手根管症候群とは、手根管(手首あたりにあり、正中神経や指を動かすための腱・腱鞘が通るトンネルのような部分)の中で正中神経が圧迫されることにより、指にしびれや痛みなどの症状が現れる疾患です。
しびれや痛みは人差し指と中指から始まり、最終的には親指から薬指にかけて症状が現れることが一般的で、手を振る、指を曲げ伸ばすといった動作をするとしびれや痛みが軽減されるという特徴もあります。さらに、症状が進むと親指と人差し指をくっつけて丸をつくれなくなったり、細かい作業がしづらくなったりします。
ここでは、手根管症候群の検査方法や治療法について解説します。手根管症候群の治療では、重症度により治療法が異なるため、詳しく見ていきましょう。
手根管症候群の検査・診断では、ティネル様サインとファレンテストが主な基準となります。
まず、ティネル様サインでは手首を打腱器というハンマー状の器具でたたきます。この際、しびれを感じ、痛みが指先に響くと陽性となります。また、ファレンテストでは手首を直角に曲げ、手の甲を合わせたままにした際に、1分以内にしびれや痛みが悪化するかどうかを見ます。このテストで症状が悪化した場合は陽性となります。
さらに、親指の付け根の筋力が低下していないか、筋肉が萎縮していないかを診たり、筋電図検査によって正中神経の伝達速度を測定したりするほか、腫瘤(しこりのようなもの)の存在が疑われる場合は、MRIやエコーによる画像検査が必要となることもあります。
治療においてまず大切なことは、手首を安静にすることです。場合によってはシーネ固定(添え木をして固定すること)を行うこともありますが、自身でも運動や仕事などで手首を使いすぎないように注意するとよいでしょう。
また、ビタミン剤(ビタミンB12)や消炎鎮痛剤といった内服薬や外用薬が処方されることもあります。さらに、痛みがあるときにはブロック注射が行われることもあります。ブロック注射とは、痛む場所の神経やその近くに局所麻酔薬を注射して神経を破壊したり、一時的に神経の機能を止めたりすることで痛みを緩和する方法です。
そのほか、腱鞘炎(腱鞘の炎症)を緩和するために、腱鞘内にステロイドホルモンを注射することもあります。
安静や薬物療法でも症状が緩和されない場合やしびれや痛みが強い場合、親指の付け根に強い麻痺がある場合、細かい物がつかみづらい場合、腫瘤がある場合などは、手術が検討されることがあります。
手術では神経の圧迫を軽減するために手根管を解放するほか、腫瘤や腫瘍が原因となっている場合はその部分の切除を行います。以前は手のひらから前腕にかけて大きく切開して手術を行っていましたが、最近では内視鏡を使った手術が一般的となっているため、局所麻酔をして手首あたりに縦に2cm程度メスを入れ、手根管を解放する方法を取ります。手術にかかる時間も30分程度と比較的短時間で済みます。
ただし、手術後はすぐに痛みが取れますが、しびれが解消されるまでには数か月かかることがあるほか、完全に解消されない場合もあります。また、術後1か月程度は手首の痛みが続くこともあります。
手根管症候群は、手根管の中で正中神経が圧迫されることにより指にしびれや痛みの症状が現れる疾患です。症状が軽い場合は手首の安静、ビタミン剤や消炎鎮痛剤の服用などで改善されますが、ブロック注射やステロイドホルモン注射が行われることもあります。
さらに、それらの治療で症状が改善されない場合、しびれや痛みが強い場合、親指の付け根に強い麻痺があるといった場合は手術が検討されることもあります。このように手根管症候群は症状によって治療法が異なるため、できるだけ早期かつ症状が軽いうちに治療を受けられるとよいでしょう。治療に関して不明点がある場合は、担当医に相談してみましょう。
流山中央病院 CEO、せれの整形外科クリニック柏の葉 院長
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