ヤッホー三角山”はとても好評で、子どもから大人、高齢の方まで触れ合える地域の居場所づくりにつなげたいと考えています。

生活が営まれる地域、そしてその地域に住まう方々が、健康で長生きしたいと思えるようなまちをつくりあげること。そんな“誰もが安心して健康で住み続けられるまちづくり”は、当院と会員の皆さんとの共同の営みとなっており、引き続き共に取り組んでいきます。

みんなの食堂ヤッホー三角山
みんなの食堂ヤッホー三角山

前述した“札幌西・手稲健康友の会”の皆さんが展開する地域の方々の居場所を作る活動は、地域の医療機関と地域が一体化したものです。地域のまちづくりを支える立場の当院もまた、地域の方々によって支えられ成り立っております。当院は今までも地域の活動や取り組みを共にしてきました。これからは、今まで以上に積極的に地域に出向き、居場所づくりや共有スペースなどを一緒に創造するなど、コミュニティーの拠点づくりの一翼を担っていきたいと思います。そのために当院では、地域で働く各事業所の皆さんや地域で暮らし続ける住民の方々と、“支える、支援する”から“支え合う”関係を目指して共に尽力していきます。

小市先生

超高齢社会における慢性期医療は、これからの地域での暮らしを支えていくためにその役割はますます大きくなっていくでしょう。そして、格差と貧困が拡大するなかで、地域の方々にとって、この地域が安心して住み続けられるまちであるようにと願っています。そのために、当院ではこれからも病院として医療を提供するという役割だけでなく、もっとも困難な方々へ思いを寄せ、地域の活動にも積極的に協力をしていきたいと思います。

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  • 公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協札幌西区病院 統括院長

    小市 健一 先生

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