インタビュー

手の外科とは

手の外科とは
三浦 俊樹 先生

JR東京総合病院 整形外科 部長

三浦 俊樹 先生

この記事の最終更新は2015年10月25日です。

皆さんは「手の外科」という専門の診療科があることをご存知でしょうか。事故で切断した指をつなぐなど特殊なケースばかりではなく、高齢化にともなって手の病気を抱える方の割合が増えているのだといいます。日本手外科学会の認定手外科専門医でもある、JR東京総合病院整形外科部長の三浦俊樹先生にお話をうかがいました。

一般に「手の外科」とも呼ばれる手外科は、手の疾患・障害に対する専門の診療科です。指や手のさまざまなケガや病気の治療を行っています。その成り立ちとしては当初、外傷を中心として扱っており、たとえば切断された指を再接合するマイクロサージャリーなどの治療から発展・発達した経緯があります。

しかし近年では、手外科が扱う領域が大きく変わりつつあります。特に日本では高齢化の進展にともない、加齢による手の疾患を抱える患者さんの割合が高くなっています。外傷中心の治療から、一般的な疾病・疾患の治療へ比重が移行しているという特徴があります。

その一方で、手の外科という診療科は、その存在が一般生活者の皆さんにまだ認知されていないという面があります。たとえば、腱鞘炎(けんしょうえん)という病気の名前は広く知られていますが、その原因や治療について正しく認識されているとはいえません。必ずしも手指を酷使することだけが原因であるとは限りませんし、安静にしていても長期間にわたって症状が改善しないこともしばしばあります。

このような治りが悪い場合には、さらに踏み込んだ治療を行なう専門医が必要になるのですが、手の外科という診療科の存在がまだまだ認知されていないため、適切な治療を受けていただくためにも、まず一般の方に広く知っていただくということが必要であると考えます。「手の外科」の専門医をお探しの方には、日本手外科学会のホームページに掲載されている「手外科専門医名簿」が参考になるかもしれません。
(参考:日本手外科学会のホームページ「手外科専門医名簿」

手は、非常に細かい作業を行なう機能が必要とされる器官であり、その中に骨・腱・筋肉・神経・関節という多くの構造物が複雑に入り組んでいます。その構造に精通していなければ、機能を再建することもできませんし、たとえば手術の中で別の部分を傷つけてしまい、結果として障害を残してしまうこともありえます。このため、治療には手の構造を熟知した専門医が必要とされるのです。

手の病気には、実はたくさんの種類があります。ひと口に「手首が痛い」と言っても、その原因となる疾患はさまざまであり、膝関節や股関節など他の関節と比べても種類が多いという特徴があります。そういった意味でも、専門医でなければ原因となる疾患を特定するのは難しいといえます。

しかしながら、手外科専門医といえども未だ解決できない課題もあります。患者さんは痛みなどの症状が解消するだけでなく、手の機能が通常の状態に戻ることを望まれるでしょう。現在の医療技術でそれが100%実現できない場合はもちろんあるのですが、それでも治療の選択肢は増えてきています。できるだけ理想の状態に近づけていくためには、最新の技術や情報に精通しているという専門性が必要であると考えます。

「手外科専門医」は、整形外科または形成外科専門医の中の手外科診断・治療に関するエキスパートです。

  • 日本整形外科学会または日本形成外科学会に入会し、6年間の研修を受け、整形外科または形成外科の専門医試験に合格しています。
  • 日本手外科学会に入会し、5年以上手の外科に関する研修を受け、手の外科専門医試験に合格しています。
  • 学会作成の研修カリキュラムに沿った、通算5年以上手外科に関する研修期間を有すること。
  • 日本手外科学会認定研修施設で通算3年以上の研修期間を有すること。
  • 手外科すべての分野の病気や外傷(ケガ)について、学会で定められた基準を満たした診断・治療に携わっていること。
  • 手外科関係の学会で発表し、学術専門雑誌に論文として発表した経験があること
  • 筆記試験:知識と判断力を審査します。
  • 面接試験:専門医として患者さんに適切に対応できるかどうか、また自らが執刀した手術症例について技量を判断します。

専門医資格を継続するためには、日本手外科学会により定められた研修教育を受けて、最新の医学を理解し、技術の研鑽を継続することを義務付けられています。特に、過去5年間に行った手術症例の提出を義務付け、手術技術の維持、向上が行われていることを確認することになっています。

一般社団法人日本手外科学会ホームページより抜粋)

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