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歯を失うこともある歯周炎~初期症状は歯茎の圧痛・腫れ・出血・口臭~

歯を失うこともある歯周炎~初期症状は歯茎の圧痛・腫れ・出血・口臭~
白井 清士 先生

興学会新橋歯科診療所 院長

白井 清士 先生

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歯周病とは歯の周りの組織に炎症が生じる病気のことです。歯周病は“歯肉炎”と“歯周炎”に分けられ、歯を支える歯周組織(歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨)のうち炎症が歯肉(歯茎)に限局している状態が“歯肉炎”、炎症が歯槽骨などほかの歯周組織にまでおよんでいる状態が“歯周炎”です。

歯周炎は“歯槽膿漏(しそうのうろう)”とも呼ばれ、進行すると歯槽骨などの歯周組織が溶けて歯がぐらつき自然と抜け落ちたり抜歯が必要となったりします。大切な歯を守るために歯周炎の疑いがあれば早めに治療を行うことが大切です。

歯周炎の初期症状は歯茎の圧痛、腫れ、出血、口臭です。進行するにつれて歯茎が下がる、歯が移動して出っ歯になる、歯と歯の間の隙間が広がるといった症状が見られるようになります。炎症に伴って歯茎からが出ることもあり、体の抵抗力が低下しているときには歯茎が化膿して大きく腫れる場合もあります。

そのまま放置しているとやがて歯が抜け落ちたり抜歯しなければならなかったりすることもあるため、上で挙げた症状が見られる場合には早めに歯科を受診し治療を行うようにしましょう。

歯周炎の直接的な原因には歯周病原菌という細菌が関わっていると考えられています。歯磨きが十分でないと細菌の塊である歯垢(プラーク)や歯垢が石灰化した歯石が歯と歯茎の境目(歯周ポケット)にたまり、細菌がつくり出す毒素によって歯茎が炎症を起こします。この状態が歯肉炎です。

進行すると歯茎が破壊されて歯周ポケットがより深くなります。歯は歯茎のほかに歯根膜や歯槽骨などの歯周組織によって支えられていますが、歯垢が歯周ポケットの奥へと侵入すると歯槽骨などに損傷を与える慢性の炎症が起こります。この状態が歯周炎で歯周組織が溶けると歯がぐらつき、最終的に歯が抜け落ちてしまうこともあります。

歯周炎は糖尿病(特に1型糖尿病)やダウン症候群クローン病エイズビタミン欠乏症などの病気によって起こりやすくなるといわれています。また、喫煙やストレスも歯周炎のリスク因子とされています。

歯周炎の原因が歯垢・歯石であることから歯垢・歯石の除去が治療の基本です。歯科では特殊な器具を使用し歯に付着した歯垢・歯石を除去したり(スケーリング)、歯根の表面を滑らかにして歯垢をたまりにくくしたりする治療(ルートプレーニング)を行います。歯周ポケットの奥深くに付着した歯垢・歯石に対しては外科的に歯茎を剥離して歯垢・歯石を徹底的に除去する歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうはじゅつ)を行うことがあります。また、深い歯周ポケットの除去を目的として歯茎を切除する歯肉切除手術を行う場合もあります。

そのほかの治療として歯周組織再生用の材料を歯根に塗って失われた歯周組織の再生を促す歯周再生手術や、下がった歯茎を再生する歯肉移植術などもあります。歯周炎を起こしやすい病気がある人は、その病気に対する治療も必要となります。

歯肉炎・歯周炎のいずれにおいても歯垢・歯石の付着を防ぐことが重要です。正しい歯磨きを毎日欠かさず行うようにしましょう。ただし、歯と歯の間の汚れについては歯ブラシでは半分程度しか落とすことができません。デンタルフロスや歯間ブラシなども使用し、口腔ケアを行うことがすすめられます。歯石においては自分で取ることができないので、定期的に歯科を受診して歯石を取ってもらう必要があります。

喫煙やストレスなどの生活習慣におけるリスク因子がある場合、それらへの対処を行うことも大切です。特に喫煙は歯肉炎・歯周炎の大きなリスク因子となるので、本数を減らすなど禁煙に努めるようにしましょう。

歯肉炎歯周炎も歯垢・歯石によって起こることから、たとえ歯科で治療を受けたとしても口腔ケアを怠れば再発してしまうことになります。歯科で治療を受ける場合でも歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを用いて適切な口腔ケアを毎日行い、口の中を清潔な状態に保つことが大切です。また、治療が終了した後も定期的に歯科を受診してメンテナンスを受けるようにしましょう。

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