編集部記事

手根管症候群の原因とは? ~多くは不明だが女性ホルモンや透析、糖尿病が関係していることも~

手根管症候群の原因とは? ~多くは不明だが女性ホルモンや透析、糖尿病が関係していることも~
藤尾 圭司 先生

おおさかグローバル整形外科病院 院長

藤尾 圭司 先生

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手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)とは、手首の近くにある手根管というトンネルのような部位の中で正中神経が圧迫されることで指のしびれや痛み、手のこわばりなどの症状が現れる病気です。

妊娠中や出産期の女性、更年期の女性、手を使いすぎている人、人工透析を行っている人などが発症しやすいとされていますが、多くは原因不明といわれています。ただ、発症しやすい人の特徴や原因として考えられることはいくつかあるため、ここでは手根管症候群の原因について詳しく解説します。

手根管とは手首あたりにあるトンネルのような部分で、手根骨と横手根靱帯(おうしゅこんじんたい)(屈筋支帯)という部位に囲まれており、トンネルの中には正中神経と滑液腱鞘(かつえきけんしょう)を伴う9本の腱が通っています。

手根管症候群の根本的な原因は正中神経が圧迫されることです。正中神経は親指から薬指の親指側半分までの手のひら側の感覚につながる神経で、親指の付け根の筋肉(母指球)につながっています。そのため、正中神経が圧迫されると親指から薬指の親指側半分までにしびれや痛みが生じたり、親指の付け根の筋肉が痩せて細かい作業ができなくなったりします。

手根管症候群の多くが原因不明(特発性)とされていますが、女性ホルモンの乱れや特定の病気が関連することもあるため詳しく解説します。

妊娠中や出産期の女性、更年期の女性に発症することが多いことから、女性ホルモンの乱れが原因の1つだと考えられています。この場合、女性ホルモンが乱れることで腱鞘がむくみ、手根管の内部からの圧力が上がって正中神経が圧迫され、扁平(へんぺい)になって症状が現れるとされています。

先端巨大症(成長ホルモン産生下垂体腺腫)とは、ホルモンを分泌する下垂体という組織に腫瘍(しゅよう)ができることで成長ホルモンの分泌に異常が起き、手足やあご、おでこなどが大きくなる病気です。

先端巨大症を発症すると手の骨や軟部組織が大きくなるため、手根管が狭くなって正中神経が圧迫されて手根管症候群につながることがあります。

アミロイドーシスとは、異常に集まったタンパク質からなる繊維(アミロイド)が、臓器や皮膚、神経といったさまざまな組織に蓄積することで起こる多様な病気を指します。アミロイドーシスにはいくつかのタイプがあり、遺伝が原因となる“AF(家族性)アミロイドーシス”の場合は、ほかの神経疾患が現れるより先に手根管症候群を発症することが一般的です。

また、長期間透析をしている患者さんは透析が原因となるアミロイドーシス“透析アミロイド症”を合併しやすく、その場合は骨関節組織にアミロイドが蓄積し、手根管症候群につながることがあります。

糖尿病の三大合併症は神経障害、網膜症、腎症であり、なかでも早期に発症しやすいものが神経障害です。神経障害には、広い範囲が障害される多発性神経障害と、ある末梢神経(まっしょうしんけい)だけに生じる単神経障害があり、単神経障害はさらに突発性と慢性発症に分類されます。慢性発症の中でも多いのが絞扼性(こうやくせい)(狭くなって締まることで起きる)の神経障害であり、特に正中神経の障害が原因となって起こる手根管症候群の頻度が高いとされています。

骨折関節リウマチなどによる骨の変形、仕事やスポーツなどで手を使いすぎることによる腱鞘のむくみなども正中神経が圧迫される原因となり、手根管症候群につながるといわれています。

親指から薬指にかけてしびれや痛みを感じる場合は手根管症候群の可能性があります。特に妊娠中や出産期、更年期の女性が発症する頻度が高いため、当てはまる人は注意が必要です。そのほか、仕事やスポーツで手をよく使う人や人工透析をしている人もなりやすいとされています。

手根管症候群は症状が進行すると細かな作業ができなくなったり、治療の際に手術が必要となったりするため、できるだけ早く治療を開始することで重症化や治療の際の負担を避けることができるでしょう。そのため、気になる症状がある場合は整形外科の受診を検討するとよいでしょう。

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