インタビュー

指の変形関節症

指の変形関節症
三浦 俊樹 先生

JR東京総合病院 整形外科 部長

三浦 俊樹 先生

変形関節症は、身体の中のいろいろな関節で起こる病気として知られています。手指の関節に不具合が生じると、日常生活でちょっとした細かい作業にも支障をきたすため、膝関節や股関節などの場合とはまた違った不自由さがあります。高齢化にともなって増えている指の変形関節症について、日本手外科学会の認定手外科専門医でもあるJR東京総合病院整形外科部長の三浦俊樹先生にお話をうかがいました。

指の変形関節症とは

手の指の変形性関節症では、指関節の骨をおおう軟骨がすり減って、指に痛みや変形を生じます。膝関節や股関節などで加齢にともなって起こる変形関節症と基本的には同じことが起こっているといえます。
指先から数えて1番目の関節に生じるものをヘバーデン結節、2番目の関節に生じるものをブシャール結節、親指のつけ根の関節(CM関節)に生じるものを母指CM関節症といいます。

  • ヘバーデン結節:DIP関節(遠位指節間関節)に生じる
  • ブシャール結節:PIP関節(近位指節間関節)に生じる
  • 母指CM関節症:CM関節(手根中手関節)に生じる

手指の病気はいずれも女性に多い病気です。進行することが多いので、症状が軽いうちに受診して対処することが大切です。

指の変形関節症の症状

ヘバーデン結節とブシャール結節の病態は、ほぼ同じです。初期には、物をつかんだりするときに痛みがありますが、進行すると指を動かさなくても痛みを覚えるようになります。軟骨の摩耗が進むと関節の周囲に骨棘(こつきょく)と呼ばれる突起ができて、関節が太くなったように見えることがあります。関節部分に粘液がたまる場合もあり、これをミューカスシスト(粘液嚢腫)と呼びます。X線検査で診断できますが、関節リウマチと区別をつけるために血液検査なども行います。

母指CM関節症は、40代以降の女性に多い病気です。親指のつけ根の関節(CM関節)に痛みがあり、タオルを絞る、ドアノブを回すという動作がつらくなります。亜脱臼(あだっきゅう・関節が外れかかった状態)を起こしやすく、絞る・つまむ・回すなどの動作が困難になります。

保存的治療

ヘバーデン結節では患部の固定が基本です。テーピングで動きを制限して、なるべく使わないようにします。ブシャール結節の場合には第二関節が固まってしまうと日常の動作に支障をきたすため、入浴中に手を握ったり開いたりする動きを無理のない範囲で行います。いずれの場合も手指を温めて血行をよくすることが大切です。強い痛みがある場合は、非ステロイド性消炎鎮痛薬で痛みを抑えることもあります。母指CM関節症では、親指を少し広げた状態で他の指と対立位に保つために「対立装具」というものを装着します。

テーピングや対立装具の使用を続けると、だんだん関節が安定して痛みが治まってきます。しかし装具で固定しても長期間にわたり痛みが続く場合は、手術を検討します。

指の変形関節症の手術

ヘバーデン結節とブシャール結節は、手の外科専門医といえども、完全に解決できない疾患のひとつです。変形関節症の治療において、膝関節や股関節では人工股関節が非常にメリットのある有効な選択肢のひとつとなっていますが、指の関節に使える人工股関節の開発はまだ十分進んでいません。関節の大きさが小さく、その周囲に複雑な構造物が密集していることが要因となっています。そのため、ヘバーデン結節とブシャール結節の手術では、関節を固定することによって機能に制限が生じてしまう部分があります。ヘバーデン結節の関節固定術は指関節周囲にできた骨棘を削り、指先の二本の骨(末節骨と中節骨)の中央に穴を開けてピンを刺し、ワイヤーを通して関節を固定します。第一関節は動かなくなりますが、使いやすい角度で固定すれば生活上の不自由はあまりありません。

固定する角度は人差し指や中指の場合、つまむ動作がしやすいように屈曲を少なめにします。薬指・小指の場合は握る動作がしやすいように、屈曲は大きめになります。これを機能肢位(きのうしい)といいます。また、ブシャール結節の場合には関節を固定してしまうと日常動作に不便を生じるため、関節固定術を行う場合は慎重に検討する必要があります。
母指CM関節症の場合は関節固定術のほか、骨を取って空洞を作る切除関節形成術によって、ある程度関節の可動性を残した擬似的な関節を作る方法があります。関節の動きに制限が生じるため、患者さんの生活の中で優先度の高い動きができるよう、あるいは利き手か非利き手かといったことを考慮して、患者さんにとって最善の治療方法を決定していきます。