歯肉炎では歯肉に腫れや出血などが現れ、進行すると歯周炎になることもあります。歯周炎になるとセメント質(歯根の表面)や歯根膜(歯根の周囲)、歯槽骨(歯を支えている骨)からなる歯周組織の破壊が起こり、最終的には歯が抜けてしまうことがあります。そのため、早期発見・早期治療が大切です。
本記事では、歯肉炎の治療方法、治療期間や治療費について詳しく解説します。
歯肉炎の治療にあたり、まずは歯周ポケット(歯と歯肉との隙間)の状態を的確に診査、診断をする必要があります。全身的問題と生活習慣を含む背景も考慮したうえで治療を選択します。
歯肉炎の検査方法には、主にプロービング検査、X線検査、プラークの付着状況を調べる検査の3つがあります。
プラークは歯垢ともいい、細菌とその代謝物の塊で唾液の流れが悪い場所で増殖を始めます。これが歯肉炎の原因となります。プローピング検査では、針状の器具で歯周ポケットの深さを調べ、X線検査では歯石、歯槽骨の状態を調べます。また、プラークに染料で色を付けることでどの範囲に付着しているかを見て数値化することができます。
まずは歯磨き指導やプラークの除去などを行う歯周基本治療によって口内環境を整え歯茎の炎症を改善し、引き締めます。
また、必要に応じて薬が処方されることもありますが、歯肉炎の主な原因となる“細菌が作るバイオフィルム(細菌が形成する生物膜)”は機械的に破壊しなければ除去できないとされており、歯周基本治療と一緒にレーザー治療を行うこともあります。
歯周基本治療では細菌性プラークの除去と予防を目的として行われます。大きく分けて4つあり、(1)動機付け(2)セルフケア(3)ブラッシング指導(4)プロフェッショナルケアに分けられます。
検査結果から、細菌性プラークが歯周炎の原因であることを理解してもらい、細菌性プラーク除去が重要であることを意識することが目的です。この動機付けが大切で、全ての治療ステージでプラーク除去が持続的にできているかどうかが予後を左右します。
細菌性プラークの除去・予防のためには、日頃から自身が行うブラッシング(歯磨き)が重要です。歯科医師、衛生士の指導を受けて正しいブラッシングができるようになることが目的です。
歯科医院で行うスケーリングとは、歯に付着した細菌性プラークや歯石、そのほか沈着物などを除去する治療です。これにより、細菌性プラークが歯に付着するのを防止するとともに、自身でのプラークコントロール(口腔衛生管理)が容易になります。
レーザー治療は、プラークや歯石などを取り除く目的で行われます。
レーザーを当てると歯石などに含まれる水分にエネルギーが吸収されて、それにより水分が蒸発して“微小爆発”します。その結果、歯石などの汚染物が蒸散するとともに、レーザーを当てた部分の殺菌やエンドトキシン(毒素)の分解・除去効果が期待できます。
歯肉炎の治療では、症状を緩和させる目的で薬が使われることもあります。
具体的には歯の痛みや細菌の増殖を抑える抗生剤や、炎症を抑える抗炎症剤の内服薬が処方されることがあります。また、症状を和らげる外用薬もあります。
歯肉炎の治療のための検査、プラークや歯石除去、薬の処方など大部分が保険適用となります。保険外診療の場合、病院や治療内容によって治療費が異なるため、病院で相談するとよいでしょう。
歯肉炎には市販薬も存在しています。症状が軽いうちは市販薬による治療が可能なこともありますが、口内環境によっては再発することもあるため、やはり受診を検討するのがよいでしょう。
歯肉炎の治療は歯科医院で行っています。そのほか、歯科大学付属病院には“歯周病科”のような専門科があります。
初期に治療することで治療期間が短くなることから、早期発見・早期治療が重要です。気になる症状があれば、かかりつけの歯科医院の定期検診を受けるようにしましょう。
また、歯肉炎はプラークコントロールが不十分だと容易に再発することから治療後も引き続きメンテナンスが不可欠です。歯肉の検査、診断を基にメンテナンス期間が変わります。自身に合わせた定期検診を受けるようにしましょう。
青山歯科診療所 院長
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