手根管症候群は、手のひらの大部分の感覚をつかさどる正中神経(せいちゅうしんけい)が圧迫されて指先がしびれる病気です。悪化すると物をつまむ動作ができなくなってしまいます。手根管症候群について、日本手外科学会の認定手外科専門医でもある、JR東京総合病院整形外科部長の三浦俊樹先生にお話をうかがいました。
手のひらの付け根には、手首の骨と靭帯(じんたい)に囲まれた手根管というトンネルがあり、この中を複数の腱(けん)や正中神経などが通っています。正中神経は親指から薬指の親指側にかけての感覚や、親指の動きなどを司る神経です。手根管の中を通る腱をおおっている膜などが炎症を起こして腫れ、正中神経が圧迫されると指にしびれが起こります。これが手根管症候群です。
正中神経が司っている指、つまり小指以外の指先にジンジンするようなしびれを感じ、特に中指に顕著に現れます。就寝中、手根管の内側で腱の膜にむくみが生じて、明け方にしびれることが特徴です。また、正中神経は筋肉を動かす命令を出しているため、進行すると物を掴んだりつまんだりするような、親指とほかの指を向かい合わせにする動作(対立運動)が難しくなります。
手根管症候群は女性に多く見られます。料理をするときに中華鍋やフライパンを振るなど、手根管を圧迫する動作をすると症状が現れやすいのも特徴です。
手根管症候群の診断に用いるテストとして、ティネル様サインとファーレンテストというものがあります。手首の手のひら側を打腱器という専用の器具で叩くとしびれ、痛みが指先に響きます。これをティネル様サイン陽性といいます。また、ファーレンテストでは、身体の前で両手の甲を合わせて1分間その状態を保つあいだにしびれを感じたり、そのしびれ感が強くなる場合は、手根管症候群が疑われます。
また、手や指のしびれという症状から、脳や脊椎の病気を心配される方もおられます。たしかにそういった別の病気でも手指のしびれが起こる可能性がありますが、手外科専門医は患者さんの症状について神経の分布にそって所見をとりますので、その症状が末梢神経の範囲で説明がつくものなのかどうかを細かくチェックします。脳など中枢神経系によって起こるしびれは割合としては少ないですが、患者さんの症状がどちらによるものなのかを診断して振り分けることも手外科専門医の役割のひとつです。
治療方法は装具による手首の固定が基本です。自転車のハンドルを握るような、手首を返す(手の甲の側に反る)姿勢を長時間続けると神経が圧迫されます。軽症のうちはこのような姿勢を避けるだけでも、炎症がおさまる可能性がありますので、約2ヶ月をめどに装具による固定を行います。逆に、1〜2ヶ月のうちに改善がみられない場合は、それ以上長期間にわたって続けても効果が期待できません。そのような場合は次のステップに進む必要があります。
次のステップは注射による薬物治療です。手根管の中にステロイド薬を直接注射します。多くの方は1回~数回のステロイド注射と手首の安静で症状が治まりますが、再発を繰り返す場合あるいは1年以上にわたり症状が続いたり進行している場合には手術も検討します。
現在では内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術や、小さく切開して行なう直視下手根管開放術があり、従来のように約10cmにわたって大きく切開して手術をする必要はなくなっています。これは術前の検査や診断によって、神経の圧迫がもっとも強い部分がはっきり分かるようになったため、除圧(神経を圧迫している原因を取り除くこと)のために必要な切開の範囲が、かなり小さくて済むようになっているからです。このような術式はミニオープンと呼ばれます。
内視鏡を使う場合でも、内視鏡を入れるために小さく切開する必要があるため、その点では直視下での手術と大差ないところまできています。ただし、切開する場所には違いがあります。直視下の場合は手のひらに傷ができるという点で、内視鏡の方に優位性があるとみることができます。その一方で、内視鏡下では直視下に比べて視野が十分確保できないために、ごくまれに他の部分を傷つけてしまうことがあります。直視下での手術ではこのようなことがほとんどないため、安全性では有利であるといえます。いずれにせよ、治療成績そのものは同等であり、特に差があるものではありません。
JR東京総合病院 整形外科 部長
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右手中指の痺れ
半年以上痺れが続いていて薬を服用しても改善みられないなら手術をおすすめしますと言われました。痺れが有り曲げ伸ばしした時の痛みも有ります、実際に手術した人がいて手術後も腫れ、浮腫の出現を間近にみてるので手術する事に不安が有ります
手指を時々麻痺することがある
相談の対象者は友人の母親となります。マカオに在住します。 2018年10月26日 手術を受けました 2019年5月まで 手指を時々麻痺することがあります 2019年5月初香港に診断を受けたことがあります、手根管症候群「Carpal tunnel syndrome」だと報告しました。
身体のあちこちの痛みや身体の怠さ(疲れ)
自分の場合は、いろんな不調を持つ為、次から次に相談すみません。 ※もう1〜2年くらい経つと思いますが、身体のあちこちの痛みが気になります。 特に両手と両足の痛みが目立っています。 ここ最近は右手の痛みや痺れです。 これは携帯を触るとすぐにそうなります。 何と言いますか、私の場合は本当に少し触っただけでかなり痛むんです。 そして、ここ最近は痺れが出てきました。 携帯やパソコンの電波の影響があるとは思いますが、触り過ぎというか、本当に一瞬触る程度ですぐに痛みと痺れがでます。 その具合もかなりのものです。 最初は携帯やパソコンを触る手の指のみが痛かったのに、ここ最近は手の全体まで影響しています。 左手も右手よりはマシですが、痛いし痺れもあります。 ずっと前から特に手足の先?が痛くて、整形外科に行ったのですが、リウマチではありませんでした。 しかし、つい最近いきなり右足の太ももがズキーンと急に痛み出し、すぐにそれが治るも、また少しするとズキーンと痛む時が一瞬だけあり、時々左足の甲もそうなります。 太ももの方は前も似た症状が起こり、左足の甲も時々ズキズキというか、痛いというか、突然そうなるんです。 でも、歩けない!って程までの痛みではありません。 関節?が痛むと思うのですが、その原因がよくわからないんです。 身体も常に怠いし、疲れもとれないし、炭酸みたいに全身の中がジャワ〜とした感じがし、それがたまに胸の中に感じたりもあります。 これは内臓から来ることもあるのでしょうか。 後、次から次に大変失礼ながら、小学校時代、友達と公園で遊んでいたら、突然右足だったと思うのですか、歩くのが困難なくらい痛くなりました。 友達にも肩を借りてゆっくりと家まで送ってもらった状況で、その時は右足の甲が赤く腫れていました。 とはいえ、遊んでいた時に捻挫してしまった/高い所から落ちた/何処かにぶつけたなどの記憶が無くて、これも内臓からだったのでしょうか。 (※↑恐らく右足だったような…。昔のことなのでどちらの足だったかはうる覚えなのですが…。)
神経や骨の痛みと薬指の麻痺など
半年前に、3.4.5.の指を骨折した際のギブスの循環不全を起こしました。 未だ末梢神経症状、手根管神経症状、正中神経症状、尺骨神経症状と、手首の痛み、手が床に付けない、手首の骨が痛い、薬指だけが痛くて伸ばせない、手の中心や親指の奥が痛い、物がつまめない、中指を曲げると手首が痛いなどなど、左手に力も入らずさまざまな症状がずっと続いています。 が、手術はせず保存療法でと、メチコバールや葛根湯を処方してもらい、5か月目に入りリハビリを開始したところ、病状が悪化、痛み止めの注射(ステロイドではなくキシロカイン)を打ちました。 現在整形外科のみ受診していますが 不安でたまりません。 他の科や他の病院で診てもらいたいですがどんな所に行けば良いでしょうか? 大学病院とかが良いのでしょうか? ちなみに今は整形外科の手外科です。 よろしくお願いします。
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